11 / 19
11話 保健室で押し倒されるとかテンプレート
しおりを挟む
ガラッ
保健室のドアを開けると、誰もいない
無人のようだ。
真っ白な空間には、保健室特有の薬品の匂いがした。
「せや、今日は彰ちゃん出張やったの忘れてたわ」
私を姫抱きしながら、思い出したかのようにそう呟いた。彰ちゃん‥って確か、保健講師の篠宮彰先生の事だよね。生徒会にヒケを取らないくらいの整った容姿で女子を虜にしてるって噂がある人。特に怪我もないのに保健室を訪れる女子が急上昇中とかって聞いたがある。
「だ、大丈夫ですよ、これくらい私一人でも出来ますから」
「遠慮せんでもいい、ここは甘えとき
俺やって手当てくらい出来るんやから」
そう言って私を優しくベッドに下ろした。
そして、優斗さんは薬品棚から救急箱を持って来た。
「さてと、まずは消毒から
少し沁みるかも知れへんけど我慢しぃ」
脱脂綿に消毒液を含ませて、私の口元に軽く当てる。
「‥!つぅ‥しみる」
少しだけ傷口にしみた。そんな表情を見た優斗さんは何やら考え事をした表情で私を見た。
それから、口元に絆創膏を貼って腫れてるであろう
頬には湿布が器用に張られた。
優斗さんって怪我の手当てにでも慣れてるのかな。
「あの‥ありがとうございます、手当てまでしてもらっちゃって」
頭を下げると、救急箱の蓋を閉めていた優斗さんは動きを一旦止める。
「別に大したことはしてない、怪我ならどっかの誰かさんで慣れとるしな」
自嘲気味にそういう優斗さん、どっかの誰かさんって‥なんか一人だけ思い浮かぶようなと思考を巡らしてると、突然体が後ろに倒れた。
そして両手の自由がない、掴まれてる。
前を見ると、ゆっくりと優斗さんの顔が近づいてきてる。つまり、今押し倒されてる状況にあるわけだ。
「ゆ、優斗さん何してるんですか」
あまりにも唐突なこと過ぎて上手く言葉が出ない。
「あんな分かってへんかもしれへんけど、無防備過ぎや‥男と二人っきりやのに」
とても色気のあるアルトの低音ボイスで、そう囁いた。何故か頬に熱が集まっていく気がした。
「優斗さん‥?」
何故彼がそんなこと言うのか理解できなくて
彼の目を見た。
「そんな可愛い顔されると、襲いたくなる」
「へっ‥何を」
握っていた両手をパッと離すと、そのままその手でグイッと腰を抱いてきた。
「‥優斗さん‥近いです」
自由になった手で押し返そうとしても、無駄に力があって押し返せない。あまりか段々と距離が近づいてくる。
そして、唇がくっつきそうになった時
保健室のドアが豪快な音を建てて開いた。
まるで蹴破ったかのようだ。
「おい、大丈夫か‥」
入ってきたのは、響さん
ゆっくりと保健室内に視線を巡らせ、ほどなくして腰を密着させて、ベッドで抱き合っている私と優斗さんを見つけたようで
「優斗!!!貴様何をしてんだ」
低い地を這うような声で見てからもわかる通り何故か不機嫌そうな表情を浮かべていた。
さすがにこれはヤバいと本能的に感じた私だったけど、優斗さんはにっこりと笑った。
「迫ってたんや」
「‥‥‥‥」
間違ってはいない、100%正解だ。
「そうなのか?」
「はい、迫られていました‥」
どうやら、私の口は馬鹿正直らしい。響さんが
眉をしかめる。
「で、それは直前か直後か?」
「は?」
一体何が直前で直後なんだ、主語を言え主語を
「残念やけどな、『直前』やな、響さえ
来なかったらしてたんやけどな」
「そうか‥」
到底理解しているとは思えない声色だった。
響さんに無理やり腕を引かれて優斗さんから
引き剥がされた。さっきまで固く拘束されていたはずの腕が響さんにより意図も簡単に剥がれた。
「たく、お前は何をしていたんだ?」
私を引き寄せた響さんにそう問いただされた。
何って言われましても、怪我の治療をして貰ったら突然迫られていたことか、それとも逃げずにいたことか、ダメだ心当たりが多すぎる。
「響にそんなこと言う資格はないやろ?」
「アーン、資格はないかもしれないが理由はある」
「へぇ、そうなんか」
二人だけが分かるような会話されても困るんですけど、それに何がそうなの?さっぱりと理解不能なんですけど、てか私の存在は無視されているのか。
「ってそういえば結局どうなったんですか?
彼女達」
「あぁ、ファンクラブの者たちには、もうお前に危害は加えないと誓約書を書かせたから
安心しろ」
待ってくれ、安心しろという以前に誓約書書かせたんですか?そこに驚きだよ
「なるほど、これで一件落着やな」
そう言って私の頭を撫でる優斗さん。
なんか少しくすぐったい。
「誰の許可を得て、メイドに触ってやがる
優斗!」
「そない怖い顔すると、深雪ちゃんが怯えるやろ」
私をチラッと見る優斗さん、何なんだ?
「何だと!?」
優斗さんは口元を押さえながらニヤニヤしてるし、響さんは優斗さんを睨んでいるし、もう
ついていけないとため息を零したのである。
この後、帰宅したら蒼にすごく心配されたのは
言うまでもない。
保健室のドアを開けると、誰もいない
無人のようだ。
真っ白な空間には、保健室特有の薬品の匂いがした。
「せや、今日は彰ちゃん出張やったの忘れてたわ」
私を姫抱きしながら、思い出したかのようにそう呟いた。彰ちゃん‥って確か、保健講師の篠宮彰先生の事だよね。生徒会にヒケを取らないくらいの整った容姿で女子を虜にしてるって噂がある人。特に怪我もないのに保健室を訪れる女子が急上昇中とかって聞いたがある。
「だ、大丈夫ですよ、これくらい私一人でも出来ますから」
「遠慮せんでもいい、ここは甘えとき
俺やって手当てくらい出来るんやから」
そう言って私を優しくベッドに下ろした。
そして、優斗さんは薬品棚から救急箱を持って来た。
「さてと、まずは消毒から
少し沁みるかも知れへんけど我慢しぃ」
脱脂綿に消毒液を含ませて、私の口元に軽く当てる。
「‥!つぅ‥しみる」
少しだけ傷口にしみた。そんな表情を見た優斗さんは何やら考え事をした表情で私を見た。
それから、口元に絆創膏を貼って腫れてるであろう
頬には湿布が器用に張られた。
優斗さんって怪我の手当てにでも慣れてるのかな。
「あの‥ありがとうございます、手当てまでしてもらっちゃって」
頭を下げると、救急箱の蓋を閉めていた優斗さんは動きを一旦止める。
「別に大したことはしてない、怪我ならどっかの誰かさんで慣れとるしな」
自嘲気味にそういう優斗さん、どっかの誰かさんって‥なんか一人だけ思い浮かぶようなと思考を巡らしてると、突然体が後ろに倒れた。
そして両手の自由がない、掴まれてる。
前を見ると、ゆっくりと優斗さんの顔が近づいてきてる。つまり、今押し倒されてる状況にあるわけだ。
「ゆ、優斗さん何してるんですか」
あまりにも唐突なこと過ぎて上手く言葉が出ない。
「あんな分かってへんかもしれへんけど、無防備過ぎや‥男と二人っきりやのに」
とても色気のあるアルトの低音ボイスで、そう囁いた。何故か頬に熱が集まっていく気がした。
「優斗さん‥?」
何故彼がそんなこと言うのか理解できなくて
彼の目を見た。
「そんな可愛い顔されると、襲いたくなる」
「へっ‥何を」
握っていた両手をパッと離すと、そのままその手でグイッと腰を抱いてきた。
「‥優斗さん‥近いです」
自由になった手で押し返そうとしても、無駄に力があって押し返せない。あまりか段々と距離が近づいてくる。
そして、唇がくっつきそうになった時
保健室のドアが豪快な音を建てて開いた。
まるで蹴破ったかのようだ。
「おい、大丈夫か‥」
入ってきたのは、響さん
ゆっくりと保健室内に視線を巡らせ、ほどなくして腰を密着させて、ベッドで抱き合っている私と優斗さんを見つけたようで
「優斗!!!貴様何をしてんだ」
低い地を這うような声で見てからもわかる通り何故か不機嫌そうな表情を浮かべていた。
さすがにこれはヤバいと本能的に感じた私だったけど、優斗さんはにっこりと笑った。
「迫ってたんや」
「‥‥‥‥」
間違ってはいない、100%正解だ。
「そうなのか?」
「はい、迫られていました‥」
どうやら、私の口は馬鹿正直らしい。響さんが
眉をしかめる。
「で、それは直前か直後か?」
「は?」
一体何が直前で直後なんだ、主語を言え主語を
「残念やけどな、『直前』やな、響さえ
来なかったらしてたんやけどな」
「そうか‥」
到底理解しているとは思えない声色だった。
響さんに無理やり腕を引かれて優斗さんから
引き剥がされた。さっきまで固く拘束されていたはずの腕が響さんにより意図も簡単に剥がれた。
「たく、お前は何をしていたんだ?」
私を引き寄せた響さんにそう問いただされた。
何って言われましても、怪我の治療をして貰ったら突然迫られていたことか、それとも逃げずにいたことか、ダメだ心当たりが多すぎる。
「響にそんなこと言う資格はないやろ?」
「アーン、資格はないかもしれないが理由はある」
「へぇ、そうなんか」
二人だけが分かるような会話されても困るんですけど、それに何がそうなの?さっぱりと理解不能なんですけど、てか私の存在は無視されているのか。
「ってそういえば結局どうなったんですか?
彼女達」
「あぁ、ファンクラブの者たちには、もうお前に危害は加えないと誓約書を書かせたから
安心しろ」
待ってくれ、安心しろという以前に誓約書書かせたんですか?そこに驚きだよ
「なるほど、これで一件落着やな」
そう言って私の頭を撫でる優斗さん。
なんか少しくすぐったい。
「誰の許可を得て、メイドに触ってやがる
優斗!」
「そない怖い顔すると、深雪ちゃんが怯えるやろ」
私をチラッと見る優斗さん、何なんだ?
「何だと!?」
優斗さんは口元を押さえながらニヤニヤしてるし、響さんは優斗さんを睨んでいるし、もう
ついていけないとため息を零したのである。
この後、帰宅したら蒼にすごく心配されたのは
言うまでもない。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる