【完結】婚約者の浮気相手に「私にしない?」と囁いてみた

長草琵琶

文字の大きさ
1 / 10
本編

男装の麗人

しおりを挟む




私はいわゆる男装の麗人である。

スカートではなくスラックスが似合い、男性ではなく女性にモテる。

母に逆らってまで男装している理由は無論、こっちの方がチヤホヤされるからだ。

誰だって自分が一番かっこいい格好でいた方が気分もあがるだろう。

そんな私にも、不思議なことに婚約者がいる。政略結婚というやつだ。

しかし相手も私も好青年に興味はないので、互いのことは基本的に無干渉だ。いや、なっていたというべきか。

ある日私は友人との約束をドタキャンさせられ、婚約者の母に呼び出された。

いくら約束事は守るようにしている私と言えども逆らえない。

何故なら相手はこの国の王妹、クローディア公爵閣下だからである。

「お呼びでしょうか、閣下」

いつものように、足元に跪き手を取って尋ねる私に、閣下は「うむ」と頷いた。しかしその眉間には不機嫌そうに皺が寄っている。

おかしいな、いつもだったらこれだけですぐ機嫌も治るのに……。

ただごとではない事態に首を傾げていると、閣下は重々しく口を開き絞り出すような声を出した。

「………ギデオンの奴が、婚約を破棄したいと言い出した」
「あーーーー……なるほど」

アホみたいな返事をしてしまったが、聞いてないみたいなのでセーフだろう。

ギデオン。ギデオン・アーチボルト。うん、覚えてる。閣下のとこの馬鹿長男で私の婚約者ね。うん、覚えてる覚えてる。

婚約破棄?あー、そういえば閣下の息子がどこぞの貴族の養子に夢中って噂されてたけど、アレだったのか。あまりに似てなさすぎて忘れるんだよな、血縁者だって。

「あやつ……!わらわの可愛いダイアナを捨てあんな阿婆擦れを選ぼうとは!なんのために後継にしてやったと思っておる!」
「あーー私は良いですよ閣下。確か最近力をつけ出した伯爵家の養女でしょう?うちよりよほど優良物件ですよー」
「ならぬ!ダイアナと結婚しないのならば、あやつを分家にしてダイアナを養子にする!」

そんな無茶苦茶な。先ほどの威厳が嘘のようにクッションをボスボスと膝に叩きつけ癇癪を起こす閣下をまあまあと宥める。

まあ正直私としてはやぶさかでもない話だけど、絶対炎上するって。

「うーん……火遊びで我慢してもらえないですかねぇ。そもそも前から結構遊んでたみたいじゃないですか。冷めやすいみたいですし、ほっとけば案外撤回するかもですよ?」
「あやつ、お主と結婚してあの女と結婚すると周囲に言いふらしているそうなのじゃ。というか、あやつから聞いていないのか?」
「いや聞いてな……あーー……」

そういえば女の子たちの手紙の中に、聞き馴染みのない名前が紛れていたような。面倒だから後回しにしてそのままだったな。

内容は大方『母上を説得してくれ』とかか?しかしはからず従う運びになってしまった。

「うん……うん。まあ私からも説得してみますよ。閣下の娘になれないのは私だって嫌ですし」
「ダイアナ……!しかし、今のあやつは前以上に人の話を聞かんぞ?お主があやつに傷付けられたらと思うと妾は……」
「大丈夫です、説得するのはギデドンくんではありません」
「ギデオンな」

そうそれ。

手にキスするふりをしてニタリと笑うと、閣下がポッと顔を赤らめた。

「まあ任せてください。必ずやご期待に応えて見せますよ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処理中です...