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本編
男装の麗人
しおりを挟む私はいわゆる男装の麗人である。
スカートではなくスラックスが似合い、男性ではなく女性にモテる。
母に逆らってまで男装している理由は無論、こっちの方がチヤホヤされるからだ。
誰だって自分が一番かっこいい格好でいた方が気分もあがるだろう。
そんな私にも、不思議なことに婚約者がいる。政略結婚というやつだ。
しかし相手も私も好青年に興味はないので、互いのことは基本的に無干渉だ。いや、なっていたというべきか。
ある日私は友人との約束をドタキャンさせられ、婚約者の母に呼び出された。
いくら約束事は守るようにしている私と言えども逆らえない。
何故なら相手はこの国の王妹、クローディア公爵閣下だからである。
「お呼びでしょうか、閣下」
いつものように、足元に跪き手を取って尋ねる私に、閣下は「うむ」と頷いた。しかしその眉間には不機嫌そうに皺が寄っている。
おかしいな、いつもだったらこれだけですぐ機嫌も治るのに……。
ただごとではない事態に首を傾げていると、閣下は重々しく口を開き絞り出すような声を出した。
「………ギデオンの奴が、婚約を破棄したいと言い出した」
「あーーーー……なるほど」
アホみたいな返事をしてしまったが、聞いてないみたいなのでセーフだろう。
ギデオン。ギデオン・アーチボルト。うん、覚えてる。閣下のとこの馬鹿長男で私の婚約者ね。うん、覚えてる覚えてる。
婚約破棄?あー、そういえば閣下の息子がどこぞの貴族の養子に夢中って噂されてたけど、アレだったのか。あまりに似てなさすぎて忘れるんだよな、血縁者だって。
「あやつ……!妾の可愛いダイアナを捨てあんな阿婆擦れを選ぼうとは!なんのために後継にしてやったと思っておる!」
「あーー私は良いですよ閣下。確か最近力をつけ出した伯爵家の養女でしょう?うちよりよほど優良物件ですよー」
「ならぬ!ダイアナと結婚しないのならば、あやつを分家にしてダイアナを養子にする!」
そんな無茶苦茶な。先ほどの威厳が嘘のようにクッションをボスボスと膝に叩きつけ癇癪を起こす閣下をまあまあと宥める。
まあ正直私としてはやぶさかでもない話だけど、絶対炎上するって。
「うーん……火遊びで我慢してもらえないですかねぇ。そもそも前から結構遊んでたみたいじゃないですか。冷めやすいみたいですし、ほっとけば案外撤回するかもですよ?」
「あやつ、お主と結婚してあの女と結婚すると周囲に言いふらしているそうなのじゃ。というか、あやつから聞いていないのか?」
「いや聞いてな……あーー……」
そういえば女の子たちの手紙の中に、聞き馴染みのない名前が紛れていたような。面倒だから後回しにしてそのままだったな。
内容は大方『母上を説得してくれ』とかか?しかしはからず従う運びになってしまった。
「うん……うん。まあ私からも説得してみますよ。閣下の娘になれないのは私だって嫌ですし」
「ダイアナ……!しかし、今のあやつは前以上に人の話を聞かんぞ?お主があやつに傷付けられたらと思うと妾は……」
「大丈夫です、説得するのはギデドンくんではありません」
「ギデオンな」
そうそれ。
手にキスするふりをしてニタリと笑うと、閣下がポッと顔を赤らめた。
「まあ任せてください。必ずやご期待に応えて見せますよ」
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