役立たずの雑用係は、用済みの実験体に恋をする。――神域結界の余り者

白夢

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#2 部屋の中

17 ほかほか、おいしいごはん

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「え? 待って、このドアどうなってんの? 嘘でしょ、えぇぇ……」

 扉の外で、絶望するような彼の声が聞こえた。
 私は満身の力をふり絞り、トコトコ歩いていってその扉の残骸をどかす。

「ブライド、お前扉壊したの? 大丈夫、怒らないから。全くお転婆だな。怪我無いか?」
「私ではありません。軍人様が、私にお食事を届けて下さったのですが、その際に鍵がなかったのか、ご機嫌が優れなかったのか……」
「あいつらはいっつもこうなんだ。ごめんな、遅くなっちゃって」
「いえ、いいんです……お帰りなさい」

 これこそ正に失って初めてありがたみが分かるというやつで、私は彼が帰ってきた嬉しさに思わず顔を綻ばせた。
 一方で、彼は少しやつれているような気がした。

「……ブライド、今日は飯食った?」
「いいえ、ここ二日何も食べていません」
「え、それはごめん、すぐ作る。余り物しかないけど……」
「貴方の作ったものならなんでもいいです」
「え、あ……うん、どうしたお前? なんかあった……って、そっか兵糧攻めに遭ったわけだしな……うん、すぐ食わせてやるから安心しろよ。大丈夫だからな」

 彼は微笑んでそう笑って、キッチンに行って鍋を火にかける。
 調味料と水を沸かし溶き卵を流し入れてスープを作ってくれた。

「これ飲んで待っててくれ。コメがあるから、炊いて……雑炊にするか。急に食べると体に悪いから、今日はそれだけな。明日お腹いっぱいになるまで食べさせてやるから」
「分かりました」

 たった五日だったのに、温かいスープが随分懐かしく感じて泣きそうになった。やっぱり、美味しい。お椀一杯分のスープに満たされる。温かい料理って、なんだか優しくて心地いい。

「……元気だったか、ブライド?」
「空腹でした」
「うん、そっか。その他は特に……なかったか?」
「ええ、ありませんでした。ただ、暇で仕方ありませんでしたが」
「本読むか? 良かったら貸すよ」

 彼は一度キッチンを離れて、私の方へ歩いてきた。

「本ですか?」
「そこの本棚にたくさんあるだろ? それ、好きに読んでいいよ」
「これらの本ですか?」
「あーっと……それはちょっと……こっちにしてもらえるかな?」
「分かりました」

 私は、彼に渡された本をぱらぱらと捲って読み始めた。恋愛小説だった。

「……ごめんな、ブライド」
「どうしてですか?」
「いや……何でもないよ。たださ、頑張るよ俺。欲しいものあったら、いくらでも買ってくる。そうやってさ、俺、頑張るから……だから俺の側にいてくれ」

 何故か彼は、悲しそうにそう言う。私は理由が分からなかった。
 けれどコメの炊ける香ばしさに釣られて、もちろんですと生返事を返した。
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