幼女剣王KUSARI ~俺が幼女になっちゃった!転生ドルオタの異世界無双!俺、異世界でアイドルになります!

ZUZU

文字の大きさ
19 / 57

木剣の秘密

しおりを挟む
 あの時の、あの青くさい若者だ。

 だがギルドで会った時と比べると、雰囲気はだいぶ柔らかくなっている。
 長く整えた髪をオールバックにして、冒険者服も適度に着崩されていた。

 剣呑な目をする冒険者なかまに、彼は言った。

「やめとけ。その娘はな、すっごく強いぞ。聞いたことがないか? クサリって娘のこと――ダンジョンの噂だ。フランのギルドなら、みんな知ってたんだがな」

 と言われても、冒険者たちはわけが分からないといった風なのだが、構わず彼は言った――今度は、村人に向けて。

「私はオッギ=ルーン。ニアランの冒険者ギルドに所属するD級冒険者だ。縁あって、今回の救援チームのリーダーを任されている。仲間が声を荒げたのは許して欲しい。私も、あんなにガミガミ言うことは無いんじゃないかと思うんだがね――それも、理由があってのことなんだ」

 そして、最後はこっちだった。

「やあ、クサリ。久しぶりだな。会ったのは一度きりだが、覚えているかい?」

「ええ。あの時は心配していただいて、感謝しています」

「いや、やめてくれ。恥ずかしい――あんなの勘違いだったんだから。私は、あのときニアランからフランのギルドに修行に出されていてね。いまは、ニアランに戻って活動している。それにしても君は、本当に、なんというか――見違えたな。ずいぶん、言葉遣いが上等になっている」

 フランというのは、ギルマスがいたあの町のことだ。位置関係としては、ダンジョン→フラン→ニアラン→デドラン→王都の順で、直線状に並んでいる。

「これを――」

 ウィルバーが差し出した書類を、青年――オッギが確かめる。書類は、王都に入るための身分証だった。そこに『学生』と身分が書かれてるのを見て、オッギが微笑った。

「ああ、なるほど。あれから話を聞かなかったんで気になってたんだが――良かった。王都でも、きっと君の個性は秀で、愛されるに違いない。微力ながら、君が良き師、良き友に恵まれんことを願うよ」

 一応それでこの場は収まり、今夜はこの村に泊まることになった。
 というわけで宴が終わるのを待ち、村長の家で眠った――という具合にいけば良かったのだが。

「納得いかない、という顔ですなあ」
「そうですねえ」

 ウィルバーに言われずとも、分かっていた。
 だから、ずっと木剣を抱えていたのだ。
 それこそ、これ見よがしに。

「お嬢ちゃん、木剣それでゴブリンをやっつけたのかい?」

 訊いてきたのは、さっき村人を問い詰めてたのとは別の冒険者だ。でも、不満を抱いていたのは同じだろう。こんな幼女を指して『あの娘は強い』と言われたところで、納得なんて出来るはずがない。当然だ。心の動きとして、正しいといってもいい。

 ただ、問題があるとしたら――

「じゃあさ、ちょっと、俺と手合わせしてくれないかな」

――こういう形でしか、それを昇華する術を持たないことだろう。

 というわけで、試合をすることになった。
 宴の端っこで。
 しかし一瞬で、みんなの関心の中心になっていた。

 相手は、23,4歳といったところか。
 もちろん前世日本の23,4歳とは、まったく異なっているだろう。
 しかしどっちの世界でも、俺みたいな幼女に絡んでくる23,4歳なんて、ロクなものじゃないに違いない。

「じゃあ行くぞー」

 男が手にしたのは、流石に剣じゃない。
 木材っていうか薪だ。
 一般的な剣より、ちょっと短いくらい。
 無造作に近付いて来るように見えて、足元の動きは慎重だった。

「はい、どうぞ」

 男は、決して下手では無かった。
『鎖』を使うまでもなく分かる。
 しかし俺が気になってるのは、ひそひそ声で話すオッギとウィルバーの方だった。

『クサリが、剣を振るのを見たことは?』
『ゴブリンが相手であれば、昼間に』
『私は、これが初めてだ。フランにいた時の仲間から、噂を聞いただけでね。腕の立つ男だったが、あの子に耳を斬り落とされたらしい』

 俺が、前世のことを思い出す前の話だ。
 相手は悪くない。
 ただ以前の俺が、異常に殺伐としていただけの話なのだ。
 だから、なんというか……詳細については、勘弁して欲しい。

 とか、言ってる間に――

「おぐっ!」

――俺が打ったのは薪なのだが、どう衝撃が伝わったのか、男は腹を抑えてうずくまった。俺は言った。

それ、使っていいですよ」

 男が、剣を抜いた。

 刃引きなんてしてない実剣VS木剣ということになるのだが、こんなのは初めてではない。
 俺がダンジョンで戦ってたのは、魔物だけじゃない。
 盗賊や、冒険者を狩る冒険者ハンターハンターとの実戦も多数経験済だ。

 そいつらが使ってたのは、もちろん実剣だった。
 だが、俺の木剣が打ち負けたことは無かった。
 鉄を木で迎え撃ち、跳ね返す。
 そんなのを何回繰り返しても、木剣には傷ひとつ付いたことが無かった。

 理由は、もう分かっている。

 対象に情報を送り込んで操作する、龍皇の技――龍韻ドラゴニック・コマンド
 これを俺は、修行でマスターした。
 思えば、やけに簡単に。

 それは努力や才能とは関係なく『以前から、ある程度出来ていたから』簡単に習得出来たというのが、いまの考えだ。

 龍皇と出会う前の時点で、龍韻ドラゴニック・コマンド、低いレベルではあるが、俺は既に使えるようになっていたのだ。爺さんとの、剣の修業によって。爺さんの剣は、いま思えば、明らかに龍皇のあの技の影響を受けていた。少なくとも、同じ方向性の上にあったのは間違いない。

 爺さんは、木剣にしなやかな鋼のイメージを流し込むことで、強化していた。
 そして流し込まれるイメージは、鋼だけじゃない。
 同時に強烈な打撃や斬撃のイメージを、技によって使い分けていた。

 爺さんに剣を習った俺もまた、知らず知らずのうちに、同じことをしていたに違いない。もっとも龍皇と出会うまで、自分の修行した剣がそんなものだったとは、まったく気付いてなかったわけだが。

 というわけで――

「あ、ああ……ああああああ」

――真っ二つに断たれた剣を見つめ、男が棒のように固まる。

 勝負あり、ということでいいだろう。
 問題は、ここからどう締める・・・かなわけだが……

「お見事!!」

 オッギが拍手すると、瞬時に村人や冒険者たちもそれに乗った・・・
 そんなわけで、この件はおしまい。

 翌朝、村人とオッギたちに見送られ、俺とウィルバーは、村を後にしたのだった。

 徒歩で。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...