幼女剣王KUSARI ~俺が幼女になっちゃった!転生ドルオタの異世界無双!俺、異世界でアイドルになります!

ZUZU

文字の大きさ
46 / 57

始原の魔術

しおりを挟む

 作戦本部となった宿で、ルゴシはこう言った。

『アタシの考えではね、その『壺』こそが『スネイル』という組織のボスであるところの――スネイル本人だ』

 何故『壺』が『スネイル』なのか?
 それについての、説明はこうだ。

『『スネイル』という人間は既にいない。奴は『人間を装った自然現象』。
 そして『壺』とは『スネイル』の自意識の在り処なんですよ。

 まずは――『始原の魔術』について、話さなけりゃならんでしょうな。

 人間・・の探求する、あらゆる魔術の体系が目指すところ。
 それは、超人――人を超えた存在となることです。
 もっとも、火や水を出したりする初歩的な魔法を使う時点で、既に人間を超えてるっちゃあ超えている。

 ではここで言う超人っていうのが、何を超えるかっていうとですな――ここです。ここ。我々の柔い肌を超えるのを目指してるんですよ。

 我々を包む、魔物や動物に比べたら、ずっと薄い『肌』。これを超えて、その外にある何もかもと一つになる――自然との合一こそが、魔術の目指す究極の頂なんです。

 で、ここで話の矛先が変わります。

 エルフです。

 エルフっていうのは、人間と違ってですな。最初から、自分の『肌』を超えてるんです。生身の身体を持ちながら、同時に自分の何割かを、常に自然と溶け合わせている。

 何割っていうのがどれくらいかって言うと、多くて1割か2割ってとこだと思いますが、これが、何かの拍子で、突然10割まで振り切っちゃったりもするんです。例えば、強い魔力に晒されたりなんてのをきっかけにね。

 ああ、そうだ。
 ここは、魔力や魔素についても話しておいた方が良いでしょうな。

 魔素っていうのは、この世にある何もかものもととなってる、素材みたいなもんです。そして、魔素を操る力が、魔力だ。

 自然も、我々人間も、すべて魔素で作られている。そういう意味では、わざわざ超えるまでもなく、自然も人間も同じだって言い方も出来る。

 でも、違う。
 何故か?
これ』です。

 この『肌』の内側に、自意識――自分が自分であるという意識が閉じ込められてるからこそ、我々はひとりひとりの人間として、存在してられるってわけです。

 ってとこで、話が戻ります。
 エルフです。

 人間われわれに比べて自然と自分の境目が曖昧なエルフが強い魔力にさらされるとどうなるか? 川っぺりなんかに建てられた、ちゃちな柵が洪水に流されるのと一緒です。境目なんて、あっというまに壊されてします。

 さっき言った『10割まで振り切っちゃったり』っていうのは、そういうことです。で、そうなるともうお終いです。そのエルフは、完全に自然と一体となって、エルフとしての自分――いや『自分』っていう意識すら保てなくなり、エルフとしての彼は、身体もろとも消滅してしまう。

 言い訳じゃありませんがね? 先日、奴隷商の用心棒ごときにアタシが深手を負わされたってのは、それもあるんです。アタシ一人ならね、ああはならなかった。強力な魔術をバンバン使っちゃって、へへんのへ~んってところですよ。

 でもまあ、一人じゃなかった。

 まだ子供のエルフを連れて、強力な魔術を使い、当然、強力な魔力に彼女たちを晒すことになったりしたら――『10割まで振り切っちゃったり』って恐れがある。そうなっちゃったら……ねえ? 何のためにアタシは来たんだって話でしょ。

 エルフもね、長いことこんな問題に付き合ってきて、策を立てなかったわけじゃない。

 魔術を、作ったんですよ。

 彼らが魔力の扱いに長けてるってのは、自然との境界が薄いからなんです。だから、身体を使うのと同じ様な感覚で、魔力を使っている。たとえば、そこのコップを手に取ったとしましょう。でもそのために使った力の、何割が筋力で何割が魔力によるものなのか、エルフには分からない。

 そこで、魔力の使い方を体系的な技術として確立し、意識的に魔力を使うことで、体の外と内の魔素を区別出来るようになり、自分と自然の境目を強固にして、簡単に自然の側へ引っ張られるないようにしようって考えたんです。

 そのために作られた最初の魔術が『始原の魔術』です。
 そう。
『宴会魔術』だなんて言って人間われわれが馬鹿にしているアレです。

 強力なことは強力だが、使い勝手が悪すぎて宴会芸くらいにしか使えない――だから『宴会魔術』っては言いますが、当たり前のことなんです。人間われわれよりずっと魔力の扱いに長けた、エルフが作ったものなんですから。

 だから、人間われわれは『始原の魔術』から模倣可能な部分だけをパクり、自らも習得可能な魔術の体系を作り上げた。一般に魔術と呼ばれてるものは、ひとつ残らずこれですな。『宴会魔術』なんて言ってる輩は、そんな経緯を忘れているのか知らないのか、それとも――まあいいでしょう。

 そうやって生まれた人間われわれの魔術も、あえて滑稽とは言いませんがね、洗練を重ねた先には『始原の魔術』がある。魔術師業界重鎮のお歴々が、あえて口にはしないことですが。

 つまりはです。

『始原の魔術』を挟んで、人間とエルフは向かい合っている。人間は、自然と合一するため魔術の根源である『始原の魔術』を目指し、エルフは自然に取り込まれるのを防ぐため、『始原の魔術』を身に着ける。

『スネイル』は、『始原の魔術』に辿り着いた人間です。
 そして、自然と1つとなった。

 かつて彼は魔術を探求する過程で、金を稼ぐため仲間を募り、仲間を護るために組織を作った。

 彼の名を取り『スネイル』と呼ばれるようになる組織をです。

『始原の魔術』を手にした彼は、ある結論に辿り着きます。
『いずれ自分は自然に取り込まれるのであろう』という結論をね。

 しかし、そうなれば仲間たちとも離れざるをえない。もう彼らを護れない。しかし『始原の魔術』を超えたそのさきへと到達したいと思う気持ちは止みがたく……

 そこで、彼は考えたわけです。自然と合一した後の自分を、組織の護り手として利用できる仕組みを作ればよいのではないのかと。

 それが、この街にある『スネイル』配下の屋敷――今夜の襲撃目標ってわけです。

『スネイル』は、自分がまだ人間であるうちに結界を作り、自然と合一した後の自分を、そこに封じ込めることにした。その結界が、4件の屋敷。

 そして『壺』は、『スネイル』の自意識を複写した魔道具。

『壺』に話しかけることで『スネイル』の幹部はあたかも『スネイル』本人と接しているかのように錯覚し、『壺』に依頼することで、自然と化した『スネイル』の強大な力を、組織のために利用することが出来る。

『人間を装った自然現象』っていうのは、そういうことなんです。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...