誰も殺さぬ残虐令嬢

ZUZU

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殺しあい

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 試合――殺しあい。
 もちろん、違法である。

 試合場は毎回異なっていて、ほとんどはオフィスビルやマンションの一室。
 そこで、殺しあう。
 殴り、蹴り、絞め、時にはナイフやバットも使って。

 武器の扱いについても、一年間の訓練で教えられていた。
 バトルロワイヤル形式の試合の際には、ホテルを全館借り切って試合場にしたりもするのだが、そういった際の立ち回り方についても、廃校の校舎を使って訓練済だ。

 初めての対戦相手あいては、空手家だった。
 ホストに狂って借金を作った、フルコンタクト空手の日本王者。

 殴られた。
 蹴られた。
 私も、殴った。
 顔を、一発だけだ。

 それだけで相手は朦朧とした様子となり、その場でくるくる回り始めた。

 そんな相手を、私は投げ。
 押さえつけ。
 彼女の顔面に、肘を落とした。
 何度も、何度も。
 自分が何をやってるのか。
 どうしてやってるのか。
 こんなことをやって良いのか悪いのか。

 一発、そして一発ごとに。

 そんなことを考える場所が、脳味噌から失われていく。
 いま目の前のものとして見ている景色が、過去か未来かすら分からなっていく。

 誰かの目玉が、床に転がっていた。

 やがて記憶は曖昧になり、気付けば翌日の夕方になっていた。
 私は、自室として与えられたマンションでパソコンを操作していた。

 そうしていたら、突然気付いたのだ。

 いつの間にか試合を終えこの部屋に戻り、一日を過ごしていたということに。

 顔を触った。
 目玉は両方あった。
 ということは、あれは私の・・ではなかったということになる。

 私は、勝ったのだろう。

 試合の背景として、私のバックにいる老人と相手のバックにいる誰かが何かを賭けていたのだろうということは察している。

 殺しあいではあっても、試合にはルールがあった。
 どちらかが負けを認めベットした何かかけきんを払えば、その時点でタオルが投げられたことになる。

 老人が、私を救うためにタオルを投げるかねをはらうとは思えなかった。

 そしてだ。

 いま私は生きている。
 つまりそれは、私が勝ったということだった。

 三角証明的に、結論を得たのと同時。

『それが、あなたの選択なのですね』

 パソコンの画面で、彼女が言った。

 シャルロット=フォン=ワルダーク。

 乙女ゲーム『蒼穹のプリフィクス』に登場する悪役令嬢だ。
 
『蒼穹のプリフィクス』は、私が高校に入学した頃に発売されたゲームで、一年間の格闘技修行中も、唯一の娯楽としてプレイを許されていた。
 おそらく、私の精神が壊れないようにするための、ぎりぎり最低限の配慮だったのだろう。
 格闘技術の研究用に与えられたノートパソコンに、なぜか自宅のパソコンに保存してあったセーブデータと一緒にこのゲームがインストールされていたのだった。

 シャルロットは『蒼穹のプリフィクス』のネタキャラとして知られていた。

 五人いる攻略対象の内、彼女がライバルになるのは王子デルーシアのルートだけなのだが、なぜか他の攻略キャラの、もっといえばこのゲームの全てのルートで、シャルロットは悲惨な最期を迎えるのだった。

 あるルートでは魔物に食い殺され、また別のルートでは乗っていた遊覧船が沈没して湖の底に沈み、更に別のルートでは彼女に恋焦がれるメイドに刺し殺され……強引な程にバリエーション豊かな死に様を、実際にゲームをプレイしてない人たちは嗤った。

 そう――実際にゲームをプレイしていない、ただ情報を得ただけの人たちはだ。

『蒼穹のプリフィクス』をプレイした人たちの間では、シャルロットはネタキャラでなく、普通に好感を持たれているキャラだった。
 私にとっても、そうだった。
 私はシャルロットが好きで、リプレイするのは彼女が登場するシーンばかりだった。

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