誰も殺さぬ残虐令嬢

ZUZU

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惨めすぎる最後

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 二度目の試合も、三度目の試合も私は勝った。
 四度目も、五度目も、六度目も。

 試合の途中で途切れた記憶は、いつも『蒼穹のプリフィクス』――シャルロットの声で再開する。

 七度目も八度目も九度目も勝ち、殺しあいにデビューしてから二年が経ち。

 アマレスともブラジリアン柔術ともサンボとも闘って。
 いまだ私は無敗で。
 ボクシングにも空手にもムエタイにも勝ち。

 十試合目は、相手が男になった。

 もちろん、縛りはある。
 相手は私より身長は十センチ、体重は当日計量で五キロ以上低くなければならない。
 そして更にもう一つ、相手にだけ課せられた勝利条件があった。

 試合開始から三十分以内に、私をレイプしなければならない。

 それが、私と対戦する男に課せられた勝利条件だった。
 そして、幸運にもこのルールが私に味方した。

 ただKOするのでなく、レイプしなければならない。
 この条件が加わるだけで、試合運びがまるで異なってくる。
 相手にとってだけ。
 私は、いつも通り、ただ全力でぶちのめすだけで良かった。

 このルールでも、私は勝ち続けた。

 むしろ、このルールの方を私は得手とした。
 3:7の割合で女と男の両方と試合をし、闘った相手は全員死んだ。

 気付くと、父が死んで八年が経っていた。

 気付いたのはやはり、シャルロットによってだ。
『蒼穹のプリフィクス』の続編が作られ、どうやら今度のヒロインはシャルロットになるらしい。
 そんな情報を、試合日の朝に知った。

 その日の試合にも、私は勝った。

 相手は恐喝で逮捕され永久追放になったプロボクサーで、試合はいつも通り、私のペースだった。
 金的蹴りのフェイントでタックルし、避けられたところを蹴り上げで金的を狙い、今成ロールめいたデラヒーバでバックマウントを奪う。

 とりあえず目玉を潰そうかと、私は親指を立てた。

 その時だった。

 心臓に、裏返った様な痛みが奔り。

 拳大の塊となった吐瀉物が胃の奥からせり上がり、喉を詰まらせる。

 そうして呼吸困難となった私から逃れて、相手は立ち上がったのだという。
 私の顔面を蹴り上げ、後頭部を踏みつけたのだという。

 その途中で吐瀉物は吐き出され、呼吸は可能になったのだが。

 私は既に、戦闘が可能な状態ではなくなっていた。

 あの廃校。
 血反吐を吐いた訓練の一年間。
 あの頃から摂取し続けていた筋肉増強剤。
 試合のたびに飲んだ興奮剤。

 私を勝たせ続けてくれた薬物に、とうとうツケを払わされたのだった。

 加えて、頭部に叩きつけられた無数の打撃。
 あそこに転がってる目玉は、誰のだろう?

 ああ――私のか。

 まあ、いいか。
 目玉は目玉でも、義眼の方だ。
 三度めだったかの試合で抉られた方に入れてる、義眼だ。

 ああ、でも――なぜ何も見えないんだろう?

 この時点で、試合開始から五分。

 結果として、私は勝った。

 改めて言おう。
 三十分以内に私をレイプする。
 それが、相手の勝利条件だ。

 つまり、残りの二十五分をかけても、相手が私をレイプできなかったのだった。

「こんな女で勃つわけねえだろ!」

 怒声は、相手の選手のものだった。
 それはそうだろう。

 この八年で、私は――

 右目を抉られ。
 右耳の下半分をちぎり取られ。
 左耳を周辺の皮膚ごと毟り取られ。
 右の乳房を噛みちぎられ。
 腹を三回刺され。
 まともに動く指は、両手を合わせても四本だけになっていた。

 勃つわけがない。
 八年かけて、私はそういうモノに成り果てていたのだった。

「なんだよ、それ……」

 呟きは、私のものだった。
 
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