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しおりを挟む胸を打たれた。
否、撃たれた。
それほどの衝撃だった。
それは落雷のように強く自分の深部までをも焦がしていった。
溢れすぎやしないかと思うその涙に濡れる群青の瞳に、
いや、その群青の瞳を濡らす多すぎる涙に、だろうか。
とにかく、囚われてしまった。
もうこの先、この人以外誰も好きになることはない。
彼の泣き顔を見てそう確信したのは12歳、春の頃だった。
時が経ち、12年後の現在。
「……殿下」
「なんだね?フェリシア君」
「あの、この状況をご説明いただきたいのですが……」
「ハッハッハッハッ!もちろんだとも!まず紹介しよう。彼はヴァートレット公爵子息で第一騎士団筆頭黒騎士で僕の従弟でもあるアルガルドだ!」
「アルガルド・ヴァートレットだ」
「フェ……フェリシア・ベルジーニと申します…」
皇城の一角にある誰にも使われていない部屋。
少し古いデザインだが華美なテーブルと座り心地の良いソファに腰掛けている男女3人。
職務中なために何とも言えないくすんだ色の金髪をピッチリと纏めた私。
上座に座るのはミルキーブロンドの髪に空色の瞳を持つ我が国の皇太子殿下。
そして私の正面に座る黒髪の屈強な男性は只今紹介を受けたアルガルド・ヴァートレット卿。
なんだこの状況は…。
わけがわかっていない私を悪戯小僧のような顔で見てくる職場の上司でもある殿下がよく通る高らかな声で話した。
「喜びたまえフェリシア君。君をアルガルドの見合いの“練習相手”に任命する!」
「見合いの………練習相手?」
混乱する私をさらに混乱させる発言をした殿下は実に楽しそうだ。
見合いの“練習”というだけでも意味がわからないのに、私がその練習相手に任命されたということが更に意味が分からない。
だってこの御仁、アルガルド・ヴァートレット卿こそが12歳の私に衝撃を与えた初恋相手であり、あの日号泣していた少年、その人なのである―――――
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