逆ハーレムを作ったけど、護衛騎士が婿候補をことごとく蹴散らしていく件【R18】

冬見 六花

文字の大きさ
14 / 54

 血をキレイにする

しおりを挟む


 正直なところ、ユタバイト家の二人を共に後宮入りさせるとは思わなかった。ユタバイト家は双子以外に子供はいないから、家督を継ぐ一人を残すと思っていたのだ。
 だがユタバイト公爵はまだまだ現役。
 とすれば、今はお家のことよりも王家を優先したのだろう。そして他の家の椅子を塞ぐため、双子どちらも後宮入りさせたのだ。一つの家から二人が後宮入りしたことに少なからず反発の声はあったが、国唯一の公爵家の圧力に簡単に屈したようだ。
 正確に言えば、彼らは王配の座を狙っているというよりも、王の血を継ぎたいというある種純然な忠誠心ゆえの行動だろう。

 その考えに感服する思いだ。
 もちろん、嫌味である。

 

 
 ユタバイト家で最初に挨拶するのは弟のドミニク様だ。
 ヴォルフと共にドミニク様の部屋を訪れると、全体的に青を基調とした絢爛豪華な内装に改装されている。部屋の持ち主が好きなように改装していいとは通告していたものの、ここまで変えるとは驚きだ。
 部屋を見渡す私のことを、ドミニク様が恭しく頭を下げて迎え入れた。

「ごきげんよう。ドミニク様」
「お久しぶりにございます。我が国の偉大なる青き星、ユリアーネ殿下。ご尊顔を拝謁できましたことを嬉しく思います」

 あぁ、めんどくさい。と思わず天を仰ぎそうになったのを必死に抑えた。
 仰々しい挨拶はまあいいとして「青き星」などと宣うのはユタバイト家くらいだ。
 室内の寒々しいほどの青いインテリアといい、青への執着が強すぎて一度医師に診てもらってほうがいいとさえ思えてくる。
 
「お元気そうでなによりだわ」
「光栄に存じます。殿下は美しさだけでなく陽だまりのようなお優しさを持ち合わせておられる。正統なる青き血を持つ姫様が統治される我が国の未来は、今と違い安寧となること違いありません」

 ……今と違い、か。
 シーゲル国は水面下で派閥争いはあるものの、現状はむしろかなり安寧していると言っていい。
 イテラ病をきっかけに他国との交流はより強固となり、貿易も増えて物資は豊かとなったし、なにより医療が驚異的に進んだ。国民からでなく貴族からの税収を上げ、それによって無料で医療を整えられるシステムを作り、働き手を増やし貴族にも還元できるようにもなった。
 それらの政策を作ったのは母だが、実際に進めたのは父だ。
 
 だがこの人は「青い血」を持たない父が現在国を統治していることが、どうにも腹に据えかねるようだ。
 ニコニコと人当りの良い笑顔で、私に向かって「王の血」しか認めないという確固たる意志がどうにも気持ち悪く思えてならない。

 席へと案内され、目の前のテーブルに次々とお茶とお菓子が並べられていく中、ドミニク様はとてもにこやかに私を見つめてくる。そしてようやくテーブルが華やかになったところで、待ってましたとばかりに口を開いた。

「単刀直入にお伺いしたいのですが、殿下は此度の後宮の件をどのように思っておられますか?」

 本当に単刀直入だな。
 わかってはいたが、ドミニク様は後宮計画に前向きではないことが窺えた。

「どう、とは?」
「後継のためといえど、このままではその尊き御身を多くの者に晒すことになるのですよ?」

 その多くの者にあなたも入っているのですが? というのは勿論言わないでおく。
 
「もちろん心得ております。でもイテラ病によってシーゲルだけでなく世界的にも男性後宮を作られていますから、当然の施策だと思っております。それに元々我が国では昔男性後宮は存在していましたし。……けれど、ドミニク様はあまり賛同されていらっしゃらないご様子ですね」
「えぇ。もちろんです。だってユリアーネ殿下のお相手は私以外他におりません。だから私としては、此度の計画は致し方ないとはいえ少々遺憾の意を表します」
「……どうしてドミニク様しかないと?」

 公爵家はユタバイト家しかないが、高位貴族なら他にもいる。必ずドミニク様を伴侶としなければならないことはない。
 それにユタバイト家にはもう一人、テオドア様もいる。

「あははっ! 殿下はご冗談もお上手でいらっしゃる」
「……どういうことかしら」
「だってそうでしょう? 青に不純物を入れてしまったら濁って別の色となってしまう」

 ドミニク様は至極当然のことを諭すように、微笑んだ。
 
「我がユタバイト家は、唯一王族の血を引いております。そしてほら、私はご覧の通り髪も瞳も青だ」

 青とは言っても、髪は青みがかった灰色とも言えるし、瞳は黒にも見える藍色で、純粋に青とは断じて言えない。
 だがドミニク様は誇らしげだった。


「一度薄まってしまった王家の青い血を再び濃くするキレイにするには、私以外におりますまい」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない

橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。 そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。 1~2万文字の短編予定→中編に変更します。 いつもながらの溺愛執着ものです。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

無能と追放された魔導鍛冶師、最強の騎士に拾われ溺愛される

ムラサメ
恋愛
​「君の打つ剣は輝きが足りない。もっと華やかに光る、騎士団の象徴となる剣を打てないのか」 ​実家の鍛冶屋からも、婚約者である騎士団長カイルからも「無能」と切り捨てられた鍛冶師・メル。不純物を削ぎ落とし、使い手の命を守るためだけに特化した彼女の「究極の業」は、美しさを求める凡夫たちには理解されなかった。 ​冷たい雨の中、行き場を失い魔物に襲われた彼女を救ったのは、隣国の至宝であり、その強すぎる魔力ゆえに触れる武器すべてを粉砕してしまう最強の騎士――アルベールだった。 ​圧倒的な武力で魔物を屠り、砕けた愛剣を悲しげに見つめるアルベール。周囲がその「化け物じみた力」を恐れて遠巻きにする中で、メルだけは違った。彼女は泥にまみれた鉄の破片を拾い上げ、おっとりと微笑む。 ​「……騎士様。この子は、あなたの力に応えようとして、精一杯頑張ったみたいですよ」 ​その場で振るわれたメルのハンマーが、世界で唯一、アルベールの全力を受け止める「不壊の剣」を産み落とした瞬間――最強ゆえに孤独だった英雄の運命が、狂おしく回り始める。

『嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です』

由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。 婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。 ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。 「君を嫌ったことなど、一度もない」 それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。 勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

処理中です...