逆ハーレムを作ったけど、護衛騎士が婿候補をことごとく蹴散らしていく件【R18】

冬見 六花

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13 月渡り

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 独特な緊張感に包まれながら体を隅々まで磨かれた後、薄化粧をして真っ白なナイトドレスに着替えた。
 ナイトドレスとは言うがシュミーズようなもので、煽情的なデザインではない。その上から厚手のガウンを羽織ったところで準備は終了となり、これから後宮へと向かう。


 月渡りの際は必ず白を纏うことが決められている。
 これは後宮へ続く渡り廊下を歩く際に月明かりによってドレスが青に見え、王族は「幻想の青い衣装」を身に纏うとされている。王宮と後宮を繋ぐ渡り廊下が仰々しいのもこのためだ。そしてこれはユタバイト家が大好きな青信仰の一つでもある。
 
 もちろんそんなことは後宮が廃止されたため無くなりかけたしきたりで、今回の逆ハーレム計画を進める際に引っぱり出してきた歴史書に記されていたものをそのまま起用したものだ。
 そもそも前回後宮を使っていた数代前の国王は男性で、後宮は女の宮だったそうだから、過去の男後宮時代にこのしきたりが行われていたかは記されていなかった。そのためこのしきたりが行われていたかは定かではないのだが、そこを突いてしまうのは野暮だろう。

 さらに言ってしまえば後宮は王のためのものであって、王太子のために開かれること自体異例なことだ。
 様々な「異例」を受け入れた結果「白を纏う」という慣例だけを決行するのは一種の意地とも言える。

 とはいえ白のドレスを纏ったところで、そんな服一枚でスタスタ歩いていたら婿の部屋に着く前に寒くて体調を悪くしてしまうだろう。必然的に上から何か羽織らなければならない。
 この点を昔の王族はどうしていたのだと問いたいところだが、今よりも遥かに王の威厳や王の血を尊んでいたところを鑑みると、寒さに耐え忍んでいたのだろう。
 所詮、威厳というのは王の見栄っ張りと我慢強さで示していたものなのだ。


 淑やかに歩きながら頭の中で昔の王族に毒吐いていると、件の渡り廊下へとたどり着いた。
 冬が近い夜に、厚手とはいえガウンとシュミーズのみで歩くのはやはりかなり寒い。だが時期的にまだ息が白くなるほどではないらしい。
 とはいえ体のことを思うとさっさと渡ってしまいたいが、心はゆっくり進めと言っている。

 ヴォルフへの想いに気付かないままでいられたら、私は今頃どういう気持ちでこの廊下を渡っているのだろう。
 きっと今よりも気楽で、でも「早く終わってほしい」という気持ちは変わらないのかもしれない。でもこれは後宮にいる婿候補全員に失礼な思いだから、口にすることはしないけれど。

 やっぱり、言わなければよかっただろうか。
 たぶん、私は明日以降もこれまでと変わらずヴォルフと接する自信がある。

 だが彼はどうだろう。

 敬愛している姫に想いを寄せられ、一方的なキスと告白を受けたまま一晩放置され、その間姫は他の男に抱かれている。
 考えただけでもヴォルフが苦悶することがわかる。

 困らせたくなんかなかった。とは言わない。
 私の行動がヴォルフを困らせることはわかっていたのだから。

 あれはただの自己満足だ。
 スッキリした気持ちでこの廊下を渡りたいと考えた、私の浅はかな自慰行為。


 恋とはときに人を変えるものだと、聞いたことがある。
 理性を失い、自分が自分でなくなるような想いにかられてしまうものなのだ。と。

 だけど今の私は私のままだ。
 ヴォルフが欲しいと頑是ない子供のように喚きたいとも思わないし、この廊下を渡ることが嫌で、王宮から、そして将来の女王の座からも逃げたいだなんてことも思っていない。


 所詮私の恋は理性も自我も失わない、見切りがつけられる程度の恋だったのだ。


 だけどそれに振り回されたヴォルフには、かわいそうなことをしてしまったと思う。
 さっきのことでヴォルフが私に仕えることが嫌になるかもしれない。
 私からは「ヴォルフはいらない」なんて言わない。でもその逆は有り得ることだ。

 そのときは、潔く彼を手放そう。
 私との繋がりなど捨てて、結婚だってすればいいしどこかに旅に出てもいい。
 私はそれを、きちんと祝福できるはず。


 ヴォルフには幸せになってほしい。


 その思いは変わらないのだから。



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