逆ハーレムを作ったけど、護衛騎士が婿候補をことごとく蹴散らしていく件【R18】

冬見 六花

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プロローグ

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 昔々あるところに、かわいそうな女の子がいました。


 女の子は家族にいびられる毎日を送り、自分の人生には希望などない真っ暗闇なものだと思っていました。

 ですが女の子のもとにある日突然、目が眩むほど綺麗な王子様がやってきました。

 王子様は悪いやつを退治し、女の子に手を差し伸べ、助けてくれました。
 それから二人は互いに愛し合い結婚をして、女の子はお姫様になり、幸せに暮らしました。

 

 子供の頃、そんなよくある筋書きの本を読んだ。
 そして思った。
 
 王子様というのは、かわいそうな子を助けてくれる人のことなのかな? と。

 だとしたら私はどうなるのだろう?
 だって私は家族にいじめられておらず、とっても幸せな毎日を送っていて、全然かわいそうじゃない。
 しかもすでにお姫様だ。
 
 そんな私の前に、王子様は現れてくれるのかな?
 いや、そもそも私に王子様助けてくれる人は必要なのかな。と。


 そうして、私は深く考えた。
 


 


 ◇ ◇ ◇





 
「ユリアーネ殿下は本当にお美しい御方でいらっしゃる」


 午後の日差しは、薔薇が咲き誇る温室に心地よい光を齎している。
 一面に広がる草花は心地よい香りと見目を楽しませてくれるものなのに、目の前の令息は入室したときですらそれを楽しまず、着席してからずっと賛辞の言葉を述べ続けている。

「見るだけで甘味を感じさせるようなローズピンクの御髪と、早朝の水景色を思わせる澄んだ淡青の瞳に心寄せる者も多いことでしょう。もちろん、私もその一人だ」
「まあ。お上手でいらっしゃるわ」
「嘘偽りない言葉にございます」

 その嘘偽りない言葉に似たような歯の浮くような賛辞を、今日も何人にも浴びせられている。
 生まれてこの方、ずっと同じようなことを言われているから今更辟易もしないが、朝からぶっ通しで称賛されているとさすがに疲れてきてしまう。

 そろそろ表情筋が麻痺してきたと思ったとき、黒い革手袋を付けた大きな手が、私を庇うように急に目の前に現れた。

「なっ、なんだ。急に殿下の御前に手を出すなど無礼だぞ!」

 指の隙間から、向かいに座る令息の怒る表情がよく見えた。
 手の持ち主は顔を見ずともわかっている。今の今まで私が座るソファの後ろに侍っていたはずの護衛騎士が、私を守るように前に立っていた。

「失礼。姫様はどう見てもご体調の優れないご様子。目の前の姫様のご様子にすら気付けない者に、姫様との未来を見据える資格などないかと」
「なっ……!」

 こら……! と言いたいところだがいつもの淑女然とした態度を崩すことはしなかった。
 体はすこぶる元気だが表情筋は疲弊はしているため、体調が優れないというのは大枠でいえば間違ってはいない。だが私はそれを悟られないよう振舞えていたはず。それを今日初めて話をした方に見抜けるはずがない。
 むしろ後ろにいたはずなのに、何故お前は気付いたんだと言いたいほどだ。

 明らかに顔を引き攣らせている様子の令息に申し訳なさがたつが、とにかく今は休みたい。

「で、殿下の護衛は、些か干渉が過ぎますな……はは」
「申し訳ございません。忠誠心が強いもので。ですが護衛の言う通り少々体調が優れないようなので、今日はお暇させていただきますわ」
「そんな……! まだ少ししか……」
「ではまた改めて」

 その場を後にすると、後ろから引き止める声がしたが、護衛騎士のヴォルフが私の姿を隠すようにピッタリ後ろに立った。

「ハア……」

 自室へと戻り、自分とヴォルフ以外誰もいないことを改めて確認したところで、壁に手をつき大きなため息を吐いた。

 いったい自分は今何をやっているんだと言いたくなるが、その答えはわかりきっている。
 だが、口に出さずにはいられなかった。


「どうして、こんなことになってしまったの……」



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