YELL~未来からのメッセージ~

ブックリーマン

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第1章・第1節:新生活の始まり

自分だけが知っている

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「”第一章だけは読んで欲しい”」
指示に従い、皺一つない本を丁寧に扱いながら、読み進めた。

「え、なんでこんなことまで」
そこには、若い男がこの本が未来の自分が書いたものであると説得されるようなエピソードが綴られていた。

子供のころ住んでた家の和室に、母が大事にしていた人形があった。ちょっとした悪戯心で触った時に、落として壊してしまったことがあった。当時は風のせいで倒れた事になったが、犯人は別にいたのだ。

また、中学生の時、片思いしていた同じクラスの女子に、人知れずラブレターを書いたことがあった。自分だと名乗らなかったので、当時それを知る人はいなかった。

他にも、地元を離れ上京して数日、少しホームシックになっていたことなど、誰にも話したことがない話が具体的に書かれていた。紛れもなく著者が自分自身でないと知り得ないことばかりであった。

記憶の奥にしまい込んでいたはずの過去の出来事が次から次へと、怖いくらいに具体的に書かれている。

 ”キミが秘密にしてきたことを今更書き出してすまない”
 ”だが、この本自体がキミ自身によって書かれたということを信用してもらえるのではないか”
 ”私は、キミであり、キミは私なのだ”
 
 ”キミはもっと成功できる。その手伝いをするだけだから、気楽に私のアドバイスを受け入れてほしい”

「本当に未来からのメッセージなのか」

信じられないが、この本は未来の自分が著者であり、本当に未来の自分が過去の自分に向けて書いた本のようだ。

書かれていたことを、どこかで酔って誰かに話してはいなかっただろうか、うっかり口を滑らしていなかったか、何度も頭を巡らしたが、やはり誰にも言っていないはずである。

怪しい本ではあったが、"これからの社会人人生を成功させるためのアドバイスをくれる"というではないか。
どんなアドバイスがこのあとの章に書かれているのか。

若い男は、その奇妙な本に戸惑いながらも、興味を惹かれ、時間が経つのも忘れて読み進めていった。
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