社会復帰は家庭教師から

Neu(ノイ)

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一章:精神病×難病×家庭教師

嫉妬ですか? 01

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【嫉妬ですか?】


 椎名さんに会えたことが、俺の胸を躍らせている。
馬鹿みたいにはしゃいでいる自分を自覚する。
どうしてだろうか。
胸がときめいて、息が苦しい。
苦しいのに、それさえも嬉しいのだ。
訳の解らない高揚感。
それを恋と呼ぶのなら、俺は椎名さんに恋をしているのだろうか。


 いつものように、斜め後ろに感じる気配に、意識は中々勉強に入っていかない。
数字の羅列は、何かの暗号のようだ。


 そんな俺の様子に困ったように息を吐くのが聞こえてきた。
些細なことではあるが、俺はどうにも落ち着かない。
変に思われたかな、だとか。
呆れてるのかな、だとか。
椎名さんの一挙一動に一喜一憂している自分を愚かしいと思いつつも、考えることは数学を飛び越えて椎名さんのことばかりだった。

「つぅ君。俺のせいだとは思うけど。取り敢えず、今は集中しよう?」

苦笑混じりで告げる椎名さんに、何故だか無性に腹が立った。
余裕綽々な様が、俺だけが狼狽えている事実が、腹が立つのと同時に悲しくもさせられる。

「し、椎名さんにとっては、どうってことなかったかもしれないけどさ。俺にしたら、その、初めてだったし。色々考えちゃうんだよ。今日は、友達にも告られて、頭ん中ゴチャゴチャしてんだ。来て貰って嬉しかったけど。勉強って、状態じゃ」

机の上の教科書を睨み付けながら、支離滅裂に叫ぶも、途中で腕を引かれて、言葉が止まった。
振り返ると椎名さんが悲しそうに此方を見ている。

「ごめん。昨日のことは悪いと思ってる。でも、軽い気持ちでした訳じゃないのは、解って貰いたい。……付き合うの?」

真剣な瞳に捉えられて、目を離せなくなる。
椎名さんの腕に引き寄せられる。
椅子のキャスターが回り、体ごと椅子が移動する。
椎名さんの足に俺の膝が当たって止まった。
元々そこまで離れていた訳ではないが、ほんの少しの距離がとても近く感じられる。
喉が凍り付いて何も言えないでいる俺の頬を、椎名さんの両手が挟み込んだ。
心臓が跳ねて、どくんどくん、と煩いぐらいに鼓動を伝えてくる。

「その子と、付き合うの?」

もう一度、ゆっくりと告げていく椎名さんは、何処か感情のない声色で、表情もなかった。
いつもの柔らかい雰囲気が消えて、空気がピリピリと重苦しい。
唾を飲み込んで、勢い良く首を横に振る。
それでも、矢張り声は出て来なかった。

「つぅ君。俺、結構小さい人間だから。こういうの何て言うのかな? 独占欲? 渡したくないな」
「しっ、椎名……さん!?」
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