アリスと兎

Neu(ノイ)

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閑話:アリスと兎と卒業式

アリスと兎と卒業式 06

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其れだからと言うのも可笑しいが、翔の方が前の席である。
彼の一つ後ろの席に座ったところで、着飾った担任が教室に入って来た。
支度に時間を掛け過ぎたのだろう、ギリギリの到着だったようだ。


 最後のHRが始まり、式の説明や、式の後の懇談会の説明、配布物を貰った。
下級生から胸に花のバッジを着けて貰うと、いよいよ体育館への移動が始まる。
廊下に出て出席番号順のまま並んだ。
前に並ぶ翔の旋毛(つむじ)が目に入る。
ふわふわの柔らかな髪だ。
今日はワックスでふわっと感は抑えられているが、架は翔の髪が好きだった。
出会った頃から、この髪が好きだった。
初めはうざったい奴だと、そう思ったが、何故だか憎めなかったのは、翔がとてもほんわかして見えたからだろう。
グレて尖っている自分とは正反対の彼に、知らず知らずの内に惹かれていたのだ。


 嗚呼、好きだな、と。
寒々とした廊下に並んで、スーツを着た同級生の中で、ただその感情だけが鮮明に浮かび上がる。
愛しい想いを伝えたくて、翔の頭に触れた。
ワックスで固められて、いつもと違う感触を残す髪に、卒業なのだと強く実感する。

「どうしたの、カケル?」
「何でもねぇよ。前向いとけ」

不審に思ったのだろう、翔が振り向いた。
込み上げてきた熱いものを呑み込み、微笑みを向ける。
翔は首を傾げながらも、何となく察したのか、何も言わずに前を向いた。


 そうこうする内に、前のクラスの列が動き始める。
一番後ろの人間に着いて、翔も歩き出すのだった。


* * * * * *


 パイプ椅子にずらりと並ぶ人間の中に、自分がいることを不思議に思う。
知らない誰かの名が呼ばれるのを何処か遠くで聞きつつ、翔は横目で隣の架を窺った。
先程は泣きそうな表情をしていた癖に、今は欠伸を噛み締めている。
可愛らしいと思う。
普段は白に近い金髪を、必死で黒髪に近付けたり、少しバカなところも愛しい。
不良を気取る彼が、意外と優しくて真面目なのだと知ったのは、日直で一緒になった時だった。
背の低い翔の届かない黒板を、然り気無く消してくれたり、日誌も気付かない内に書いてくれてあったりしたのだ。
それからだ。
架のことが気になって仕方が無かった。
必要以上に付き纏って、何だかんだ言いながらも拒まれないことが、酷く嬉しかったのを覚えている。


 彼が恵まれた家の人間だと知ったのは、参観会の時だった。
あの時来たのは、確か母親だったか。
冷めている家族だとは思ったが、架の母親に対する態度に、正直腹が立った。
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