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閑話:アリスと兎と卒業式
アリスと兎と卒業式 09
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車は住宅街を進み、公園を抜けて、商店街を突っ切り、とある寺に辿り着いた。
お寺の駐車場に車を停めて、降りた翔は茫然と辺りを眺めていた。
此処は、幼い頃に一度だけやって来た場所だ。
実の父と母が眠るお墓があるお寺だった。
「皆で、報告しようぜ。ちゃんと卒業出来ましたって」
ぼすん、と後ろから頭を優しく叩かれる。
架の声がして、漸く理解した。
自分のために、此処まで来てくれたのだ。
「案内、してくれるか?」
母の言葉に、翔は力一杯頷く。
胸が一杯で、頷くことしか出来なかった。
寺の門を潜り抜け、バケツに水を汲んでから、お墓の前まで歩く。
いつの間に用意したのか、長田は花を抱えていた。
父と母は、共同墓地に眠っていた。
家族が僕しか残っていなく、墓の管理は到底無理だということで、共同墓地にして貰ったのだ。
墓参りにも来れない状況であったのだから、きっと正しい選択だったと思う。
お墓には誰かが供えた花が既にあった。
それに加える形で長田が供えていく。
僕と架は、無言で墓石に水を掛けた。
幸綯と愛架は、線香を用意している。
花を供え終えると、線香に各々火を着けた。
墓の前に立てて、手を合わせる。
僕は幸せですと、自然に浮かんだのは、そんな言葉だった。
胸の中を熱いものが暴れて、堪え切れずに涙がぼたぼたと溢れて落ちる。
うあっ、と嗚咽が飛び出して、そのまましゃがみ込んでしまった。
涙が止まらない。
もっと沢山、一緒に居たかった。
当たり前にある筈の幸せが、自分にはなくて、ずっと寂しかったのだ。
やっと手にした温もりが、嬉しければ嬉しい程に、痛みは大きくなってやってくる。
自分を庇って死んでいった二人に申し訳なくて、幸せになることが怖かった。
幸せになっても許されるのだろうか、と。
常にあった想いが、ようやっと消えていった気がした。
背中を抱かれる感触に気付いて顔を上げる。
架に抱き締められていた。
「俺が守るから、安心して下さい。絶対に幸せに、します。翔を守ってくれて、有り難う御座いました」
強く抱きながら、架は耳元で誓うように宣った。
「家族が、出来たよ。お父さん、お母さん、有り難う。僕は、凄く幸せだよ」
家族が出来て、愛されて、もう寂しくはないと。
言葉にして胸のつっかえは弱くなった。
幸綯と愛架も、口々に翔を大事にすると誓ってくれた。
長田もである。
これ以上の幸せなど、何処を探してもないだろう。
本当の意味で、翔が有住家の人間になった瞬間であった――。
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