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閑話:アリスと兎と卒業式
アリスと兎と卒業式 08
しおりを挟む涙が込み上げるのも理解出来た。
証書を手に込み上げてくるものを堪えようと上を向いた。
ひっく、と泣きじゃくる声がした。
がたん、と隣の椅子が鳴る。
架が戻って来た。
手の甲で目許を拭っている。
しゃっくりを上げて泣いていた。
嗚呼、泣いて良いのか、と。
涙を堪えていた自分を愚かに思える程に、彼は潔く泣いている。
「カケル」
「しょ、う」
自然と名前を呼び合って、そうしたら、涙も自然と溢れ落ちた。
架の髪を撫でて、微笑みを向ければ、彼も落ち着いたのか、笑みをくれる。
こっそりと手を繋いで前を向いた。
そのまま、式が終わるまで架と繋がっているのだった。
* * * * * *
式が終わり、一旦教室に戻る。
翔と繋いでいた手も離れ離れで、少しだけ寂しく思った。
泣いてしまったのは恥ずかしいが、仕方ない。
壇上から降りる時に、長田がまず目に着いた。
メイド服は、矢張り目立つ。
あの鉄仮面が、目尻を拭いていたのだ。
父も母も、ハンカチで目許を拭っていた。
その姿を見たら、もうどうにもならなかったのだ。
他の生徒も泣いていたので、恥ずかしいことではないのだと、自らに言い聞かせる。
教室では、もう一度懇談会の案内があった。
荷物を忘れないように、と告げて担任は教室からいなくなった。
卒業アルバムを開いてメッセージを書き合ったり、連絡先を交換したりしている奴等を他所に、架は翔の背中を叩く。
「この後の懇談会、出なくても良いよな?」
「え? 構わないけど、何か用事でもあるの?」
「まあ、大事な用事。ほら、行こう。親父達も待ってるし」
立ち上がりながら問い掛ければ、翔は頷いた。
架に合わせて立ち上がる。
「皆に挨拶は大丈夫か?」
「うん、大丈夫。カケルは?」
「挨拶するほど仲の良い奴はいねえよ」
念のために確認してから教室を出た。
急いで玄関まで向かう。
靴箱で靴に履き替えて、上履きは鞄に仕舞った。
「何処に行くの?」
外に出て駐車場に向かう途中、翔に尋ねられる。
「報告しに行くんだよ」
それだけ告げて、後は何を聞かれても答えなかった。
駐車場では、父と母に長田が待っていた。
「卒業おめでとう。ゆっくりと皆で話したいこともあっただろうに、悪いね。でも、どうしても家族で行きたいところがあって」
「僕は大丈夫ですけど、どちらに」
「着いてからのお楽しみよ」
事情を把握出来ていない翔を車に押し込む。
運転席に長田、助手席に父、後部座席に架、翔、母と乗り込んだ。
車は学校を後にするのだった。
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