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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
オリエンテーション 37*
しおりを挟む首を絞める力を強くするのと比例して、腰の動きも速くなっていく。
ただ首を絞めているだけなのに、明紫亜は股間を滾らせており、赤い舌を覗かせ白目をむき始めていた。
もう意識を失う寸前なのだろう、亀頭がビクビクと動き射精が近い事を伝えてくる。
自分の手が、今まさに生命を奪うのだと認識すると、ゾクゾクと強烈な快感が体中を巡っていった。
瀕死の状況で、明紫亜の唇が動く。
明紫亜の口から意味を成さない掠れた声が漏れ、どろり、と少量の精を吐き出すのを見届け、司破も彼の太腿に白濁をぶち撒けた。
明紫亜の首から手を放すと、かはっ、と息を吸い込み、彼の胸が上下するのを確認し、安堵に笑みが浮かぶ。
殺してしまうことに快感を覚える自分が、殺していなかったことにホッとするなど矛盾でしかないが、明紫亜を殺すことは望んではいないのだ。
無意味であることに意味があり、明紫亜を殺すことには様々な意味がある。
それだから彼を殺すことはないと認識していた。
それでも、明紫亜の意識を飛ばす寸前の表情は、司破をどうしようもなく煽る。
快感に我を忘れてしまいそうになるのが怖い。
殺してしまいそうになる自分をコントロールするのが難しい。
ああくそ、と悪態を吐き、司破の手はベッドヘッドにと伸びていく。
ティッシュを数枚取り、明紫亜の太腿と陰茎を拭う。
ぼすん、と彼の足を布団に乗せれば、明紫亜の目が司破を捉えた。
「きも、ち、よかっ、た?」
まだ肩で息をする明紫亜に問われ、司破は軽く頷く。
自身も拭い綺麗にし、パンツとズボンに足を通す。
「暫く、首絞めは禁止な」
脱力している明紫亜に下着と下穿きを穿かせていく。
司破の言葉に、彼は不満気に唇を尖らせた。
「今度は、いつ、やります?」
ズボンの釦を嵌める司破に問いを掛ける明紫亜に、司破は苦笑を浮かべる。
「あー、まあ考えとくわ」
明紫亜の乱れた服装を整え、彼に返事をするも、明紫亜は気に入らないと眉を吊り上げた。
「考えるつもり、ないですよね? 初対面の時みたいには騙されませんよ」
怖い声で告げながら、明紫亜の上体が起き上がる。
司破の瞳を見詰めた。
「そんなに首絞め、好きか?」
視線を逸らした司破が困ったように頭を掻いている。
明紫亜は、コクリと頷いた。
「だって、一番死を感じられるから、すごく気持ち良くて、癖になりそうです。司破さんは、愉しくないですか? 僕なんかじゃ気持ち良くない?」
恍惚の表情と共に言い放つも悲しそうに歪んでいく明紫亜の顔に、司破は溜息を吐き出す。
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