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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 06
しおりを挟む汚い不要物だから愛されなかったと言う自己否定の気持ちと、汚い不要物でいれば母は救われると言う自己犠牲の相反した気持ちが、明紫亜の心に深い闇を産み、価値観を歪な形へと変えていったことは否めない。
汚いと詰られ傷付いた幼い明紫亜は、それでも叱られることに生きる糧を見い出していた。
母は自分に優しく触れることもなかったし、明紫亜を見る時は、大抵が辛そうにしていた。
憎悪、嫌悪、殺意、そう言った感情が全て明紫亜に向けられていたからこそ、彼女は自分自身を保てていたのだと、明紫亜は幼いながらにそう信じていた。
恐らく、彼女は養育費を受け取っていたのだろう。
生活費以外にお金を注ぐ母は、毎月ギリギリの生活を送っていたのにも関わらず、明紫亜に掛けるお金にだけは困っていた様子はなかった。
それは当時の明紫亜でもおかしいと思う事象であったのだ。
それだから、解らないと言う父は、本当は誰なのか判明していて、養育費を貰っているのではないかと、そう思ったのだ。
それを周りには知られたくない様子だった。
私生児で父親が明紫亜の存在を認めなかったのか。
あそこまで明紫亜を嫌う母。
明紫亜に向ける殺意に近い憎悪の感情。
それらを鑑みて推察した結果、明紫亜は一つの答えに辿り着いていた。
母を嫌いだと思う気持ちと、大好きな気持ちがせめぎ合い、結局明紫亜は母を受け入れることにしたのだ。
明紫亜の存在は、母にとっては無い方が良くて、それでも生きたいと願う自分に出来ることは、それしかなかった。
汚い不要物だから嫌われているんだと考えると、少しだけ楽になれた。
自分の出生自体を否定するよりは、存在が汚いからだと思った方がまだマシだった。
無理矢理産まされた子供かもしれない。
推理の結果、生じた疑惑は胸の奥深くに仕舞い込んだ。
望まない人間に無理矢理産まされた子供なのかもしれない。
その疑惑は、仕舞い込んでも気付くと目の前にあった。
導き出した答えは、明紫亜にとっては真理であり、其処から逃げ出す為に、強迫概念で埋め尽くした。
汚い不要物、要らない、価値のない人間。
汚いから、要らないから、自分は、愛されない。
決して母からの愛を、求めてはいけないのだ。
彼女を苦しめたくはない。
母が明紫亜を殺したくて餓死寸前に追い込んだのだとしても、それで良かった。
涼子は彼女のことを許せないようだったが、明紫亜に母への怒りは既にない。
母が明紫亜を嫌うことで生きていられたのなら、それだけで幸せだった。
産まれてきて良かったと思える。
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