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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 15
しおりを挟む例えば、親友の蒼真は、親友とは言え親戚である。
明紫亜の事情も幼い時から全てを知っていた。
他人の友人は、矢張り何処か上辺だけなのだ。
明紫亜にとって、友人とはそこまで重きを置くものではなかった。
涼子と叔父の雪代 蒼護(ユキシロ ソウゴ)がいて、従弟で親友の蒼真がいる。
その世界だけがあれば良かった。
他のものなど億劫なだけだ。
他人は面倒でしかない。
明紫亜の事情は、話すには重た過ぎるのだ。
言いふらされても困る類のもので、無意識に距離を作ってしまうのも仕方無いのだと思っている。
けれども、義一郎は明紫亜に対して誠実で一生懸命だ。
微笑ましいし、何処か羨ましかった。
素直に見せ掛けている自分とは違い、義一郎は本当に素直な男である。
自然と彼に対しては誠実でいたいと欲求が膨らんだ。
意味などないと解ってはいる。
どんなに本当を伝えようとしたところで、明紫亜に本当のことなどないのだ。
あるのは本当に近い偽物だけで、結局のところ、明紫亜が義一郎に示せる己のことは微々たるものでしかない。
絶望はいつだって、希望を抱いた後にやってくる。
あまりにも当たり前かのように我が物顔で明紫亜の脳に侵蝕してきては囁くのだ。
義一郎と心から友達になれると期待した。
彼が自分を心配してくれるのが嬉しかった。
それは明紫亜の心にしこりを残す。
期待すればそれだけしこりは大きく膨れ上がる。
弱くて汚い自分が頭を擡(もた)げるのだ。
強迫概念のように、何処からか、じわじわと忍び寄っては明紫亜を責め立てる。
他人と触れ合えるようになった直後は、どす黒い得体の知れない感情が明紫亜を埋め尽くす。
幸せになってはいけない。
幸せになっていい訳がない。
汚い不要物の癖に幸せを望むなんて恥知らずだ。
死ぬべきなのに、生きていていい筈がないのに、何故生きることを望み、幸せを求めるのか。
脳に住み着いた絶望という寄生虫がぐるぐると思考を掻き乱し、明紫亜を混乱に陥れようとする。
ふわり、と微笑み双眸を細めると義一郎の手を強く握り込む。
この日、生まれて初めて、明紫亜は頭を埋め尽くす絶望に抵抗を示した。
これからも、司破と生きて行きたい。
雪代の家族とも一緒に生きたい。
小畑のことも家族だと思っている。
義一郎とは、本当の友達になりたかった。
信じると決めたのだ。
明紫亜を襲う思念は、全てが己の弱さが生み出したものである。
消えてしまえ、と強く願った。
弱い自分とはサヨナラだ、と頭から追い出していく。
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