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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 38
しおりを挟む司破の手が、明紫亜の背中を撫でていく。
司破さん、と呟いて明紫亜は彼の首に腕を回す。
首元に顔を埋め、ごめんなさい、と告げた。
「お前は、何をそんなに謝るんだよ。キノコ刈るぞ、あ?」
「だっ、て、……こんな、弱いとこ、見せたくないのに」
ぐすぐすと鼻を鳴らす音が聞こえてくる。
司破に抱き着いたまま、うぐぐ、と唸った。
「馬鹿キノコ。俺の前で強がったって意味ねぇだろ。泣き虫なのはもう知ってる」
ぽんぽん、と頭を優しく叩かれ、明紫亜の顔がそろそろと上がる。
司破さんズルイ、と頬を膨らませた。
「僕が何年も掛けて築いたものを、どうして簡単に壊しちゃうの? 司破さんが、笑いたい時だけ笑えとか言うから。甘えたい時だけ甘えろとか言うから。僕、どんどん弱くなっちゃうよ。いっぱい甘えちゃう。ダメ、なのに。も、抑えが、きかない」
潤んだ瞳が、責めるように司破を睨み付ける。
司破の唇を舌を伸ばし辿っていく。
ぺちゃ、と湿った音が響いた。
唇を啄むだけのキスを繰り返した後、明紫亜の頭が甘えるように司破の肩口に乗せられる。
「僕、愛し合うセックスとか見たことないから。司破さんとの関係が、そういうのになっちゃうの、すごい怖くて。僕のこと愛して欲しい、なんて欲張りなこと考えちゃうの。僕、本当はね、性的なこと気持ち悪いんだ。自慰もあんまり好きじゃない。それなのに、司破さんにされることは、全部気持ちよくて。司破さんに殺されること考えると、イッちゃう。司破さんのせいで変態になっちゃった」
くふり、と笑う声が聞こえてきた。
明紫亜の唇が司破の首筋を撫でる。
ちう、と悪戯に軽く吸われた。
「人のせいにすんなよ。お前の性癖だろ。まあ責任は取るから安心して気持ちよくなっとけ、変態。もっとそうやって、思ってることは何でも言えよ? 聞かなきゃ解らねぇこともある」
「聞いたら僕のこと、解るんですか? 結構変わってるって自覚はあります」
そっ、と顔を上げた明紫亜に見詰められ、司破は吐息で笑う。
彼の額に自分の額を合わせ至近距離で、ばーか、と告げた。
「お前は難しいようで単純だ。ちゃんと本音さえ言ってくれりゃあ解る。それに、俺もそれなりに変わった人間だからな。変わり者同士、解り合えるだろ」
確かに、と納得を示す明紫亜の肩を押し、ベッドに押し倒す。
ふお、と声を上げる明紫亜に口角を上げながら隣に寝転がり、彼の体に腕を回した。
「今日は書類の作成が多くて疲れた。遅くなって悪かったな。もっとメシアと触れていたいんだが」
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