あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

秘密の関係 54

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「キノコの分際で、気付かない内に土足で上がり込んだ挙句に居座りやがって。特別過ぎて困るんだよ、馬鹿キノコ。俺の方が心臓ジャックされた気分だ。こんな訳の解らねぇ変な感情植え付けやがって」

前方を見据えたままボソボソと呟く合間に明紫亜の手を掴み掌で覆い込むと、そのまま上着のポケットに入れ、手を引くようにして歩く。
明紫亜はパシパシと何度も瞼を上下させた後で、くふり、と笑って司破の手を握り返した。
引かれるままに歩きながら、自分の手よりも大きな大人の掌に、ふんわあ、と感嘆の声を上げる。

「司破さんが抱く感情の何割かに僕が混じれるなら、それがどんな感情でも嬉しいです。なんだかとっても、尊い、ことです。たとえそれが、マイナスの感情でも、司破さんの内に残れるなら嬉しい。僕のこと、もっといっぱい、特別にして下さいね」

双眸を細めた明紫亜の顔が司破を仰ぎ見た。
一瞬動きを止めた司破の唇からは溜息が溢れ落ちる。

「お前の方がタラシだろ。毎回毎回、よくもまあスラスラと人を惑わす台詞を言えるもんだな。俺は自分の自制心を褒めてやりたい」

苦々しく告げる司破に、くたり、と首を傾けた明紫亜の指が司破の指の間を悪戯に撫でていく。
にんまり、と口角の上がっている唇が、ゆっくりと「ねえ、司破さん」と動き、熱い視線が司破に向けられた。

「僕が司破さんの内に残れるのと同じように、僕も早くそうなりたいな。司破さんのこと、沢山ナカに迎え入れて、埋め尽くされて、もう一杯で入んないってぐらいパンパンに、シテ貰いたい、です。司破さんが注ぎ込まれたら、僕のお腹、白いので」

一杯になっちゃいますね、と続けようとした台詞は、明紫亜の口から発せられることもなく消える。
握り込まれた手を布地の中で強く引かれ、ぶつかる体を抱き留めた司破の、恐ろしく思える低い声が耳元で響いた。

「それ以上言ってみろ。今すぐ押し倒して犯すぞ、エロガキ。初めては青姦を所望か? 人様に見られながら掘られてイクか? 流石は変態だな、おい」

肩をビクつかせる明紫亜を眼下に捉え、嘲笑を浮かべる司破に明紫亜の顔に恐怖の色が混じる。

「……ったく、大人をからかうのもいい加減にしとけ、馬鹿キノコ。学習能力ないだろ、お前」

がり、と明紫亜の耳朶に歯を立てた司破から軽く頭突きをされ、ふんぐ、と呻いた。
何事もなかったように歩行を再開させた司破に引かれて歩きながら明紫亜は肩を落とす。

「ごめんなさい。直接的な言葉を入れなければ大丈夫かなあ、と思ったんですよー。だって、僕は学習するキノコですから! セックスって言わなかったもん」
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