あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

秘密の関係 104

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ふんむう、と鼻息を漏らして少年は大人しくなった。
一旦お湯を止めシャワーヘッドをホルダーにと戻す。
ボトルを押しシャンプーの液体を掌で軽く伸ばした後、濡れた頭皮を揉んでいく。

「この髪、父親似なんです。お母さんは大嫌いで、よく髪の毛掴まれて頭を打たれてました。何度も死ねって言いながら、お母さん泣きそうな顔してた。父のことは、思い出すと辛いみたいで、僕の髪の毛を凄い目で睨んでた。だけど、お母さん。……本当は僕のこと殺したいぐらい憎んでたのに。産みたくて産んだ子供じゃなかっただろうに。それでも、生かしてくれてたから。名前なんて数える程しか呼んで貰えなかったけど。でも、僕の名前は。お母さんがつけてくれたんです。世の中の人はきっと、お母さんのこと母親失格だって言うけど。誰がなんて言っても、お母さんは僕のお母さんだから。僕はお母さんのこと、だいすき、なんです。大嫌いって思っても、でもどうしたって、大好きだって思っちゃう。だ、だからね。結婚する時には、お母さんにも祝福して欲しいんです。もしかしたら、司破さんにも酷いこと一杯言うかもしれないけど。僕のこと産んでくれたお母さんに。憎くても殺したくても僕のこと殺さないでくれたお母さんに。……お、おめでとう、って。言って貰いたい。ねえ、司破さん。一緒に、探してくれますか?」

時折、言葉を詰まらせ、それでも泣くことなく言葉を終わらせた明紫亜の体躯は震えていた。

「当たり前だろ。お前みたいな臆病者は、そうでもしないと過去を清算出来ないだろうしな。会ったら言いたいこと全部ぶち撒けてスッキリしたらいい」

シャワーヘッドを片手に取りお湯を出して泡を洗い流していく。
その合間にも明紫亜は「あのね、あのね」と声を張り上げる。

「ぼ、僕ね。……お母さんのこと、ずっと諦めてた。会いたくても我慢した。探したいって思っても一度も言わなかった。僕の存在は、お母さんを不幸にするから。会いたい、探したい、だなんて我儘を言えば、雪代の皆が困るから。誰にも言えなかった。でも、でも。あ、諦め、なくてもいいのなら。甘えてもいいのなら。本音を言っても許されるのなら。僕はお母さんを、諦めたくない。司破さんとの未来を生きたいから。司破さんに殺して貰うまで、ちゃんと生きたいから。だから僕、お母さんのこと諦めたくない。諦めなくても、許して貰えるかな?」

ザァーッ、とお湯が床を叩く音の中で、明紫亜の叫びを聞いた。
泡を全て落とし、少年の髪を絞って水気を落とす。
筋肉の薄い身体を後ろから抱き締め、頬に口付けた。
硝子細工のように繊細で儚い。
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