あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

秘密の関係 110

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「お前は爆弾か? 爆ぜる前に茹で死ぬだろ。真っ赤だぞ」

震える明紫亜の体躯を抱き締める司破は表情一つ変えはしない。
彼は明紫亜の問題に寄り添ってはくれるが、だからと言って必要以上に介入してはこない。
飽くまでも明紫亜の問題なのだ。
逆上(のぼ)せて赤く染まる明紫亜に苦笑を溢して立ち上がった司破に片腕を掴まれる。
引かれるままに立ち上がり湯船から出る。


 バスタオルで明紫亜を拭う司破に身を任せた。
濡れた頭髪を、わしゃわしゃ、とタオルで拭われ、犬にでもなった気分で明紫亜は手に持った、もふもふ、のバスタオルを司破の体躯に宛行(あてが)う。

「なんかこうしてると本当に、恋人、みたいですね」

ふへへ、とニヤケ顔で司破を上目で窺い大きな身体を拭っていく。
とん、と額を人差し指で弾かれた。
困ったように笑う司破の掌がバスタオル越しに頭を撫でていく。

「恋人、なんだから当然だろ。言っておくが、他人にこんな甲斐甲斐しくしたことはない。お前だからしてやりたいんだ。……言わせんなよ、馬鹿キノコ」

じっ、と見詰められ顔が熱くなり俯いた。
司破の眼差しが優しくて、見られていることが恥ずかしくなってしまう。
胸が一杯で上手く息を吸えない。
人を愛しく想う時、人に愛しさを向けられる時、こんなにも胸が熱くなる。
はじめて知る感情が苦しくて、それなのに満たされて嬉しい。


 照れたように明紫亜から視線を外し、少年を見ようとしない司破の手が乱暴に明紫亜の髪を布地越しに掻き乱した後、するり、とバスタオルが頭から下に降り体躯を包まれた。

「後は自分でやれ」

明紫亜の手に持たれたバスタオルを奪い取り、司破は少年に背を向ける。
甘い雰囲気に慣れない二人は結局、別々に体を拭きバスローブを羽織り部屋に戻った。

「司破さん! ケーキ! 食べましょ? ローソクも、ちょっとしかないけど買ったんです! ふーっ、て消すの見たいですっ!」

ぱたぱた、と足音を立ててソファーまで走り寄っていく明紫亜に肩を竦ませる。
ソファーに、ぼすん、と腰掛けた明紫亜の背後に立ち、湿っていつもより落ち着いている彼の頭に手を置いた。

「ちゃんと髪、乾かしてからだ。風邪ひくだろ」

顔を上向かせ青年を仰ぎ見た明紫亜の目に、洗面所にあったドライヤーを脇に抱えている司破が映る。
コンセントをさして温風を出す彼は、どうやら明紫亜の髪を乾かす気でいるようだった。

「ぼ、っ、ぼく! っっ、自分で、乾かせるよ?」

前を向いて明紫亜は自分の髪を掴む。
動悸がどんどん激しくなり、司破の顔を見れそうにない。
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