あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

秘密の関係 117

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恐る恐る司破を窺えば、彼は難しい顔で考え込んでいた。
司破さん、と不安になり名を呼んでいた。
司破の視線が明紫亜と絡む。

「杉木は静岡市の出身だ。お前を追い掛けて来たんだろうな。会ったことはないのか? お前の叔母さんのことも知っている口振りだったぞ。お前から自分の記憶を消したとかなんとか」

ぱちくり、と眼を見開き「んえー?」と間抜けな声を吐き出す。
首を左右に傾け「ん、ん、ん、んんー?」と考えていれば、頭を叩かれる。
司破の口元は弛んでいた。

「僕からルイカの記憶を消した、ってことは会ったことがあるってことですよね。何にも思い出せません。僕、特殊な体質だから友達いなかったし、会ったことがあるなら記憶に残ってると思うんですけど。雪代の家に引き取られて一年ぐらいは外にも滅多に出なかったし」

ぎしり、と音がして司破が立ち上がったと知れる。
すぐに部屋の明かりが灯り、眩しさに目を細めた。

「お前、父親解ってないんだろ? そっちの親戚とか言う線はないのか? 会ったことはなくても存在は知ってるとか」

隣に戻ってきた司破を見上げ、フルフル、と首を左右に振る。
父親に関しては何も解らないのだ。

「……解らないです。知っているとするなら、母と叔母さんだけど。叔母さんが僕に隠しているなら、それはきっと、知らない方がいいこと、なんだと思う。お母さんは父親のこと知ってるんじゃないかと僕は推理しましたが。叔母さんは知らないって言ってた。ユキちゃんは僕のこと裏切ったりしないもん。嘘なんか吐かない」

何処か縋る響きで瞳を揺らす明紫亜に、司破は少年の危うさを感じ取る。
隠すなら明紫亜の為だと解っていながら、自分に嘘を吐くことを受け入れられない。
自分の為に何かを隠している事実が有り得ると薄々感じていながら、彼はその事実から目を逸らしたいのだ。

「そう。どうする? 杉木のこと調べるか?」

明紫亜の依存にも思える叔母への執着に気付いたところで司破に出来ることはない。
彼の抱く叔母の世界が崩れ落ちて明紫亜が不安定になるのならば、その時に支えればいいだけのことだった。
チーズケーキに刺さる小さなローソクを抜いてゴミ箱に放っていく。
ローソクを抜き終わり、ケーキの箱に添えられているプラスチック製のフォークの一つを明紫亜に渡し、残る一つを手に取った。

「探偵を雇うんですか?」

フォークの先を咥え、きょとん、とした目を向けてくる少年に柔く首を否定の形に動かした。

「祖父母に頼む。下手な探偵を雇うよりも確かだ。お前の母と父のことも解るかもしれない。どうする?」
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