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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係(勉強合宿編)14
しおりを挟む頭を押さえムッと唇を尖らせた少女が涙夏を下から睨み付けた。
「失礼な! 腐女子たる者、いつ如何なる時でも男児少年青年壮年を観察しなくてどうするって言うんだ! 決してストーカーではなく、腐女子に生まれ落ちたが故の宿命だ! 勿論、メアだけではなくルイルイもギーチンも、男なら全員隅々まで観察しているぞ? 創作のネタが何処に転がっているか解らないからな。油断は出来んのだよ!」
ふんっ、と鼻息を漏らし大声で言い放つ愛弥をクラスメイト全員が見ている。
丸井も口を半開きにして少女を眺めていた。
「キザシ。お前まさか。メシアで創作とかしてないだろうな? 肖像権の侵害だぞ」
誰もが何を言えば良いのかわからずにフリーズしている中で、涙夏が溜息混じりに問う。
「愛弥さんを見くびらないでくれたまえよ、ルイルイ。実在している人物をそのまま使う訳がないだろう? 一次創作に昇華して楽しんでいるから安心するといいよ」
ぐっ、と親指を突き立てる愛弥は何処までも強気だった。
丸井は聞かなかったことにしたいのか前を向いて動かない。
「じゃ、じゃあ、全員いるみたいだし、B組の後に続いて移動します! ちゃんと着いて来て下さい!」
担任にこの場を制することは期待出来ないと察した義一郎が空気を変えるかのように声を張り上げた。
コンクリートの駐車場を抜け山道に入ると、足元は柔らかな土にとなる。
うんしょ、うんしょ、と木の根っこを踏まないよう、自然物で出来た階段を踏み外さないよう、必死で歩く明紫亜の手に義一郎の手が触れた。
「危ないから、手、繋ごうか」
明紫亜の歩みが辿々しく見えたのだろう。
心配を滲ませ、ほわり、と微笑んでくれる義一郎の顔は優しい。
「う、うん。ありがと、ギーチ。ごめんね、僕、山とか登ったことなくて」
ホッとして彼の手を握り込んだ。
温かな人肌が心地良い。
他人を受け入れることは恐ろしいが、それでも慣れた先には温かさが迎えてくれる。
「あんまり無理しなくても大丈夫だからね? 大変ならペースを落として篠田先生と来てもいいし」
副担任の名を口に乗せる義一郎に、ふるり、と首を左右させる。
副担任には近付きたくないのが本音だ。
彼女にその気がなくとも探られるのは良い気持ちにはならない。
「何だったら俺とゆっくり行くか? お兄ちゃん、メシアの為なら何でもするよ」
後ろから茶化してくる涙夏の腕が背を押してくれる。
重たい身体が楽に前にと進んだ。
折角否定したと言うのに、彼は兄だと言い張るつもりのようだった。
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