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一章:好きです、先輩
好き過ぎて 03
しおりを挟む肩を落とす安月の顔が彰治の顔に近付き、小さな声で問い掛けてきた。
「お前なあ。バカも休み休み言えや。……飲み行ってやるから、しっかり頼んだぞ?」
バーカ、と苦笑混じりに安月の背中を強く叩くも、落ち込んでいる安月に気持ちが揺らぎ、溜息を吐き出す。
仕方ねぇなあ、と笑いながら首肯した。
「約束、ですからね?」
途端に笑顔を浮かべる安月の手が彰治の頬を撫でていく。
その手を叩き落とし、おう、と返事をして、毅を引き連れ、空いているデスクに彼を連れて行った。
* * * * * *
もうすっかりと日も落ちて、気付けばオフィスに残っているのも二人だけになっていた。
彰治は知らず知らず溢した溜息を誤魔化すように頭を掻く。
先程から安月の視線を痛い程に感じる。
だが、どうにもこうにも仕事が終わりそうになかった。
まだ年若い新人は、出来ない訳ではないのに、やろうとしない、わざと手を抜いているように彰治には思えてしまう。
やる姿勢だけはみせても、実際には教えたこととは違うことをしているし、指摘しても軽い謝罪の言葉を口に乗せ、また同じことを繰り返すのだ。
安月とは違った意味で手が掛かりそうな予感に頭痛を覚える。
結局、彰治は自分の仕事と毅に任せる仕事と両方をこなさなくてはならなかった。
日付が変わる前に帰れれば御の字だな、と腕時計を見て眉を下げる。
当の毅は定時で早々と帰って行った。
初日にあまり煩く言うのも気が引けて何も言えなかった彰治の自業自得なのは解っている。
それでも、約束した手前、断るしかない状況に情けなさで一杯になってしまった。
「先輩。確認して貰っても良いっすか?」
不意に、隣の安月に肩を叩かれ、彼のパソコンを覗き込んだ。
自然と近くなる距離に戸惑い、さりげなく肩で安月の体を押しやるも、彼は引く気がないのかビクともしない。
息の掛かる距離に安月の顔があった。
「おい、三田村」
「先輩。これで問題なければ、手伝いますよ」
強い口調で咎め睨む彰治を微笑だけで躱し、安月はそっと彰治の両手を握り込む。
戸惑いに口を半開きにしている彰治と目線を合わせると、彼は俯いてしまう。
「今日、飲みに行けそうにないっすよね? 諦めてあげますから、手伝うことを許可して下さい。それで許してあげるんで」
ね、と甘えた声で促され彰治は堪らずにがなる。
掴まれた手がヤケに熱く感じられた。
「ふざけんなよ。……それじゃあ、褒美にならねぇだろ」
顔を上げた彰治に睨まれ安月は破顔する。
「それもそっすね。じゃ、ご褒美は別に下さい。キス、して欲しいな」
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