逃げないで、先輩

Neu(ノイ)

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一章:好きです、先輩

先輩の危険と後輩の噂 03

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「っ、っっ、ちょ、……おま、っ、やめ、ろっ、馬鹿野郎! 放せって! 三田村、おい、テメエ聞いてんのか!」

捩らせる身体を上から押さえ込まれ、好き勝手に耳を嬲られる。
嫌悪感と言うよりも、擽ったさと焦れったさに体の震えが止まらない。
手足をバタつかせても安月は我関せずと舌を伸ばしてくる。
くっそ、と悪態を吐き彼が落ち着くまで堪えようと覚悟を決めた時だった。

「み、たむ、っ、ら! 流石にそこは、やめっ、っ」

悪戯な手が彰治のスーツを乱し、ズボンの上から股間を弄り始め、ムリムリムリ、と首を左右させるが、男の手は止まらない。
見下ろしてくる安月の瞳を見上げ、彰治は息を詰める。
まるで獣のように鋭い視線が彰治に向けられていた。
抵抗することも忘れ動きを止めてしまう彰治だったが、生地の上から性器を辿る指先に我に返る。

「おっ、い、っっ、やめろ、って! ……おっ、まえ、やめろっつってんだろうがっ!」

静止の言葉にも耳を貸さない安月に怒りが最高潮に達し、彰治は思いっ切り男の頭に自身の頭を打ち込んでいた。

「ぃっ、っっ、たあ、っ! ど、っ、どんだけ、石頭、なんだよ、お前」

だが、デスクの上に上体を沈めたのは彰治だった。
頭を両手で押さえのた打ち回る彰治を眼下におさめ、安月は笑う。
涙の浮かぶ彰治の目元を舌で舐め恍惚の表情で嬉しそうに笑っていた。

「先輩の泣き顔、見たかったんすよ。痛いっすか? もっと泣かせてやりたいけど。これ以上やったら本気で嫌われそうなんで、俺、死ぬ気で我慢します」

何故かドヤ顔で宣い、彰治の上から退く安月の頭を拳で三回程殴る。
矢張り、殴った手にも尋常ではない痛みがやってきた。

「テッ、メエ、っ、ふざけんな! 調子乗りすぎなんだよ! もっ、……嫌いだ、バカヤロ」

止まらない涙を誤魔化すように横を向き、ぐずず、と鼻を鳴らしながら目元を拭う。
デスクから降りた途端に背後から安月に抱き締められていた。

「すんません、先輩。理性が死に絶えてました。許してくれませんか? そんだけ先輩のこと好きなんすよ。好き過ぎてどうにもなんねぇです。嫌いだ、なんて言わないで下さい。そんなこと言われたら俺、先輩のことぶち犯して壊しちゃいますよ? そんなことしたくないんで。ねえ、先輩。許してくれますよね?」

優しい声色に酷く恐ろしい台詞を言われた気がする。
首の後ろに額をグリグリと押し付けてくる男に恐怖がヒシヒシと押し寄せてくる。

「わっ、かったから。お前のこと、嫌いじゃねぇよ。頼むから怖いこと吐かすな」

放して欲しいが怖くて動けなかった。
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