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一章:好きです、先輩
先輩の危険と後輩の噂 02
しおりを挟む唇がくっついてしまいそうな距離で宣う安月は機嫌が悪かった。
「散らかってても良いなら宅飲みでも構わねぇけど。近いって、放せよ」
ピリピリとした安月から逃れようと彼の両手首を掴むが、びくともしない。
眉尻を下げて眼前の男を見詰めれば、彼は表情のない顔で笑った。
「俺はアンタの為なら飼い犬にだってなれるけど。アンタのこと目茶苦茶に抱き潰したいと思っている犬だって忘れんなよ」
至近距離で彰治を睨み、いつもとは雰囲気も口調も違う安月に彰治の肩が跳ねる。
今にも噛み殺されそうで、気付かない内に体躯が震えていた。
「従順なだけの犬ではないんすよ、俺は。覚えておいて下さいね、先輩」
そっ、と優しく触れ合った唇が離れていく。
抵抗するでもなく茫然と安月を眺めている彰治に安月の双眸が愛しそうに細まった。
普段通りの彼に安堵しながらも、短時間の間に2回もキスされたことに、自分の隙が多いのか、と悩んでしまう。
「三田村。キ、キスは、同意を得てからしろ」
安月から視線を下に逸らし何とか注意しつつも、掴んでいる彼の手首を引き剥がそうと力を込める。
「すんません、我慢出来なかったです。府末さん不足だって言ったじゃないすか。本当はまだまだ足りないんですけど。我慢した方がいいっすか?」
何とか安月の手から逃れようとするものの上手くいかず、降りてきた安月の唇が額に触れる。
「我慢しろ! いい加減、放せって。帰れないだろうが」
力では敵わないと諦め、下から睨み付ける。
悔し紛れに安月の足を蹴った。
「だって先輩。明日一日会えないんすよ? 少しぐらい良いでしょう? 先輩が我慢して下さい」
「は? ちょっ、……おまっ、なに、す、っ!」
蹴るのに上げた足を片手で掴まれ、バランスを崩してデスクに背中をぶつけてしまう。
太股の裏側を指先に辿られ、ぞわり、と触れ合う場所から戦慄が走る。
「先輩、好きです。俺のこと、少しは意識してくれてます? 犬と同列に扱うアンタが悪いんすよ。俺いつでも我慢してんのに。アンタじゃなきゃとっくにぶち犯してんのに。ホント頭くる」
身体を押され臀部がデスクに乗り上げた。
首筋に湿った感触を感じたと同時に下から上にと舐め上げられ、ゾワゾワ、と落ち着かない感覚に襲われる。
「犬に舐められてると思えば平気っすよね? 俺ばっか我慢して、フェアじゃないんで。今日は先輩が我慢する日です」
訳の解らない主張をボソボソと低い声で耳元にされ、ふるり、と体躯が震えた。
耳朶を唇に喰(は)まれ、耳の筋に沿って中まで舌が入り込んでくる。
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