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二章:変化の夏
に
しおりを挟む両親は外国で働いているため、何年か前から、祖父母と暮らしていた。
近くにいないからと言って、放任されている訳でもなく、寧ろ、近くで監視出来ないからこそ、父母の束縛は厳しい。
毎日電話やメールのやり取りはしているし、その中で必ず話題にされる、神流自身の進路について、もううんざりするぐらいに決められていた。
弁護士か検察官、若しくは裁判官。
神流に与えられた未来は、三択に絞られている。
自分から進んでなりたいと思ったことはない。
時には息が詰まりそうな閉塞感に襲われもした。
そんな神流の息抜きになっていたのが、緑化委員会である。
土に触れたことも、自然と接したこともなかった神流は、植物に触れることで確かな癒やしを感じたのだ。
それ故に、些かのめり込んでいる節もあった。
家族に隠れてガーデニングの本を買ったり、休日には公園に出掛けるようにもなったのだ。
そんな神流が初めて植えた花を踏みにじり、あまつさえ謝罪もしなかった憎き先輩は、サッカー部に所属するごく平凡な人だった。
平凡とは言え、明るい性格なのか、周りには常に人がいて、ムードメイカーにも見えた。
一見すると目つきが悪く怖いが、口を開けばノリは良い上に、笑えば雰囲気も柔らかくなる。
スポーツマンにありがちな熱血漢らしく、親身に他人の話を聞いている姿も目にする機会は多かった。
他人とは浅くしか付き合わない神流にとって、羽李は未知の世界の生き物にも思えた。
正直、悪い人間には見えないことは、神流とて早々に気付きはした。
委員長の宅福 史壱(ヤカネ フミイチ)の言う通り、悪い奴ではないのだろう。
だからこそ、余計に腹が立つのだ。
一言謝ってくれさえすれば、神流とて此処まで怒りはしない。
悪いことの区別はつきそうな人柄にも関わらず、ことこの件に関しては違った。
委員長が言うには、訳があったらしいが、それならば理由を伝えるのが然るべき行動ではないのか。
国際弁護士として働く両親に、ものの道理を嫌と言う程に叩き込まれている神流にとって、羽李の行動は許されるべきものではなかった。
其処まで考えて、ハッと前を凝視する。
委員長の発した台詞に茫然とした。
ダンッ、と机を叩いて立ち上がる。
生徒の視線が神流に集まった。
「委員長、この組み合わせは納得出来ません! 僕だけ先輩とペアなんですか?」
「うーん、申し訳ないんだけど、皆の予定を加味して組むとこうなるんだよね。羽李はサッカー部の合宿があって、出られる日が限られていてさ。ちょうど宮原とは予定が合うみたいだから、勘弁して貰えないかな?」
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