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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
奴隷と水浴び 23
しおりを挟む理不尽だ、と憤りがメシアを襲う。
所詮は彼もメシアを思い通りにしたいだけの人間なのだ。
どうして期待させるような台詞を吐くのだろうか。
「うるさい! うる、さ、い。アンタなんか、っ、……やっぱり大嫌い。もう、帰る」
苦しかった。
何が胸を圧迫しているのか見当もつかないが、シヴァが原因であることだけは理解していた。
水の中で青年の腕から逃げ出そうと前のめりになると、すんなり解放され、メシアは急いで彼から離れていく。
泉の真ん中まで水を掻いて移動し、浮いている自身の下穿きを取るついでに一緒になって漂っているシヴァのズボンも回収した。
「……きょ、今日のことは、忘れます。だから貴方も、僕のことなんか忘れて、さっさと王都に帰って下さい」
先に岸に上がっているシヴァに向かい、濡れた下穿きを投げ付ける。
びしゃり、と水滴が飛び散った。
メシアは自身の下穿きを絞り草地に転がる布鞄に押し込んだ。
取り出した布で体の水分を拭い、濡れたズボンを手に黙っている男へと投げ遣る。
間抜けにも頭に降り掛かった布を無言で手にした彼は、一旦ズボンを下に置いて体を拭き始めた。
メシアは用意してあった替えの下着とズボンを穿き、下穿きから水分を追い出そうとしている男に視線を投げる。
「……早くしないと置いてくよ」
青年の瞳が此方を向く前にメシアは木々の中にと足を突っ込んで行く。
シヴァは濡れそぼる下着とズボンに足を通し、悠々と少年の背中を追う。
「言っておくがな。俺から逃げられると思うなよ。忘れると言うのなら、忘れる度に思い出させてやる」
低い声が背中に掛けられると同時に、ばさり、と頭に湿った布が被せられる。
後ろを振り向けば男が笑っているのが見えた。
「……嫌いだって言ってるのに。しつこい男は嫌われるって誰かが言ってたよ」
ぷい、と前を向き冷たく言い放つも、男は楽しそうに笑い声を上げるだけだった。
「あ? どうせもう嫌われてんだろ? 今更だな。一度嫌われたなら二度も三度も同じだ。それに、俺はお前に好かれようと思っている訳じゃない」
明快に笑うところなどはじめて聞いた気がして、メシアは俯く。
何故だか恥ずかしくて堪らない。
「俺に跪いて傅け。俺のために生きろ。お前の人生を俺に捧げろよ」
告げられた台詞は傲慢なものでしかなく、メシアには堪えられない類のものの筈だった。
少なくとも昼間出逢った時ならば恐怖に震えてしまう内容だ。
それなのに、今のメシアは火照る体躯をどうして良いのか解らずに紅潮した頬を見られないように俯き加減で早足に歩くことしか出来ない。
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