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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
付き纏う王子 11
しおりを挟むずくん、と心臓が痛み苦しくなる。
メシアのことなどお構い無しに事を進めようとする癖に、誰もが気にもとめない少年の希望を聞いたりする。
その甘言が齎す絶望を暴行と呼ばずに何と呼ぶのか、メシアには解りそうもない。
黙って青年の首に腕を回し、唇をくっつける。
これ以上の会話に意味はない気がした。
自分の未来に期待などしたことはない。
そんな願いを口にしてしまえば、辛くなるだけなのだ。
これ以上は話をしたくなかった。
「早く、僕を壊してよ」
誘うように舌を伸ばすメシアを、男は無表情で見下ろしている。
性的なことをしたい訳ではないが、どうせ逃げられないのだ。
ただ嬲られるのは面白くない。
手っ取り早く言葉を封じてしまいたかった。
「……意味、解って言ってんのか?」
眉を顰めた男に悪戯に笑みを向ける。
さあ、ととぼけた唇に噛み付かれ、僅かな痛みが走った。
湿った肉の感触が口唇を辿る。
噛み付いた箇所を癒すような優しい動きが逆に恐ろしい。
拒否しても触れてくるのなら、乱暴にして欲しい。
虐げられていた方が、優しくされるよりも無心でいられる。
悪意ならば無視してしまえばいいのだ。
そしてメシアは、他人から否定されることに慣れ切っていた。
心が痛まない訳ではないが、だからといって今更傷付くだけのモノも残ってはいない。
逆に優しさや温もりを感じることに恐怖を覚えてしまうのは仕方のないことだろう。
手にしたことのない未知の感覚は、いつでも少年の心を切り付ける。
それだから、苦しいだけだと解っていて尚、触れたいなどと思わせる眼前の男が酷く恐ろしい。
「もっ、と……ひどく、してよ」
せめて乱暴に扱ってくれたなら、彼を恨んで嫌悪し、どうにもならない現実に涙するしかない悲劇を言い訳にしてしまえる。
被害者なのだと浸っていれば、現実から目を背けられるのだ。
現実逃避すら許してくれない男を睨み付けた。
「……お前が泣くのは、どうにも心臓に悪い。泣かせているのは、いつだって俺なのにな」
さわり、と頬を撫でていく温もりに体躯が震える。
何の感慨も籠められてはいない筈の、平坦な口調であるのに、不思議と切なくさせられる響きだった。
「泣、いて、ない」
なけなしの強がりを零せば、ふっ、と吐息で笑われる。
確かに、無理のある言い分だ。
出逢ってすぐに他人に触られる恐怖に涙したのはメシアである。
「それならそれでいい。俺以外の人間に泣かされるぐらいなら、俺を恨んで泣け。お前が流す涙一滴でさえ、俺のものだろう?」
嗚呼、とメシアの胸中に青年への哀れみが芽生えた。
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