性教育はコッソリと

Neu(ノイ)

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一章:教育されてます!

理由と想いと許容 05

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ふふ、と神流の口から笑いが溢れる。

「今日は、泊まっていって下さい。お願い、ではなく、命令です」

神流の指先が首を辿っていく。
そのまま、告げられれば、羽李は体を震わせて何も言えなくなってしまう。
何かを言いたくて口を開けるも、わなわなと戦(おのの)く唇は使い物にならなかった。
羽李の状況を把握しつつも、沈黙は肯定だと言わんばかりに神流は、イイ子ですねと呟き、漸く羽李の首から手を退かす。
その手は、頭に移動し、羽李の髪に絡めては、彼に微笑みを向けた。

「さあ、寝ましょうか」

未だに震える羽李の体に布団を掛け、自分も隣に入れば、羽李に腕を巻き付ける。
抱き締める形で神流は羽李の髪に鼻先を埋めた。

「お、れ。お前、こわい」
「解っています。羽李さんがイイ子にしていて下されば、怖いことはしませんよ。なるべく痛いこともしないように努力します。怖がるな、とは言いません。でも、嫌わないで下さい」

やっと口を開いた羽李の唇は、まだ微かに震えているようだった。
神流の腕の力が強まり、頭にあった顔は、首筋に下がっていた。
神流が言い終わると同時に、首筋に感じる微かな痛みに羽李は眉を潜めた。
強く吸われたようだ。

「僕のものだという印です。消えたら、また付けましょうね」
「見えるとこに変なもん付けんなよ」
「見えなくては、付ける意味がないでしょ? ほら、明日も仕事ですから、寝ますよ」

羽李の首筋に、紅い鬱血が一つ出来ていた。
俗に言う、キスマークだ。
嫌そうな顔をする羽李にもお構い無しで、神流は枕元に無造作に置かれているリモコンを掴み、電気を消した。
辺りは真っ暗になり、羽李は嫌でも此処で、神流に抱き着かれた状態で寝ざるを得ないことを悟る。
神流への恐怖心が消えない限りは、神流の担当でいる間は、許容するしかないのだろうか、と自問自答するも、答えがないことは解っていた。


 こうして、羽李にとって最悪な日々が幕を開けるのだった――。
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