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一章:鬼畜極道は似非王子を騙す
王子とキノコと学校生活 06
しおりを挟むふんぐう、と独特な声を上げて泣きじゃくる明紫亜の背中を撫でる。
蒼真の胸に顔を埋め、しがみついてくる腕は痛々しい程に震えている。
怖かった、と繰り返すだけの明紫亜はそれ以上の言葉を口にはしない。
後ろで見守っている蒼護を覗えば、彼は肩を竦ませた。
「中等部の生徒がメシアの噂を耳にしたみたいで面白がってね。ちょっと性的な部分にも触れたりしたみたいで」
ざっくりと説明する父は普段と変わらずボケボケとしているが、声色には怒りが含まれている。
蒼真も平常心でいられず「コロス」と思わず口走っていた。
「父さん。息子がいたことは忘れてくれ。今から殺してくるから」
ちょっと其処まで、というノリで踵を返し歩き出そうとする蒼真の背中を明紫亜の手が掴んで引き寄せる。
前に進めずに振り返った蒼真の目に、明紫亜の膨れっ面が映った。
「ダメだよ、ソーマ! ユキちゃんが悲しむから殺しちゃダメ。僕、大丈夫だから」
ね、と傾いた彼の顔には悲し気に歪む笑みが刻まれている。
涙を必死で堪え、震える口角を引き上げていた。
蒼真を止める為に無理にでも笑顔をみせる明紫亜の頭の中には涼子のことしかないのだと思い知る。
彼はいつでも涼子を中心に物事を考えている。
何よりも涼子が大事で、涼子しか見ようとしないのだ。
「……大丈夫な訳がないだろ? こんなに震えているのに。殺すのはやめるけど、それ相応の報いは受けて貰う。当然だよな、父さん」
悔しかった。
所詮は涼子の付属品に過ぎない自分に嫌気がさした。
それでも、明紫亜に「涼子以外にも目を向けろ」とは言えず眉間に、ぎゅう、と皺を寄せる。
固く握り締めた拳を緩め、明紫亜の頬を撫でた。
「そうだねえ。理事長とも相談するけど。暴行事件を起こして無罪放免という訳にはいかないと思うよ。と言うか、蒼真が殺さなくても理事長が殺しそう。あー、考えただけで怖いなあ。それに、涼子なら裁判でも起こしそうだし」
想像して頭が痛くなったのか、蒼護は頭を抱えて「うううう」と唸っている。
あながち否定も出来ず、蒼真の口からは溜息が溢れ落ちた。
「仕方無いよ、父さん。メシアに手を出した奴の自業自得だ。因果応報、これ理なり」
「何それ? 僕、聞いたことない」
しれっと適当なことを宣う蒼真を、きょとん、と見詰め明紫亜が首を傾ける。
可笑しそうに目が細まっているのを確認し、蒼真の口元には微笑が刻まれる。
「当たり前。思い付きだからな。上手いだろ? 動けそうなら帰ろう。荷物、父さんに任せた。忘れずに持って帰って来てよ」
明紫亜の顔を覗き込み顔色を確認する。
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