鬼畜極道と似非王子

Neu(ノイ)

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一章:鬼畜極道は似非王子を騙す

王子とキノコと学校生活 08

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明紫亜の耳に入れないようにと家族で守ってはいたが、何処まで守れていたのかは甚だ疑問が残る。
何かを感じ取っていたのは確かで、雪代の家に迷惑を掛けたくないと静岡を離れる決意をしたことは、蒼真も頷けるのだ。
客商売である以上、イメージは大切で、聡い明紫亜が自分の存在をマイナスだと評価してしまっても仕方がない状況ではあった。
ただでさえ彼は、自分は死ぬべきなのだと想いながら生きているのだ。


 しかし、明紫亜と離れて生活する未来など、蒼真には1mmも想像出来なかった。
明紫亜が静岡から離れるのならば自分も着いていくのだと、当然のようにそう思っていた。


 それを拒んだのは明紫亜だった。
涼子の傍にいて欲しい、と頼み込まれてしまえば、彼の願いを呑み込む他にはないのだ。
蒼真はいつだって明紫亜の願いを叶えたいのだから、たとえ喧嘩になっても最終的には従兄の思い通りに動くことになる。
それを解っている明紫亜は狡い。
どうしたら蒼真が思い通りに動くのか、計算して言動を取っている癖に、蒼真の恋心には気付こうともしない。
彼の中で蒼真が従弟以上の存在になることはないのだと、随分と早い段階に気付いても尚、明紫亜を諦めることが出来なかった。




 結局、明紫亜は一人で東京に行ってしまった。
残された蒼真は、明紫亜のいない無味乾燥な学校生活を淡々と過ごしている。
女子に騒がれ、男子に疎まれ、特定の友人も作らず、ただ勉学の為だけに通う。
明紫亜がいないだけで世界は色を無くす。
ほわほわ、と動くマッシュルームのような頭髪が、くふくふ、と響く謎の笑い声が、何処にいても足りない。
その癖、新しい環境で上手くやっているのか、蒼真の中を占めるのは明紫亜への心配ばかりである。


 静岡市葵区では毎年4月の頭に「静岡祭り」が開催され、その関係上、学校が始まるのも祭りが終わった後になる。
2019年の祭りは4月5日~7日に開催された。
その為、高校の入学式は8日に行われ、明紫亜よりも一週間遅れての入学式となった。
蒼護も涼子も仕事で、蒼真の入学式に家族として参加したのは、理事長職を退いた蒼吉と祖母の真胡だった。
とは言え、蒼護も理事長として式には参加していたので、一人で入学式を迎えた明紫亜を思えば贅沢なぐらいだと蒼真自身は思っていた。
涼子は裁判があり全く参加出来ず、申し訳ないと謝罪してくれたが、高校生にもなってどうしても家族と式に出たいなどという拘りもないのだ。
寧ろ、明紫亜が隣にいないことの方が蒼真には堪えていた。
何年も一緒に過ごした相手がいない喪失感は大きい。
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