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二章:恋するクマさん♫
クマさんと嫉妬 01
しおりを挟む【クマさんと嫉妬】
夢を見ていた。
駒谷 志那(コマヤ シナ)が愛してやまない筋肉を思う存分に愛でる幸せな夢だった。
その肉体は何処かで見た覚えのあるもので、抱き着いて触り揉んで頬擦りをし、時折、かぷり、と良質な肉に歯を立てる。
美味しくはなくて「不味い」と漏らす。
それでも噛みごたえのある筋肉に楽しくなった。
恍惚の時間を暫く過ごした後で、はた、と筋肉の持ち主が誰なのか今更ながらに気になってしまう。
胸筋に擦り付けていた顔を上向かせ相手を確認した途端に志那の心臓が暴れた。
「志那」
志那を優しく呼ぶ声に動悸が止まらない。
嗚呼、と無意識に出た音に、男が微笑んだ。
「ジロさ、ん」
掠れ声で彼の名を口にすれば胸が、ぎゅっ、と切なくなる。
「起きないと遅刻するぞ?」
さわり、と頬を大きな掌に撫でられ、あれ、と首を傾ぐ。
起きているのに何を言っているのだろうか、と唇を尖らせた。
「またお前は。……そう可愛い顔をするな。ただでさえ寝不足で死にそうだってぇのに。お前は俺を殺す気か?」
あ、と思った時には唇に優しく他人の温もりを感じる。
柔らかい感触は唇だと解っている。
昨日知った男の感触だ。
「起き、て、る……ダロ」
もっとその感触が欲しかった。
ねだるように唇を突き出すと湿った肉厚なものが這う。
何なのか解らずに舌を伸ばすと温かな何かに触れた。
「なあ、志那。頼むから起きてくれ。流石にヤバイ。俺の理性も時間もギリギリだ」
ぴくり、と微動して謎の物体は離れていってしまう。
んや、と飛び出したのは自分の寝惚けた声で「あれ」と混乱する。
自分は起きているのに何でこんなにも、ふにゃり、とした声が出るのだろうか。
「可愛い声を出すな。ほら、起きろ」
むぎゅ、と鼻を抓まれるのが解った。
苦しくなって薄っすらと瞳を開けて、漸く自分が夢現の世界にいたことに気付く。
「んんん、っ、んーっ、……なっ、なん、っ! え? ジロさ、何で一緒に寝てんの? な、っ、なな、っ、何で俺、裸?」
覚醒した脳が認識したのは、自分が久間 二良(クマ ジロウ)に抱き着き、足を彼の体躯に絡ませていることだった。
一緒のベッドで寝ているという事実に心臓が、どくん、と跳ね、更にはパンツ一枚の己の状況に顔が一気に熱くなる。
「何もしてねぇから安心しろ。昨日お前、制服のまんま寝てただろ。着替えさせてやろうとしたら、人の腕に抱き着いて離れやしないから、一緒に寝かせて貰った」
おはよ、と優しい眼差しに見詰められ「ん」と短く返事をするだけで精一杯になる。
くしゃり、と髪を乱された。
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