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第五章 足音
一節 獣魔がやってきた
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朝からフラメンファルケのニクスと、アイスボルフのリールと戯れるセレとイムの二人を眺め、ルシフェルは息を付けた気分だった。本を読みつつ、昨日のことを思い出した。
ガブリエラが連れてきた二匹がやってきたのは、二人が寝静まった夜だった。
家を借りるまで夜は常に一緒にいたが、以外にも三ヶ月で片方いれば寝付けるようになっていた。うなされでもしない限りは、横にいる必要はなく、悪夢で目覚めても一階にいるのを知っているので、自分で降りてくる。
ラジエラが寝かせつけたのを報告したのと、ガブリエラが来たのは同時だった。
グリフォンは神殿所有の戦力として、やはり破格すぎるので、ラジエラがよく言い聞かせて世話の問題を解決し、旅団として各地を回るようになってから借りることになった。
グリフォンがラジエラ所有にはならなかったので、彼女に二匹の名前を付けさせた。
彼女曰く、フラメンファルケはフェニックスを母国語読みした時の発音から、アイスボルフはフェンリルを母国語読みした時の発音から取っているそうだ。
名前はたいそう気に入ったようで、その場で眷属になってしまったが、二匹曰く、群れの長が眷属であって、自分達は準眷属の為に問題はないという。それに、主の子供の為に来たのであって、将来の邪魔をしに来たわけではないのも理由らしい。
ニクスは初め、ルシフェルに名前を付けてもらう事を希望していたが、強い希望という訳でもなく、その方がうれしいのだが、恐れ多くて申し訳ないと言う感じだった。熾天使クラスと顔を合わせることはまずなく、何かあれば智天使以下と顔を合わせることが多かったからだという。また、同族ではないが、過去に熾天使に名付けてもらって勘違いを起こしたものがいるらしく、そうなりたくない気持ちもあったようだ。
リールは二人が守れるならどうでもよかったようだ。
二匹とも気象変動の対処に回らなくて済む、という事を素直に喜んでいるのは黙っておこう。
二匹と遊んでご満悦の二人が、昼食を取ってからすぐに、リールのお腹を枕にしてお昼寝に入ったことは僥倖と言える。自分たちの時間が作れるからだ。
アイスボルフ自体かなり体格がよく、体高が二人の身長の倍ほどもあり、魔法による補助をしなくても大人を乗せて走れる程度だ。爽やかな青銀色のふかふかな体毛に包まれ、ぱっと見では二人を子狼に間違えてしまいそうである。
フラメンファルケは二人の三分の二程度、と言っても鳥なので十分大きい。魔法で爪を保護しているらしく、イムの頭やセレの肩、リールの体に止まっても痛がるそぶりはなかった。名に恥じぬ、燃えるような紅の体躯と青い尾が特徴的で、尾がきれいだとはしゃいでいた。
二人とも、アイスボルフとフラメンファルケとは、あったことがあるようで、二匹を怖がるようなことはなく、寧ろ愛玩動物がやってきた時のそれであった。
「寝ちゃったか」
二人に毛布を掛けて風邪をひかないようにする。
『この後、予定でもありましたか?』
二匹は通信魔法を扱えるらしく、言語も習得していた為、コミュニケーションには困っていない。
「いいや。これからどんどん手が離れていくんだなぁ、とね」
『寂しそうですね。兄様』
二匹とも通信魔法を傍受されることを恐れて、天使名を呼ばないようにしている。と言うのも、対象を絞った通信魔法を覚えていないからだ。
性別の影響なのか、性格の影響なのか、メスでおっとりめのリールはルシフェルを兄様、ラジエラを姉様と、オスで自信家のきらいのあるニクスはルシフェルを兄貴、ラジエラを姉貴と呼ぶ。
『子供を庇護下に置けばそうなるだろう。たった一年でもな』
二匹の寿命は長く、人族とほぼ同じか、少し長いくらいに長生きする。なので、時間の感覚も人と大差はない。
『姉様はともかく、兄様は子供がいてもおかしくないくらいでしたね』
「こんなには大きくないだろうけどな」
『違いねぇ』
そんな雑談をしていると食器を洗い終えたラジエラやって来くる。彼女は二人の様子を見て溜息をつくと、ルシフェルの隣に言って膝枕をしてもらうのだった。
で、結局全員でお昼寝をする、そんな日が数日続き、ラジエラと獣魔の本登録の日が来た。
アイスボルフにまたがる二人は元気いっぱいで、組合に着くと、そんな様子に全員ほっこりと言った具合だ。また、聖女がともにいることの悪目立ちはなく、組合が周知していてくれたようで、むしろ、そんな時期かと感慨深げだ。組合の建物内部は、食堂と待合室が併設になっているものの飲酒が禁止されているのも大きいだろう。
組合の裏手に作らている訓練場に通されるまで、二匹が怯えられることがなかったのは二人のおかげだろう。そんな二人は受付嬢の一人から棒付きの飴をもらって、一生懸命舐めている。
相手が女性なら怖がるそぶりを見せることはなくなった。しかし、相手が男だと顔を背けたり、ルシフェルかラジエラの陰に隠れてしまう。
「おいしい?」
「「うん!おいしい!」」
そんな二人はよそに、訓練場では実力を見る為に、ルシフェル対ラジエラと二匹がやり合っていた。途中から野次も入って大盛り上がりし、『格付通りの新人が現れた』と噂になる程の激戦になった。
組合の人間は、知ってか知らずか、その様子にあんぐりと言ったところだ。
ただ、戦闘評価は分かれるところがあり、彼が軽々と捌いてわざと致命傷になる反撃を入れておらず、彼女と二匹が必死で食らいついているような状況を正確に把握しているものは少なかった。おかげで、大半には二匹を従える彼女の戦闘力が一番だと思われている。
これは、あくまでも彼女と二匹の方が優勢に見えるように戦っていたからである。彼がその気になれば、彼女も二匹も制空権と言う概念を知らないので、空間魔法によって押しつぶすことで瞬殺されていた。また、衆人環視の中に晒せない武器があり、手札が限られていたと言うのもある。限られているだけで、それが少ないかと言うとそうではないのだが。
数的不利をいなすこと自体が常軌を逸しているわけだが、経験の差の上では仕方がない。
これは、『戦略兵士』『全能兵士』と呼ばれた彼の末路が、本部にいる専用の通信師からの指示による単独の任務遂行であることだった。元の世界にも獣魔はいたわけだが、こちらの世界よりもはるかに強い獣魔に対する先制防御、即ち、討伐撃退を軍が担っており、足手纏いという判断の下で(本当に邪魔になるから)、単独遂行を行わされた故の経験値である。
支部長はきちんと把握しているらしい。
「ユンカース殿なら白金級も行けるがどうする?」
と聞いてきた。
実力差をまざまざと見せつけられたラジエラはイネスと何か話しており、二匹は二人と遊んでいる。
「不都合はありますか?」
「あるな。相場を守る為に依頼の数が減る。基本的に依頼とは関係ない狩りやら、商売をしないと所帯分の稼ぎはきつい傾向にある。今はあんまり困ってないが、異常気象が収まった後が問題になる」
生活圏を追われている獣魔や人が暴れているのは想像に難くない。また、一部の物流が止まっており、大打撃を受けているのが薬だ。原料が手に入らず、一部の薬が高騰している。
「なら、そのままで」
「分かった。彫刻師の仕事がもうすぐ終わる。時間もいい頃だから食事でもとって待っていてくれ。ああ、この無料券を会計に渡してくれ、人数分用意した」
この待ち時間は、組合都合によってできてしまったから用意されたものだ。この辺りは会社らしい一面だ。今回の模擬戦は他の傭兵を威嚇する意味でも組まれていた。
待合室兼食堂へと移動し食事を取る。獣魔の分は勘弁してくれ、と支払う事にはなったが、それが懐に響くほど痛いものではなかった。
これから先の収入は、神殿から切り離される。神殿付きの傭兵団と言っても、人手が足りない場合等で委託が優先的に回されるだけだ。資金も潤沢とは言い難く、ラジエラは戦う為の装備もない。
「そう言えば、マリ様の武器はどうされるのですか?」
「鍛冶師に発注するつもりです。私のは完全専用品ですから渡して使うなんてことはできません」
「そうなの?」
ルシフェルは肯定の意を示した。
生体認証によって彼しか使えないようになっており、ロックを外したところで彼が使っていないと数分後には自動的にロックがかかるようになっている。更に、記録されている生体情報の書き換えは設備があっても不可能だ。
「今日の様子では魔法戦が基本になるのですよね」
「そうだと思うけど」
ラジエラはルシフェルの顔色を窺う。罷り間違っても相手は戦闘のプロ、関係性がどうだろうと彼の意見は無視できない。
「本当はお前次第と言いたいんだが、今回ばかりは魔法戦に徹してくれ。扱えたところで前に出る俺や二匹が、味方の矢を気にしないといけないのは正直つらい。だろ?」
『ええ、無理です』『ああ、無理だ』
話を二匹に振ると言い切りで返ってきた。
二匹は人間との共闘の経験などない。また、共闘の経験のある眷属は、セルシウスとイフリートの眷属に限らず、全体でも片手で数えられるほどしかいない。
「それに、魔法の射線管理は楽なんだ。使う事や使われる事は簡単に察知できる。矢って、見てるか鏑矢でもない限り、放たれた事が分からないって言う欠点があるんだ。銃の場合、弾の飛翔速度が速すぎてまず避けられない。あと、二人を守るのに二人ほしいってところだな」
「わかった」
「それでしたら、私が使っている杖と同じ物を提供しましょうか?」
思わぬ提案にルシフェルは驚いた。
「いいのですか?」
「神殿付きですから問題はないです。過去に事例があります。私の物は催事でも使うので、機能だけ同じ物になるかと。それから、催事用の装飾分安くなりますし、すぐ用意できます」
「では、そうしてもらいます。くれぐれも特別感が出ないように釘を刺してください」
イネスは彼らの目的をきちんと把握している。だから、別に問題はない。それでも彼がこんなことを言うのは、彼が言ったという事実がないと、神殿側はすぐに勘違いをするからだ。
二人の人慣れの為に神殿にいた際も、特別扱いどころの話ではなく、ガエルどころか教皇と聖母にやめてくれと頼み込んだほどだ。
神殿側もいい加減分かってくれないものかと、ルシフェルは溜息をついた。
ガブリエラが連れてきた二匹がやってきたのは、二人が寝静まった夜だった。
家を借りるまで夜は常に一緒にいたが、以外にも三ヶ月で片方いれば寝付けるようになっていた。うなされでもしない限りは、横にいる必要はなく、悪夢で目覚めても一階にいるのを知っているので、自分で降りてくる。
ラジエラが寝かせつけたのを報告したのと、ガブリエラが来たのは同時だった。
グリフォンは神殿所有の戦力として、やはり破格すぎるので、ラジエラがよく言い聞かせて世話の問題を解決し、旅団として各地を回るようになってから借りることになった。
グリフォンがラジエラ所有にはならなかったので、彼女に二匹の名前を付けさせた。
彼女曰く、フラメンファルケはフェニックスを母国語読みした時の発音から、アイスボルフはフェンリルを母国語読みした時の発音から取っているそうだ。
名前はたいそう気に入ったようで、その場で眷属になってしまったが、二匹曰く、群れの長が眷属であって、自分達は準眷属の為に問題はないという。それに、主の子供の為に来たのであって、将来の邪魔をしに来たわけではないのも理由らしい。
ニクスは初め、ルシフェルに名前を付けてもらう事を希望していたが、強い希望という訳でもなく、その方がうれしいのだが、恐れ多くて申し訳ないと言う感じだった。熾天使クラスと顔を合わせることはまずなく、何かあれば智天使以下と顔を合わせることが多かったからだという。また、同族ではないが、過去に熾天使に名付けてもらって勘違いを起こしたものがいるらしく、そうなりたくない気持ちもあったようだ。
リールは二人が守れるならどうでもよかったようだ。
二匹とも気象変動の対処に回らなくて済む、という事を素直に喜んでいるのは黙っておこう。
二匹と遊んでご満悦の二人が、昼食を取ってからすぐに、リールのお腹を枕にしてお昼寝に入ったことは僥倖と言える。自分たちの時間が作れるからだ。
アイスボルフ自体かなり体格がよく、体高が二人の身長の倍ほどもあり、魔法による補助をしなくても大人を乗せて走れる程度だ。爽やかな青銀色のふかふかな体毛に包まれ、ぱっと見では二人を子狼に間違えてしまいそうである。
フラメンファルケは二人の三分の二程度、と言っても鳥なので十分大きい。魔法で爪を保護しているらしく、イムの頭やセレの肩、リールの体に止まっても痛がるそぶりはなかった。名に恥じぬ、燃えるような紅の体躯と青い尾が特徴的で、尾がきれいだとはしゃいでいた。
二人とも、アイスボルフとフラメンファルケとは、あったことがあるようで、二匹を怖がるようなことはなく、寧ろ愛玩動物がやってきた時のそれであった。
「寝ちゃったか」
二人に毛布を掛けて風邪をひかないようにする。
『この後、予定でもありましたか?』
二匹は通信魔法を扱えるらしく、言語も習得していた為、コミュニケーションには困っていない。
「いいや。これからどんどん手が離れていくんだなぁ、とね」
『寂しそうですね。兄様』
二匹とも通信魔法を傍受されることを恐れて、天使名を呼ばないようにしている。と言うのも、対象を絞った通信魔法を覚えていないからだ。
性別の影響なのか、性格の影響なのか、メスでおっとりめのリールはルシフェルを兄様、ラジエラを姉様と、オスで自信家のきらいのあるニクスはルシフェルを兄貴、ラジエラを姉貴と呼ぶ。
『子供を庇護下に置けばそうなるだろう。たった一年でもな』
二匹の寿命は長く、人族とほぼ同じか、少し長いくらいに長生きする。なので、時間の感覚も人と大差はない。
『姉様はともかく、兄様は子供がいてもおかしくないくらいでしたね』
「こんなには大きくないだろうけどな」
『違いねぇ』
そんな雑談をしていると食器を洗い終えたラジエラやって来くる。彼女は二人の様子を見て溜息をつくと、ルシフェルの隣に言って膝枕をしてもらうのだった。
で、結局全員でお昼寝をする、そんな日が数日続き、ラジエラと獣魔の本登録の日が来た。
アイスボルフにまたがる二人は元気いっぱいで、組合に着くと、そんな様子に全員ほっこりと言った具合だ。また、聖女がともにいることの悪目立ちはなく、組合が周知していてくれたようで、むしろ、そんな時期かと感慨深げだ。組合の建物内部は、食堂と待合室が併設になっているものの飲酒が禁止されているのも大きいだろう。
組合の裏手に作らている訓練場に通されるまで、二匹が怯えられることがなかったのは二人のおかげだろう。そんな二人は受付嬢の一人から棒付きの飴をもらって、一生懸命舐めている。
相手が女性なら怖がるそぶりを見せることはなくなった。しかし、相手が男だと顔を背けたり、ルシフェルかラジエラの陰に隠れてしまう。
「おいしい?」
「「うん!おいしい!」」
そんな二人はよそに、訓練場では実力を見る為に、ルシフェル対ラジエラと二匹がやり合っていた。途中から野次も入って大盛り上がりし、『格付通りの新人が現れた』と噂になる程の激戦になった。
組合の人間は、知ってか知らずか、その様子にあんぐりと言ったところだ。
ただ、戦闘評価は分かれるところがあり、彼が軽々と捌いてわざと致命傷になる反撃を入れておらず、彼女と二匹が必死で食らいついているような状況を正確に把握しているものは少なかった。おかげで、大半には二匹を従える彼女の戦闘力が一番だと思われている。
これは、あくまでも彼女と二匹の方が優勢に見えるように戦っていたからである。彼がその気になれば、彼女も二匹も制空権と言う概念を知らないので、空間魔法によって押しつぶすことで瞬殺されていた。また、衆人環視の中に晒せない武器があり、手札が限られていたと言うのもある。限られているだけで、それが少ないかと言うとそうではないのだが。
数的不利をいなすこと自体が常軌を逸しているわけだが、経験の差の上では仕方がない。
これは、『戦略兵士』『全能兵士』と呼ばれた彼の末路が、本部にいる専用の通信師からの指示による単独の任務遂行であることだった。元の世界にも獣魔はいたわけだが、こちらの世界よりもはるかに強い獣魔に対する先制防御、即ち、討伐撃退を軍が担っており、足手纏いという判断の下で(本当に邪魔になるから)、単独遂行を行わされた故の経験値である。
支部長はきちんと把握しているらしい。
「ユンカース殿なら白金級も行けるがどうする?」
と聞いてきた。
実力差をまざまざと見せつけられたラジエラはイネスと何か話しており、二匹は二人と遊んでいる。
「不都合はありますか?」
「あるな。相場を守る為に依頼の数が減る。基本的に依頼とは関係ない狩りやら、商売をしないと所帯分の稼ぎはきつい傾向にある。今はあんまり困ってないが、異常気象が収まった後が問題になる」
生活圏を追われている獣魔や人が暴れているのは想像に難くない。また、一部の物流が止まっており、大打撃を受けているのが薬だ。原料が手に入らず、一部の薬が高騰している。
「なら、そのままで」
「分かった。彫刻師の仕事がもうすぐ終わる。時間もいい頃だから食事でもとって待っていてくれ。ああ、この無料券を会計に渡してくれ、人数分用意した」
この待ち時間は、組合都合によってできてしまったから用意されたものだ。この辺りは会社らしい一面だ。今回の模擬戦は他の傭兵を威嚇する意味でも組まれていた。
待合室兼食堂へと移動し食事を取る。獣魔の分は勘弁してくれ、と支払う事にはなったが、それが懐に響くほど痛いものではなかった。
これから先の収入は、神殿から切り離される。神殿付きの傭兵団と言っても、人手が足りない場合等で委託が優先的に回されるだけだ。資金も潤沢とは言い難く、ラジエラは戦う為の装備もない。
「そう言えば、マリ様の武器はどうされるのですか?」
「鍛冶師に発注するつもりです。私のは完全専用品ですから渡して使うなんてことはできません」
「そうなの?」
ルシフェルは肯定の意を示した。
生体認証によって彼しか使えないようになっており、ロックを外したところで彼が使っていないと数分後には自動的にロックがかかるようになっている。更に、記録されている生体情報の書き換えは設備があっても不可能だ。
「今日の様子では魔法戦が基本になるのですよね」
「そうだと思うけど」
ラジエラはルシフェルの顔色を窺う。罷り間違っても相手は戦闘のプロ、関係性がどうだろうと彼の意見は無視できない。
「本当はお前次第と言いたいんだが、今回ばかりは魔法戦に徹してくれ。扱えたところで前に出る俺や二匹が、味方の矢を気にしないといけないのは正直つらい。だろ?」
『ええ、無理です』『ああ、無理だ』
話を二匹に振ると言い切りで返ってきた。
二匹は人間との共闘の経験などない。また、共闘の経験のある眷属は、セルシウスとイフリートの眷属に限らず、全体でも片手で数えられるほどしかいない。
「それに、魔法の射線管理は楽なんだ。使う事や使われる事は簡単に察知できる。矢って、見てるか鏑矢でもない限り、放たれた事が分からないって言う欠点があるんだ。銃の場合、弾の飛翔速度が速すぎてまず避けられない。あと、二人を守るのに二人ほしいってところだな」
「わかった」
「それでしたら、私が使っている杖と同じ物を提供しましょうか?」
思わぬ提案にルシフェルは驚いた。
「いいのですか?」
「神殿付きですから問題はないです。過去に事例があります。私の物は催事でも使うので、機能だけ同じ物になるかと。それから、催事用の装飾分安くなりますし、すぐ用意できます」
「では、そうしてもらいます。くれぐれも特別感が出ないように釘を刺してください」
イネスは彼らの目的をきちんと把握している。だから、別に問題はない。それでも彼がこんなことを言うのは、彼が言ったという事実がないと、神殿側はすぐに勘違いをするからだ。
二人の人慣れの為に神殿にいた際も、特別扱いどころの話ではなく、ガエルどころか教皇と聖母にやめてくれと頼み込んだほどだ。
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