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第十三章 自覚
一節 別れの始まり
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六日でできた服がラジエラのお眼鏡にかなったのは縫い目だけだった
貴族向けはさすが職人で、体型について少し伝えればその六日後にはこれと言った問題はなくなっていた。
半年ほど折り合いがつかなかったのが、一般向けと子供向けだ。
ラジエラのもつ服に対するポリシーは規格化と絶望的に合わないことが引き金になっている。子供向けはデフォルメ|(彼らの言語では最適簡略化)技術が未熟であり、獣魔によっては凶暴性がイメージから抜けずに上手く行かないのが原因だ。
これらの解決策を持ってきたのがヨーナスとニッコラの娘、ハンナである。
ハンナによってもたらされたものは二つ。胸の大きさを段階的に分ける案と、子供向けのデザインが行えるハンナ自身を含めた三人の人手だ。
胸の大きさは、メルノカ島で古くから使われているフラクトゥール文字をつかって表される。アンダーの長さで一文字、アンダーとトップの差で一文字の二文字表記だ。
ハンナを含めた三人の人手は、ハンナの幼馴染で、ヘッリとシルヴァの女性画家だ。ハンナは商会の跡取りとしてカウトネン商会で働いている。ヘッリとシルヴァは画家としては駆け出しで、食うに困っていたところのスカウトのようなものだ。
ラジエラは三人と会うのが初なので、実力が見たいと言ってその場でデザインさせることにした。
「ハンナさんはドラフン(龍)、ヘッリさんはグリッズリー|(熊)、シルヴァさんはティーガー|(虎)でお願いします」
参考にルシフェルが氷魔法を使って彫像を用意した。相当な意地悪として、元の世界の獣魔を模してともかく恐ろしく仕上げている。
「これから作るのはあんまりじゃない?」
「お前はこれから作ってるんだよ」
ラジエラは作る際に参考文献など用意しなかった。その為、知っている獣魔の姿は元の世界に依存しているのだ。
元の世界で一般人が獣魔の姿を見るのは、軍が用意できた映像と、その映像から起こされた現実味のあるものばかり。その為、戦闘中のものが大半なので、やっていることは変わらないのだ。
物怖じしないのかクシェルが彫像に興味を示し、双子と一緒に近くで眺めている。
「ぱぱ、すごい」
「「すごいねー」」
なんて漏らしている。
与えた時間は一時間ほど、ラジエラはその出来を確かめた。
「三人共、クシェルに着せることを想像したね?」
服だけのデザイン、これが今までの失敗理由だった。デザイン案には明らかにクシェルと思われる子供が描かれている。
「でも、そう、こういう何かを模す服の最適簡略化の正解は、誰に着せるのかちゃんと考えること。クシェルが男の子だから、少しそこに引っ張られているけど、これは合格点だね」
「本家に合格をもらえたのであれば、二人はうちで雇いましょう」
「「「やった」」」
これは入社試験でもあったのだ。三人は手を取り合って喜んでいる。
カウトネン商会は正式に意匠考案部を立ち上げて、急速に服の種類を増やしていくことになるのだが、別の問題でこれから三ヶ月間はそうもいかない事情があった。
「「落成式と竣工式?」」
「ええ、この島に建造中の第二神殿が仕上げの状態に入っています」
双子が疑問の声を上げるのは経験がないので仕方のないことだ。ニッコラが丁寧に説明してくれた。
昼から行うのは落成式で、自治政府、神殿関係者、島民、メルノカ島に拠点支店を置く商会の代表、アウストリム大陸の各国代表者を招待した完成お披露目を目的としたお祭りである。
夕刻からは竣工式、自治政府代表、神殿関係者、島民代表、メルノカ島に拠点を置く商会代表、アウストリム大陸の各国代表による神事が行われる。
因みに、彼らは知らないが、竣工式の際にミカエラとバタルエルが降臨予定となっている。
「それが服と何の関係があるの?」
「貴族向けの服をすでに受付していまして、注文が殺到して職人が悲鳴を上げる寸前なんです」
確かに契約で受け取った額は少なくなかった。レシピも相当広がっているので、贅沢しなければお金には困らなくなってしまったほどである。これぽっちも預金に回せないが。
「落成式と竣工式に新しい礼服を用意すると、そう言うことですか?」
「らしいですね。正式な案内が来たのはついこの間で、それまで知らずに受けていたら、一般の新規は難しい状態です。どうしてこうも貴族は見栄っ張りなのでしょうかね」
「ニッコラ副商会長」
話に割って入ってきたのはカウトネン商会の事務手伝いだ
神殿の方から枢機卿と聖騎士長が訪ねてきているらしく、用向きはカウトネン商会に一件と旅団大空への翼に一件である。
面倒だからとニッコラとルシフェルが応接間に移動して同時に話を聞くことにした。
「ガエル枢機卿ではありませんか」
「ユンカース殿、お久しぶりにございます」
思わぬ顔見知りに驚いた。
話を聞くと栄転になったようだ。聖母を政治から切り離す為、神事以外では第二神殿にいさせることにしたのだと言う。それについてくる一団の管理と、第二神殿の実質的な管理者に指名されたそうだ。
「この間は大変失礼いたしました」
そう言って頭を下げたのは聖騎士長だ。正式にはアージェ教第二聖騎士団長、またはメルノカ島聖騎士団長である。
そして彼はデートに横やりを入れた張本人だ。
「確か、イスコ・クンナッサロ様でしたね」
「名前まで憶えて頂いていたとは光栄です」
不思議そうにしているニッコラにざっくり話をすると、仕事だから幾分仕方ないねと返してきた。
「それで、ご用向きは何でしょうか?」
とニッコラが行った。ここはカウトネン商会の応接間である。まず彼女から話を進めていくのが筋だ。
「まず、落成式で子供たちが使う服なのですが、三着ほど直しが必要だと分かりましてお願いに上がりました」
「持ってきてありますか?」
「ええ、先ほどそこに卸させていただいた木箱に入っております」
落成式では、神殿や教会の孤児たちが式を一環として踊りを披露する。竣工式へのつなぎの為、落成式の最後に披露され、無事完成したことを天に感謝、報告する意味を持っている。
その時に使う服を直してほしいと言うものだ。
白い羽織に背中には見事な白い翼の刺繍、ところどころに着くリボンが鮮やかな衣装だ。
「飾り物の色落ちがひどいですね。ほつれに破れ、虫食いも小さいながらある、刺繍のほつれは、そうでもないかな。これくらいならあまりかかりませんね。着数が少ないので、いつも通りで大丈夫です」
「では、後ほど請求書をいただけますか」
「うちの事務に後でもっていかせます」
これでガエル枢機卿はほっと胸をなでおろした様子だが、すぐにルシフェルへと向き直った。
「ユンカース殿に神殿からの直接依頼になります。聖母、教皇、聖女の計五名の護衛をお願いしたいのです。こちらがその詳細となります」
見せられた紙には珍しいことが書いてあった。
「空輸・・・」
「はい、グリフォンたちに改造した荷車を引かせて行う形になります。なので、今回はユンカース殿一人に対する依頼となります」
「マリが手懐けてしまったグリフォンは大丈夫ですか?」
「マリ殿に怒られたのが相当効いていまして、凶暴性が抜けて寧ろ長らしくなりました」
牙まで抜けてないと良いが、話を聞いているとそうではないようだ。どこか力で押さえつけていたのだが、それがなくなったので問題も起こらなくなり、かえって管理が楽になったと言う。
ここから向かう分には空騎士がルートの最終確認を兼ねて迎えに来るそうだ。
それが式典の五日前、なお、式典中の護衛は要らないそうで、せっかくだから祭りを楽しんでほしいとのことだった。
そう言えば、双子に祭りの様子を見せたり体験させたりしたことはない。聖国いた頃は二人の安全と当時の性格を優先して参加してはいなかった。
残りはタイミングの問題で参加できなかった。
「随分高いですね」
「傭兵団『民の矛』の長、金級傭兵マクシム、旅団『風来の剣』の長、金級傭兵ファブリスも加わりますから、アージェ教がそろえられる最高戦力による護衛です」
「なるほど」
それだけ大事だということだ。
しかし、空騎士による空輸、よく考えたものだ。下手すると航空機よりも安全で確実な方法である。
飛んでいるグリフォンに、それも集団のグリフォンに近づくような馬鹿な獣魔はいないのである。バードストライクなぞ心配しなくていいので、返って安全なのだ。
実は現状空を支配しているのはアージェ教だけで、そもそも襲える国がアウストリム大陸には存在しない。
これが聖国周辺国の同盟、五カ国正方同盟、アウストリム安全保障協定を組まれる原因になっている。
五カ国正方同盟は単純に聖国の脅威に対するものだ。
一方、アウストリム安全保障協定は互いの戦争を封じ込める為に攻め込まれた国に対する国防作戦への参加が規定されている。この協定によって、教義に沿わなかった場合を除いてアージェ教は国防作戦への参加が義務付けられている。
なので、実際には聖国の牙を抜くために起こされた戦争も少なくないが、それが返って空騎士の練度を高める本末転倒な事態になっているのだが。
「ではその日は今いる宿にいるようにしますね」
「お願いします」
元いた部屋に戻ると、彫像に乗って楽しむクシェルの相手をしている双子とイネスに、ハンナとヘッリとシルヴァはラジエラが出した服をデザイン画として起こしていた。
ヨーナスが彫像をそのままにしてほしいと懇願してきたが、ニッコラの反対と別の問題で却下と相成った。
ニッコラは単純にどこに置くんだと言うだけで、それだけならば折り合いが付けばそのままでもいい。
彫像は元の世界、即ち異世界の獣魔の姿なのだ。似た獣魔はいるが、そのものはいないので後から意匠として問題になる。場所が確保できるのならニッコラもやぶさかではない程に出来が良いので、作者をどうするにしても追求と言う問題が起こる。
活動に支障が出るのは一番避けたいことなのである。
「私は彫刻家ではありませんので、勘弁してくださいね」
「傭兵は、所詮、傭兵か」
ヨーナスがそう漏らした瞬間、ニッコラの鉄拳が飛んだのだった。
「悪気がなくても悪気が伝わる場合もありますから、言い方には気をつけましょうね」
「「はーい」」
イネスはわざと聞こえるように双子に教え、双子も聞こえるように返事をした。
イネスは半年前のことをまだ怒っているのだ。相手が知らない事ではあるが、聖女として育てられた以上、やはり、その感覚は抜けない。
彫像を片付けながら、ルシフェルは苦笑いを浮かべていた。
貴族向けはさすが職人で、体型について少し伝えればその六日後にはこれと言った問題はなくなっていた。
半年ほど折り合いがつかなかったのが、一般向けと子供向けだ。
ラジエラのもつ服に対するポリシーは規格化と絶望的に合わないことが引き金になっている。子供向けはデフォルメ|(彼らの言語では最適簡略化)技術が未熟であり、獣魔によっては凶暴性がイメージから抜けずに上手く行かないのが原因だ。
これらの解決策を持ってきたのがヨーナスとニッコラの娘、ハンナである。
ハンナによってもたらされたものは二つ。胸の大きさを段階的に分ける案と、子供向けのデザインが行えるハンナ自身を含めた三人の人手だ。
胸の大きさは、メルノカ島で古くから使われているフラクトゥール文字をつかって表される。アンダーの長さで一文字、アンダーとトップの差で一文字の二文字表記だ。
ハンナを含めた三人の人手は、ハンナの幼馴染で、ヘッリとシルヴァの女性画家だ。ハンナは商会の跡取りとしてカウトネン商会で働いている。ヘッリとシルヴァは画家としては駆け出しで、食うに困っていたところのスカウトのようなものだ。
ラジエラは三人と会うのが初なので、実力が見たいと言ってその場でデザインさせることにした。
「ハンナさんはドラフン(龍)、ヘッリさんはグリッズリー|(熊)、シルヴァさんはティーガー|(虎)でお願いします」
参考にルシフェルが氷魔法を使って彫像を用意した。相当な意地悪として、元の世界の獣魔を模してともかく恐ろしく仕上げている。
「これから作るのはあんまりじゃない?」
「お前はこれから作ってるんだよ」
ラジエラは作る際に参考文献など用意しなかった。その為、知っている獣魔の姿は元の世界に依存しているのだ。
元の世界で一般人が獣魔の姿を見るのは、軍が用意できた映像と、その映像から起こされた現実味のあるものばかり。その為、戦闘中のものが大半なので、やっていることは変わらないのだ。
物怖じしないのかクシェルが彫像に興味を示し、双子と一緒に近くで眺めている。
「ぱぱ、すごい」
「「すごいねー」」
なんて漏らしている。
与えた時間は一時間ほど、ラジエラはその出来を確かめた。
「三人共、クシェルに着せることを想像したね?」
服だけのデザイン、これが今までの失敗理由だった。デザイン案には明らかにクシェルと思われる子供が描かれている。
「でも、そう、こういう何かを模す服の最適簡略化の正解は、誰に着せるのかちゃんと考えること。クシェルが男の子だから、少しそこに引っ張られているけど、これは合格点だね」
「本家に合格をもらえたのであれば、二人はうちで雇いましょう」
「「「やった」」」
これは入社試験でもあったのだ。三人は手を取り合って喜んでいる。
カウトネン商会は正式に意匠考案部を立ち上げて、急速に服の種類を増やしていくことになるのだが、別の問題でこれから三ヶ月間はそうもいかない事情があった。
「「落成式と竣工式?」」
「ええ、この島に建造中の第二神殿が仕上げの状態に入っています」
双子が疑問の声を上げるのは経験がないので仕方のないことだ。ニッコラが丁寧に説明してくれた。
昼から行うのは落成式で、自治政府、神殿関係者、島民、メルノカ島に拠点支店を置く商会の代表、アウストリム大陸の各国代表者を招待した完成お披露目を目的としたお祭りである。
夕刻からは竣工式、自治政府代表、神殿関係者、島民代表、メルノカ島に拠点を置く商会代表、アウストリム大陸の各国代表による神事が行われる。
因みに、彼らは知らないが、竣工式の際にミカエラとバタルエルが降臨予定となっている。
「それが服と何の関係があるの?」
「貴族向けの服をすでに受付していまして、注文が殺到して職人が悲鳴を上げる寸前なんです」
確かに契約で受け取った額は少なくなかった。レシピも相当広がっているので、贅沢しなければお金には困らなくなってしまったほどである。これぽっちも預金に回せないが。
「落成式と竣工式に新しい礼服を用意すると、そう言うことですか?」
「らしいですね。正式な案内が来たのはついこの間で、それまで知らずに受けていたら、一般の新規は難しい状態です。どうしてこうも貴族は見栄っ張りなのでしょうかね」
「ニッコラ副商会長」
話に割って入ってきたのはカウトネン商会の事務手伝いだ
神殿の方から枢機卿と聖騎士長が訪ねてきているらしく、用向きはカウトネン商会に一件と旅団大空への翼に一件である。
面倒だからとニッコラとルシフェルが応接間に移動して同時に話を聞くことにした。
「ガエル枢機卿ではありませんか」
「ユンカース殿、お久しぶりにございます」
思わぬ顔見知りに驚いた。
話を聞くと栄転になったようだ。聖母を政治から切り離す為、神事以外では第二神殿にいさせることにしたのだと言う。それについてくる一団の管理と、第二神殿の実質的な管理者に指名されたそうだ。
「この間は大変失礼いたしました」
そう言って頭を下げたのは聖騎士長だ。正式にはアージェ教第二聖騎士団長、またはメルノカ島聖騎士団長である。
そして彼はデートに横やりを入れた張本人だ。
「確か、イスコ・クンナッサロ様でしたね」
「名前まで憶えて頂いていたとは光栄です」
不思議そうにしているニッコラにざっくり話をすると、仕事だから幾分仕方ないねと返してきた。
「それで、ご用向きは何でしょうか?」
とニッコラが行った。ここはカウトネン商会の応接間である。まず彼女から話を進めていくのが筋だ。
「まず、落成式で子供たちが使う服なのですが、三着ほど直しが必要だと分かりましてお願いに上がりました」
「持ってきてありますか?」
「ええ、先ほどそこに卸させていただいた木箱に入っております」
落成式では、神殿や教会の孤児たちが式を一環として踊りを披露する。竣工式へのつなぎの為、落成式の最後に披露され、無事完成したことを天に感謝、報告する意味を持っている。
その時に使う服を直してほしいと言うものだ。
白い羽織に背中には見事な白い翼の刺繍、ところどころに着くリボンが鮮やかな衣装だ。
「飾り物の色落ちがひどいですね。ほつれに破れ、虫食いも小さいながらある、刺繍のほつれは、そうでもないかな。これくらいならあまりかかりませんね。着数が少ないので、いつも通りで大丈夫です」
「では、後ほど請求書をいただけますか」
「うちの事務に後でもっていかせます」
これでガエル枢機卿はほっと胸をなでおろした様子だが、すぐにルシフェルへと向き直った。
「ユンカース殿に神殿からの直接依頼になります。聖母、教皇、聖女の計五名の護衛をお願いしたいのです。こちらがその詳細となります」
見せられた紙には珍しいことが書いてあった。
「空輸・・・」
「はい、グリフォンたちに改造した荷車を引かせて行う形になります。なので、今回はユンカース殿一人に対する依頼となります」
「マリが手懐けてしまったグリフォンは大丈夫ですか?」
「マリ殿に怒られたのが相当効いていまして、凶暴性が抜けて寧ろ長らしくなりました」
牙まで抜けてないと良いが、話を聞いているとそうではないようだ。どこか力で押さえつけていたのだが、それがなくなったので問題も起こらなくなり、かえって管理が楽になったと言う。
ここから向かう分には空騎士がルートの最終確認を兼ねて迎えに来るそうだ。
それが式典の五日前、なお、式典中の護衛は要らないそうで、せっかくだから祭りを楽しんでほしいとのことだった。
そう言えば、双子に祭りの様子を見せたり体験させたりしたことはない。聖国いた頃は二人の安全と当時の性格を優先して参加してはいなかった。
残りはタイミングの問題で参加できなかった。
「随分高いですね」
「傭兵団『民の矛』の長、金級傭兵マクシム、旅団『風来の剣』の長、金級傭兵ファブリスも加わりますから、アージェ教がそろえられる最高戦力による護衛です」
「なるほど」
それだけ大事だということだ。
しかし、空騎士による空輸、よく考えたものだ。下手すると航空機よりも安全で確実な方法である。
飛んでいるグリフォンに、それも集団のグリフォンに近づくような馬鹿な獣魔はいないのである。バードストライクなぞ心配しなくていいので、返って安全なのだ。
実は現状空を支配しているのはアージェ教だけで、そもそも襲える国がアウストリム大陸には存在しない。
これが聖国周辺国の同盟、五カ国正方同盟、アウストリム安全保障協定を組まれる原因になっている。
五カ国正方同盟は単純に聖国の脅威に対するものだ。
一方、アウストリム安全保障協定は互いの戦争を封じ込める為に攻め込まれた国に対する国防作戦への参加が規定されている。この協定によって、教義に沿わなかった場合を除いてアージェ教は国防作戦への参加が義務付けられている。
なので、実際には聖国の牙を抜くために起こされた戦争も少なくないが、それが返って空騎士の練度を高める本末転倒な事態になっているのだが。
「ではその日は今いる宿にいるようにしますね」
「お願いします」
元いた部屋に戻ると、彫像に乗って楽しむクシェルの相手をしている双子とイネスに、ハンナとヘッリとシルヴァはラジエラが出した服をデザイン画として起こしていた。
ヨーナスが彫像をそのままにしてほしいと懇願してきたが、ニッコラの反対と別の問題で却下と相成った。
ニッコラは単純にどこに置くんだと言うだけで、それだけならば折り合いが付けばそのままでもいい。
彫像は元の世界、即ち異世界の獣魔の姿なのだ。似た獣魔はいるが、そのものはいないので後から意匠として問題になる。場所が確保できるのならニッコラもやぶさかではない程に出来が良いので、作者をどうするにしても追求と言う問題が起こる。
活動に支障が出るのは一番避けたいことなのである。
「私は彫刻家ではありませんので、勘弁してくださいね」
「傭兵は、所詮、傭兵か」
ヨーナスがそう漏らした瞬間、ニッコラの鉄拳が飛んだのだった。
「悪気がなくても悪気が伝わる場合もありますから、言い方には気をつけましょうね」
「「はーい」」
イネスはわざと聞こえるように双子に教え、双子も聞こえるように返事をした。
イネスは半年前のことをまだ怒っているのだ。相手が知らない事ではあるが、聖女として育てられた以上、やはり、その感覚は抜けない。
彫像を片付けながら、ルシフェルは苦笑いを浮かべていた。
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