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孤児と愚者の英雄譚
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そんな親善試合があった次の日…私はこの国へとやってきた貴族達が集められているダンスホール的な所へと置いてかれていた。
アルキアンと当主様は昨日のこともあってかこことは違う場所へ…婚約の話をしに行った。
アルキアンの側付き人として一緒に行くことを進言はしたものの当主様直々に断られてしまった。
「レナちゃん…こちらも美味しいわよ?」
そう言いながらカルメア嬢は私の手に持っていた皿にスライム状の何かをくれた。
側付き人は外れたがその代わりとダルク坊とカルメア嬢の護衛を当主様から頼まれた…まぁ天然さんとゲラさんがいるから私がいてもいなくても変わらないのではと思ったんだが。
ちなみにこのスライム状の食べ物は野菜を煮込みまくってドロドロにし肉食の獣人族でも食べやすくした形状工夫の産物らしい。
こうやってカルメア嬢と私の様に子供は子供で食べ物を食べつつダルク坊の様に他国の子供達と踊ったりして暇を潰している。
大人はどうやら隣の部屋で会議をしつつ仲を深めているらしい…その実腹の探り合いといかに獣人族の国からの特産品を領土へ引き入れるかの威嚇の戦いだそうだが。
「レナちゃんッ!次はコレを食べましょうッ!」
カルメア嬢はそう言うと人の顔より少し大きいサイズの人参のようなナニカを皿に乗せてやってきた。
…先程から思っていたがカルメア嬢は珍しい物が好きらしく王国では見かけないような形状の物をよく持ってくる。
この人参はおそらくマンドラゴラに近い魔物の丸焼きだろうか?
確か錬金術とかで重宝されるからかなりの金額するやつだったと記憶しているのだが。
ちらっと横を見るとそんなこと関係なしと言った感じでカルメア嬢はナイフとフォークで切り分けて口に運んでいる。
マンドラゴラの表情を見ると何処か怨めしくこちらをみている感じがして怖いんだが…。
そんなこんなでコレを機にと食べ物をお腹の中に詰め込んでいるとこのダンスホールの扉が開き大人が子供を回収していく。
会議が終わったのだ…もうこのダンスホールにいる必要もなくなり鳴り響いていた音楽団の皆も楽器を納めて退場していく。
「それでは私はコレにて失礼いたしますわ…少し食べ過ぎましたわね」
「レナ嬢…僕達もこの後予定が入ってしまっているのでコレにて失礼します」
そう言いカルメア嬢とダルク坊達は帰っていってしまった。
終わってしまうとこうもあっさりとした別れとなってしまい「何だがなぁ」と思ってしまうが仕方がないことだと言い聞かせ歩き出した。
まぁそれもしょうがないこと…何せあの二人は婚約者同士で私が入るってのは無粋な事だ。
今の今までカルメア嬢が私の横で話をしてくれた事自体私が孤立しないように配慮してくれてたんだ。
だからこそ何も言えない。
昨日行ったこの街を一望できる断崖のテラスへ行き視線の先には家族でその眺めに想い馳せている姿が目に映る。
目を逸らし違う方を見ると天井の星空を映すような鍾乳洞を身体を重ね、寄り添って見続ける男女の姿が見えた。
今の今までこんな事思った事なかったが…何か頭がモヤモヤした。
「婚約…ねぇ」
そう独り言を呟いて気分転換にと断崖のテラスを後にした。
目につくのは男女ばかり…だからこそ路地裏へ入り目を下に向けて歩いていく。
「おぅおぅッ!ここじゃ見ねぇ顔してやがんな迷子か?」
路地裏へ入り数分後には輩に遭遇する。
獣人族と言ってもその本質は人、何処へ行ってもこういった不良そのものと言った賊は居る。
身体に魔力を回し脚に力を入れ建物の壁を蹴り壁から壁へ飛んでいく。
輩は突然のその光景に目を開き言葉を発するより先に腰の鉈を眼前に出して構えをとる。
心から震え音が鳴り響く…それは戦闘において最初に気付かされた闘争本能。
血は赤く流れチリつく頭が堰き止めていた雪崩にも似た快楽の奔流が握り締めた手を更に強く握らせる。
「ハハッ…緩い」
この世界に来て最初に覚えたのは…スラムで生まれて覚えたのは力を力で制する暴力。
強くなる…それこそがこの世界で生きる意味だ。
私は何故センチメンタルめいたことを頭で考えている?
いつだって死ねるし殺される状況にこそ笑いながら嗤う。
死中にこそ私が生きる意味がある。
生きる意味を見出せる。
相手を殺し金を貰い次の殺しの機会を得てまた殺し…それを繰り返して老いていく。
それが私がなんの教養もなく何も出来そうになくこの世界にとって異物な私ができる事。
だからこそ…この気持ちを消す為に今はただ暴力に溺れる。
拳を握り締めて目の前の獣の頭を殴り輩の仲間の攻撃をギリギリで避けて命を実感する。
そうやって嗤い、拳を振るい、時に蹴って襲ってくる輩を倒し外壁の上へと登る。
「あぁぁ~…いい景色だなぁ」
太陽な傾こうとしふと外壁の下を覗けば大人五人が死屍累々といった感じで倒れ伏せている。
その横には子供が集まり身ぐるみを剥ぎては去っていく。
ここはこの国のスラム…憲兵も呼ばれない治外の土地。
だが、こんなに拳を振るって蹴って暴力を示し生きる意味を見出したというのに少ししか気持ちは晴れない。
私は私が何を考えているのか分からなくなってしまった。
「生きるってやっぱ難しいな…さて帰るか」
さて、この世界に来た時私が求めていたのは一体なんだったのだろうか?
最初は覚えていたはずなのにもう言葉にすら表現できないほど朧げで覚えてない。
だが今日は暴力を振るったおかげかさっきより気持ちが少し晴れた…やっぱストレスが溜まってたんだろうなと結論付けた。
力以外に生きることの生きがいをやはり今も見つけられていない。
あの頃から何一つ変わっていない力に固執した愚かな本能。
そうして私は立ち上がると帰路についたのだった。
アルキアンと当主様は昨日のこともあってかこことは違う場所へ…婚約の話をしに行った。
アルキアンの側付き人として一緒に行くことを進言はしたものの当主様直々に断られてしまった。
「レナちゃん…こちらも美味しいわよ?」
そう言いながらカルメア嬢は私の手に持っていた皿にスライム状の何かをくれた。
側付き人は外れたがその代わりとダルク坊とカルメア嬢の護衛を当主様から頼まれた…まぁ天然さんとゲラさんがいるから私がいてもいなくても変わらないのではと思ったんだが。
ちなみにこのスライム状の食べ物は野菜を煮込みまくってドロドロにし肉食の獣人族でも食べやすくした形状工夫の産物らしい。
こうやってカルメア嬢と私の様に子供は子供で食べ物を食べつつダルク坊の様に他国の子供達と踊ったりして暇を潰している。
大人はどうやら隣の部屋で会議をしつつ仲を深めているらしい…その実腹の探り合いといかに獣人族の国からの特産品を領土へ引き入れるかの威嚇の戦いだそうだが。
「レナちゃんッ!次はコレを食べましょうッ!」
カルメア嬢はそう言うと人の顔より少し大きいサイズの人参のようなナニカを皿に乗せてやってきた。
…先程から思っていたがカルメア嬢は珍しい物が好きらしく王国では見かけないような形状の物をよく持ってくる。
この人参はおそらくマンドラゴラに近い魔物の丸焼きだろうか?
確か錬金術とかで重宝されるからかなりの金額するやつだったと記憶しているのだが。
ちらっと横を見るとそんなこと関係なしと言った感じでカルメア嬢はナイフとフォークで切り分けて口に運んでいる。
マンドラゴラの表情を見ると何処か怨めしくこちらをみている感じがして怖いんだが…。
そんなこんなでコレを機にと食べ物をお腹の中に詰め込んでいるとこのダンスホールの扉が開き大人が子供を回収していく。
会議が終わったのだ…もうこのダンスホールにいる必要もなくなり鳴り響いていた音楽団の皆も楽器を納めて退場していく。
「それでは私はコレにて失礼いたしますわ…少し食べ過ぎましたわね」
「レナ嬢…僕達もこの後予定が入ってしまっているのでコレにて失礼します」
そう言いカルメア嬢とダルク坊達は帰っていってしまった。
終わってしまうとこうもあっさりとした別れとなってしまい「何だがなぁ」と思ってしまうが仕方がないことだと言い聞かせ歩き出した。
まぁそれもしょうがないこと…何せあの二人は婚約者同士で私が入るってのは無粋な事だ。
今の今までカルメア嬢が私の横で話をしてくれた事自体私が孤立しないように配慮してくれてたんだ。
だからこそ何も言えない。
昨日行ったこの街を一望できる断崖のテラスへ行き視線の先には家族でその眺めに想い馳せている姿が目に映る。
目を逸らし違う方を見ると天井の星空を映すような鍾乳洞を身体を重ね、寄り添って見続ける男女の姿が見えた。
今の今までこんな事思った事なかったが…何か頭がモヤモヤした。
「婚約…ねぇ」
そう独り言を呟いて気分転換にと断崖のテラスを後にした。
目につくのは男女ばかり…だからこそ路地裏へ入り目を下に向けて歩いていく。
「おぅおぅッ!ここじゃ見ねぇ顔してやがんな迷子か?」
路地裏へ入り数分後には輩に遭遇する。
獣人族と言ってもその本質は人、何処へ行ってもこういった不良そのものと言った賊は居る。
身体に魔力を回し脚に力を入れ建物の壁を蹴り壁から壁へ飛んでいく。
輩は突然のその光景に目を開き言葉を発するより先に腰の鉈を眼前に出して構えをとる。
心から震え音が鳴り響く…それは戦闘において最初に気付かされた闘争本能。
血は赤く流れチリつく頭が堰き止めていた雪崩にも似た快楽の奔流が握り締めた手を更に強く握らせる。
「ハハッ…緩い」
この世界に来て最初に覚えたのは…スラムで生まれて覚えたのは力を力で制する暴力。
強くなる…それこそがこの世界で生きる意味だ。
私は何故センチメンタルめいたことを頭で考えている?
いつだって死ねるし殺される状況にこそ笑いながら嗤う。
死中にこそ私が生きる意味がある。
生きる意味を見出せる。
相手を殺し金を貰い次の殺しの機会を得てまた殺し…それを繰り返して老いていく。
それが私がなんの教養もなく何も出来そうになくこの世界にとって異物な私ができる事。
だからこそ…この気持ちを消す為に今はただ暴力に溺れる。
拳を握り締めて目の前の獣の頭を殴り輩の仲間の攻撃をギリギリで避けて命を実感する。
そうやって嗤い、拳を振るい、時に蹴って襲ってくる輩を倒し外壁の上へと登る。
「あぁぁ~…いい景色だなぁ」
太陽な傾こうとしふと外壁の下を覗けば大人五人が死屍累々といった感じで倒れ伏せている。
その横には子供が集まり身ぐるみを剥ぎては去っていく。
ここはこの国のスラム…憲兵も呼ばれない治外の土地。
だが、こんなに拳を振るって蹴って暴力を示し生きる意味を見出したというのに少ししか気持ちは晴れない。
私は私が何を考えているのか分からなくなってしまった。
「生きるってやっぱ難しいな…さて帰るか」
さて、この世界に来た時私が求めていたのは一体なんだったのだろうか?
最初は覚えていたはずなのにもう言葉にすら表現できないほど朧げで覚えてない。
だが今日は暴力を振るったおかげかさっきより気持ちが少し晴れた…やっぱストレスが溜まってたんだろうなと結論付けた。
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