永劫の誇り – 鹿之助、燃ゆる戦国の灯』

プロローグ – 「ひそやかな灯り」

プロローグ – 「ひそやかな灯り」

プロローグ – ひそやかな灯り**  

蝋燭の炎がゆらめく。  
暗く静かな部屋の隅で、集まった子供たちは息を潜める。親たちの気配は遠く、祭壇の向こうから漏れる微かな話し声だけが、まだ日常が続いていることを知らせている。しかし、この場所は違う。ここは誰も知らない、ほんのわずかな灯りのもとで語られる秘密の場。  

やがて、一人の男が口を開く。  
宣教師の声は柔らかく、それでいて確かな重みを帯びている。  

「耳を澄ませなさい――これは、ただの戦の記録ではない。  
人々が忘れ、時に埋もれようとしている、かつてそこにあった忠義と運命の物語である。」  

子供たちはその言葉に飲み込まれるように、わずかに身を寄せる。  
蝋燭の炎が、彼らの目の奥に淡い輝きを灯す。  

「その日、夜明けとともに、戦場には足音が響き渡った。静寂が破れ、運命が歩みを進めたのだ。誰もがそれが何を意味するのかを知らなかったが、時は確かに流れ――やがて、それは歴史の大きな転換点となる。」  

言葉が紡がれるたび、部屋の空気はゆっくりと変わっていく。  
宣教師は、その日を語る。激しい戦乱のただ中で、ある男の姿があったことを――彼の名を、山中鹿之助と言う。  

「この夜の灯りが消える前に、私はその物語を話そう。  
忘れてはならぬ忠義と、運命に導かれた戦士たちのことを――。」  

蝋燭の炎が、一度だけ揺らいだ。  
誰かが、静かに息をのんだ。  

物語は、ここから始まる。