永劫の誇り – 鹿之助、燃ゆる戦国の灯』

honyarara

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第十一章 烈火の輪郭

烈火の輪郭

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義軍の初陣――鍵之峠奪取の報せは、西国の空気を一変させた。これまで”誇り高き亡霊”とみなされていた鹿之介の志は、ついに実体を帯び、「再び歴史の舞台に立った存在」として認識されたのである。

毛利家中では、激しい議論が交わされていた。軍議にて、老臣の一人が拳を机に叩きつける。「このまま放置すれば、次に民の心まで奪われるやもしれませぬぞ!」――それに対し、輝元はあくまでも沈着な口調で返す。「民がなびくのは、我らの施政が冷えた証。剣を抜く前に、省みるべきは我らのあり方そのものだ」

しかし、峠を失ったことは軍略上の痛手であり、毛利方は出雲方面軍の前線強化を決定。伯耆・安来に向けて兵が送られ、次なる衝突は時間の問題となった。

一方、鹿之介は峠を確保した義軍を再編し、周辺村落の安定化に尽力していた。戦後すぐに掠奪を禁じ、関所の税も免除。農地復旧の手伝いに兵を出し、義軍の旗の下で復興が進んだ。「剣を振るうばかりが再興にあらず」と鹿之介は語り、兵たちに「守るべきものの価値」を再び教えた。

そんな中、諸国の浪士たちの間で「義軍に加わりたい」との意志が増え始めた。信濃、越前、さらには遠く伊勢からも、鹿之介に宛てた文が届く。「ただ強きに従うのではなく、ただ富に群がるのでもなく、志に殉ずる軍にこそ、我が命を賭したい」と――。

烈火とは、ただ燃える火ではない。それは風を呼び、土を焦がし、やがて森を変える力を持つ。鹿之介の義軍は、まさにその烈火の如く、時代の輪郭を新たに描きつつあった。

そして、出雲南部の一村に、毛利方の尖兵が現れる――義と権力、誇りと現実がぶつかる新たな衝突の幕が上がる。
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