百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

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第一章 アストラニア王国編

022 本気と緊急クエスト

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 リディアのスキルレベルを急激に上げたため、その後の十日間はダンジョンで連携練習に費やした。すっかり慣れてきたようなので、そろそろ地下三十階のボスを討伐し、Bランク昇格を目指すことを検討している。

 夜は一晩ずつ交代で、イレーヌとリディアの相手をすることになった。

 イレーヌは自分で動きたがり、「まいったか」と言ってくるが、先にイレーヌがまいってしまうという様式美のような展開を毎回繰り返している。

 リディアは完全に吹っ切れたようだ。それはよかったのだが――

 普段は大人しく真面目な彼女だが、夜はとんでもない。いや、凄まじい。
 少し考えれば分かることだった。戦争捕虜時に無理やり経験させられたこと、言わされた台詞の数々。その積み重ねが彼女を、俺とは比べ物にならないほどの知識と経験の塊にしていた。そしてそれを、惜しみなく俺に全力投入してくるのだ。

 最初、俺は「そんなつらい思いをしたことをやる必要はない」と伝えたのだが、

「以前は苦しい記憶として受け止めていましたが、今ではご主人様を喜ばせる知識と経験になっています。まさか、あの頃のことが役立つとは思いませんでした。私がただご主人様にお喜びいただきたいだけなのです。どうかこのままでお願いします」

 そう言われてしまった。

 リディアの本気は凄まじく、「お慕いしております」という想いを全力でぶつけられながら迫られると、理性を保てるはずもない。
 「“くっころ”もありますが、お試しになりますか?」と言われたときには、「なぜそれを知っている!?」と本気で驚いた。しかも、リディアのアイテムボックスには、いつの間に買ったのか、拘束具のような小道具まで入っていた。元騎士である彼女にとっては、演技というより地でやれることだったみたいだが……。やはり、ここはエロゲーの世界なのかもしれない。

 今のところ、夜は完全にリディアの掌の上だ。

 ちなみに、イレーヌを使って俺のスキルを一つずつレベル9にしていったので、現在俺の持っているスキルはすべてレベル9以上になっている。もちろん記憶が消えているイレーヌはそのことを知らない。

 ◇

 今朝も三人でダンジョンへ向かったところ、珍しく冒険者ギルドの制服を着た職員が入口に立っていた。

「緊急クエストです! できるだけ多くの方の参加をお願いします! 詳しくはこの資料を! 緊急クエストです!」

 そう声を張り上げる職員から資料を受け取る。

「んー、ゾンビ大量発生……推定一万体以上!?」

 王都から馬車で南へ二時間ほどの隣町『ブルームヴェイル』が、推定一万体以上のゾンビに襲撃されたという。
 原因は不明。このままでは王都南門から続く街道が封鎖され、物流が完全に止まってしまう。特に、南方からの食料供給が途絶えることが深刻な問題となるらしい。

「ゾンビねぇ。アンタどうするの? 参加する? するなら聖水を買う必要あるんじゃないの?」

 聖水を武器に塗布したり直接浴びせればゾンビを倒せるが、一万体以上となると到底足りない。他に〈光魔法〉も有効だが、俺は持っていない。

「あ、〈聖魔法〉があるじゃん」

 他の攻撃でもゾンビは“倒せる”が、〈聖魔法〉は“消滅”させる。いわばゾンビ特効魔法だ。

「毎日ダンジョンばかりだし、気分転換にゾンビ狩りでもするか」

 そうして俺は“アリス”として参加することにした。

 ――最近読んだ本によると、〈聖魔法〉を使える者は必ず《聖女》の称号を持つという。ただし、転生者特有の称号である《勇者》と違い、《聖女》はこの世界の人間でも得られる称号だ。実はこの世界、《聖女》は何人も存在するのだ。もちろん今も。
 敬虔な信徒がある日突然手に入れることもあれば、ダンジョンコア到達時に授かる場合もある。稀に、生まれつき持っている者さえいる。
 だから、“アリス”が人前で〈聖魔法〉を使っても不自然ではないのだ。

 ◇

 翌朝。南門に集合した私たちは、討伐隊用に用意された屋根のない荷馬車に乗り込んだ。そういえば、私はまだ一度も王都の外へ出たことがない。ちょっとワクワクしてきた。

 南門を出ると、石畳の街道が真っ直ぐに南へ伸びていた。へえ、城外も石畳で舗装されているんだ。物流の要だからかな。
 平原の上を延々と続く街道。両脇の先には森が広がり、東には遥か遠くに『グラント山脈』の稜線が見える。あの山脈が『ゼフィランテス帝国』との国境になるらしい。西にも別の山脈が霞んで見える。

「落ち着きがないわね。まるで初めて遠出する子どもみたいじゃない」

 ……すみませんね。実際、初めてなんですー。

「アリス様。アリス様は〈聖魔法〉で戦われると思いますが、我々はどうすればよろしいのでしょうか」

「ああ、大丈夫。〈魔法付与〉があるから、装備に〈聖魔法〉を付与するよ」

 第五階梯聖魔法〈不浄消滅バニッシュ〉を付与する。リディアの全身フルプレートに付与すれば、ゾンビは触れただけで消滅するだろう。もしかすると、彼女を走り回らせるだけで殲滅できるかもしれない。いや、もちろん私も魔法を撃つけれど。


 やがて、

「アリス、暇よ。なんとかして」

 と言い出すイレーヌ。いや、私に言われてもね……。
 確かに最初は景色を楽しめたけれど、同じ風景が延々続けば飽きるのも無理はない。
 三月半ば。まだ少し肌寒いが、今日は風もなく、日差しが心地よい。これから一万体以上のゾンビと戦うというのに、妙に長閑だった。

「あの鳥、撃ってもいいかしら?」

 イレーヌの指差す先、森の上空に大型の鳥が舞っていた。

「あれ、魔物?」

「違う。ただの鳥。でも焼くと美味しいのよ」

「撃ってよし! 回収は私に任せて!」

 しかし距離が遠い。さすがにクロスボウでは届かないようだ。

「アリス、なんとかして」

 なんで奴隷のイレーヌが偉そうなのよ……。

「仕方ない。イレーヌ、もう一度撃って。手伝うから」

 彼女が狙いを定め、ボルトを放った瞬間、私は第八階梯空間魔法〈空間転移テレポート〉でボルトを鳥の近くに転移させた。見事命中!

「やったね、イレーヌ!」

「……当てた気がしないわ」

 不満げだったが、こうして美味しい鳥肉を入手できた。

 ◇

 昼前には隣町『ブルームヴェイル』へ到着した。王都より規模は小さいが、立派な城塞都市だ。人口五十万。王都への物資供給地として、農地や倉庫が城壁内に広がり、商人や運送業者で賑わっていた。

 ここまで一体もゾンビを見ていない。街の人によると、ゾンビは朝方になると日が昇る前に、東の大平原の方に帰るようにいなくなったらしい。昨日は城壁で防ぎきり、街への被害はなかったそうだ。
 昼間にゾンビが出てこないのであれば、昼間だけでも物流は止めなくて済む。様子を見ながら少しずつ再開する予定とのことだった。

 そして現在、領主貴族と今回派遣された王国騎士団が作戦会議中。ゾンビは東の大平原から現れたため、そこで迎え撃つ殲滅戦か、城壁内での防衛戦かで意見が割れているという。
 個人的には、城壁内から〈聖魔法〉を撃っているだけで終わる防衛戦の方が楽なのだが……。

 結局、貴族の意見で殲滅戦に決定した。まあ、どちらでも構わない。

 軽く食事を済ませたあと、私たちも準備に取りかかった。

「一応、武器や防具だけじゃなく服にも〈魔法付与〉しておくね」

 ちなみに永続付与は〈魔法陣生成〉で魔法陣を作り、〈魔法陣付与〉で定着させる方式。人工マジックバッグなどがそれだ。
 今回は一時的なので〈魔法付与〉で。効果は二十四時間ほどに設定する。

「あと、臭いを遮断しようと思うけど、支障はある?」

「問題ないわ。〈気配察知〉があるし、むしろ臭い対策ができるならお願いしたいわ」
「私も問題ありません」

 三人それぞれの顔の周囲に空間魔法で魔力空間を作り、悪臭を遮断した。

 あとは――ゾンビを消し飛ばすだけだ。



◆現在のアリス ※は隠蔽中または改竄中

 アリス(※アレスを改竄中) ヒューマン(※天空人を改竄中) 十七歳

 称号:
 ※エンドリング
 ※勇者
  聖女

 スキル:
  火魔法[9]
  水魔法[9]
  土魔法[9]
  風魔法[9]
  闇魔法[9]
  回復魔法[9]
  聖魔法[9]
  生活魔法[10]
  空間魔法[9]
 ※性魔法[10]
  剣術[9]
  短剣術[9]
  槍術[9]
  弓術[9]
  盾術[9]
  身体強化[10]
  魔法付与[9]
  魔法陣付与[9]
  魔法陣生成[9]
  気配察知[9]
  気配遮断[9]
  罠探知[9]
  罠解除[9]
  鑑定[9]
  料理[9]
  美容[9]
  窃盗[9]
  御者[9]
 ※技巧(性)[9]
 ※絶倫[9]
  合成(空間)
  分解(空間)
  修復(空間)
 ※スキル・称号奪取(性)
 ※スキル複製(性)
  全スキル経験値アップS
  アイテムボックスS
  無詠唱
  強靭
  バッチ処理
  タスクスケジューラ
  魔力常時回復
  スキル・称号付替
 ※ステータス情報改竄
  全言語理解
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