百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

文字の大きさ
37 / 182
第一章 アストラニア王国編

035 父の工房と見習い鍛冶師

しおりを挟む
「ルビナさん、銅のインゴットがたくさんあるんですけど、使います?」

 暇つぶしにカッパーゴーレムを倒しまくった結果、百体×八十個……銅のインゴットがなんと八千個もある。正直、俺にはこんなに必要ない。

「え? 銅って何に使うの?」

 あれ? 武器専門の鍛冶師だと知らないのか?

「鍋とかやかんとか。高級な料理店だと銅製の料理道具を揃えるそうですよ」

「そ、そうなんだ……」

 ルビナさん、本当に知らなかったようだ。父が武器専門の鍛冶師だったため、銅で鍋ややかんを作るのを見たことなかったらしい。武器作りも見よう見まねで覚えたため、間違っているところもあるとか。


 しばらく話しながら歩き、ルビナさんの家である『ジャスパーブレスト武器工房』に到着。石造りと金属の骨組みで頑丈そうだ。少し古いが、趣のある外観をしている。

「せめて夕飯をごちそうするから、入って入って」

 ルビナさんに促され、工房兼自宅の建物に入る。やけに静かだ。誰もいないのか?

「ルビナさんのお父さんは、出かけてらっしゃるんですか?」

「……一ヶ月前に鉱山の落盤事故の二次被害で亡くなったわ」

 ルビナさんのお父さんは〈土魔法〉を得意としていたことから、鉱山の落盤事故で取り残された人々を助けに行ったのだが、さらに落盤が起きて命を落としたという。ルビナさんは父の残した工房を継ぐ決意を固めたが、

「ドワーフの世界では、昔から『鍛冶師は男の仕事』という風習があるの」

 力仕事で高温の炉を扱い危険が伴うため、男の仕事とされている。ドワーフの世界では、男性同士で徒弟制度が回っているため、女性の鍛冶師は存在しない。父と二人で工房を営んでいたときも、父は鍛冶を教えてくれず、ルビナさんは剣やナイフの鞘ばかり作らされていた。なるほど、だから〈革加工〉と〈木工〉だけスキルレベルが高かったわけだ。

 母は物心つく前に亡くなっており、父が亡くなった後は、他の鍛冶工房に修行をお願いしたが、女性に技術を教えてくれる人は誰もいなかった。仕方なく独学で鍛冶を始めようとするも、工房に残っていたインゴットは少なく、女性の鍛冶師には売ってくれるところもない。結局、彼女は自分でダンジョンに取りに行くしかなかったらしい。

「なるほど。そんな事情があったんですね」

 とはいえ、このままではダンジョンでの入手も容易ではなさそうだ。

「あ、まだ夕食には早いから、今日採掘した鉄鉱石を精錬するね」

 ルビナさんは鉄鉱石を精錬して鉄のインゴットに変えるつもりらしい。俺は見学することにした。

 炉に鉄鉱石を入れ、加熱が始まる。しかしルビナさんは一切動かない。

(あれ? ふいごのようなもので空気を送らないのか。この世界ではそうなのかな?)

 しばらく待っても変化はない。時間がかかるのか?

「あ、あれ? こうじゃないのかな?」

 ルビナさんが変なことを言い出す。

「ルビナさん、もしかして……精錬したことないんですか?」

「……う、うん。やったことない」

 父はたまに自分で精錬していたが、普段は専門の工房にお願いしていた。しかしその工房は女性の鍛冶師であるルビナさんには手を貸してくれなかったらしい。

「仕方ないですね。俺がスキルで精錬します。その鉄鉱石、もらいますよ」

「そんなスキルがあるの!?」

 驚くルビナさんをよそに、炉に入っていた鉄鉱石を亜空間に収納した。

「あと、あの辺に転がっているのは鉄に戻してもいいですか?」

 工房の隅には、明らかにルビナさんが練習で作った剣やナイフの失敗作が散乱している。

「う、うん。お願いします……」

 さくっと収納し〈分解(空間)〉で元素に還元した後、鉄だけ〈合成(空間)〉でインゴットに変換した。

「はい、できました」

「おお! あんたすごいね! こんな簡単にインゴットにできるなんて!」

 ルビナさんは喜んでいるが、この鉄が不純物ゼロだと気づいていないだろう。


 その後、ルビナさんが作った夕食を食べる。〈料理〉スキルレベル4で、一般的には上手だ。ただ、俺は自分のレベル9の味に慣れているので、少し物足りなかったが、顔には出さなかった。

 食後のお茶を飲み終えた頃、ルビナさんが泊まっていけという。俺は宿を取っているのだが。

「今日も含めて五日間、あたしをダンジョンで護衛してほしいの」

 なるほど、今のルビナさんには、それしか鉄を入手する手段がないのかもしれない。

「お礼は……お金は払えないから……体で払うから!」

「はあ!?」

 突然の告白に面食らう俺。

「アレス……お願い……これしか方法がないの!」

 涙目で懇願するルビナさん。少し考えたが、結論はすぐに出た。

「わかりました。引き受けます」


 このまま放置すれば、ルビナさんは単身でダンジョンに乗り込み、ゴーレムトレインしてMPKモンスタープレイヤーキルする未来しか見えない。それなら、ルビナさんのスキルレベルを上げてしまおう。

「は、初めてだから……優しくしてよね……」

 え、ルビナさん、二十六歳だよな。初めてなのか。

 〈排卵調整バースコントロール〉で避妊。
 〈感覚変更センスモディファイ〉で痛みを快楽に。
 最初は等倍で三十分ほどかけ、その後は〈強制終了フォースドターミネーション〉でスキルレベル上げ。

 ちなみに、終わってルビナさんが気絶するように眠ったあと、リディアから〈念話〉が届いた。どうやら、何かに勘づかれたようだ。なぜだ。

***

 翌朝。


 ルビナ・ジャスパーブレスト ドワーフ 二十六歳
 鍛冶師見習い

 所持スキル:
  生活魔法[4]
  槌術[8]
  身体強化[8]
  鍛冶[8]
  革加工[4]
  木工[4]
  料理[4]
  絶倫[8]


 鍛冶師は力仕事なので〈身体強化〉、回数をこなすため〈絶倫〉を追加。
 〈槌術〉は俺のレベル9から複製するだけで済むが、〈鍛冶〉は未取得なので、レベル上げに回数が必要。特にレベル1から上げる今回の〈鍛冶〉は四十五回かかった。〈槌術〉と〈身体強化〉、〈絶倫〉も含めて計四十八回。レベル8のものについては、すべて〈脳状態復元ブレインリストア〉済みなので、ルビナさんの記憶には残っていない。
 〈革加工〉や〈木工〉も後日、スキルレベルを上げる予定。

 横で俺に抱き着いて幸せそうな顔をして眠るルビナさんを見て、「本当に未成年じゃないよね?」と少し心配になる。胸はCカップくらいあり、体型自体は子供ではない。髪をなでながら、俺ももう少し眠ろうかと考えていると、ルビナさんがぼんやりと目を覚ました。

「お、おはよう、アレス。ちょっと恥ずかしいね」

 ルビナさんは赤くなるが、

「それより! 昨晩のは何!? 聞いてたのと全然違ったんだけど!?」

 まあ、そうなるよな。誰かが『この世のものとは思えない』と言っていたし。

「実はですね……昨日のアレで、ルビナさんの〈鍛冶〉と〈槌術〉がレベル8まで上がっているんですよ」

「またまたぁー。あたしはこんな見た目でも、そんなウソに引っかかるほど子供じゃないんですー」

 ルビナさんは信じようとしない。


 朝食後、さっそくダンジョンへ。ワープポータルから地下十一階へ行く。

「ルビナさん、試しにストーンゴーレムを倒してみてください」

「な!? 昨日見たでしょ!? 倒せなかったから逃げてたのよ!」

「いいからいいから。危なかったら助けますし」

「し、仕方ないわね……やってやるわよ」

 渋々了承したルビナさんだが、鉄のバトルハンマーで軽くストーンゴーレムを粉砕した。

「え……簡単に倒せた」

「言ったでしょ。スキルレベル上げたって」

 そこからのルビナさんは喜々としてストーンゴーレムを倒しまくっていた。しかし目的は別にある。

「ルビナさん、ほら、行きますよ」

「待って。あそこにもストーンゴーレムがいるわ」

「いや、花崗岩はいらないんでしょ!?」

 結局、ルビナさんの気が済むまで、ストーンゴーレム狩りは続くのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

辺境の落ちこぼれと呼ばれた少年、実は王も龍も跪く最強でした

たまごころ
ファンタジー
村で「落ちこぼれ」と呼ばれた少年アレン。魔法も剣も使えず、追放される運命だった。 だが彼の力は、世界の理そのものに干渉する“神級スキル”だった。 自覚のないまま危機を救い、美女を助け、敵を粉砕し、気づけば各国の王も、竜すらも彼に頭を下げる。 勘違いと優しさと恐るべき力が織りなす、最強無自覚ハーレムファンタジー、ここに開幕!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。 ※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)

処理中です...