百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

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第二章 リーファリアへの道編

077 渡す力と新たな力

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 その後の四日間は、昼間にダンジョンの地下四十一階から地下五十階を周回し、夜はスキルレベル上げと新たなスキルの譲渡を繰り返した。

 ◇

 初日。
 リンファには今後のために〈騎馬〉と〈御者〉、そして〈ステータス情報改竄〉を渡した。

「アレス様。私はエルマの手伝いがしたいです」

 いつもエルマにだけ料理を任せていることを申し訳なく思っていたらしい。そこで、追加で〈料理〉スキルを渡しておいた。

「アレス様……」

 こう見えてリンファは甘えん坊だ。
 夜はとにかく抱きつきたがる。これまで感情を抑え込み、過度な責任感を背負いながら行動していた影響だろう。俺はリンファが満足するまで相手をした。

 ◇

 二日目。

「あたしは特に欲しいスキルはないかな」

 エルマは何も希望しなかったので、リンファと同様に〈騎馬〉、〈御者〉、〈ステータス情報改竄〉を渡しておいた。
 昼間の彼女は明るく何事にも動じない朗らかな感じだが、夜になると途端に恥ずかしがり屋になる。
 自分のことをいまだに“おばちゃん”だと認識しているらしく、自信のなさを隠すためか、時折俺への当たりが強くなったりするのだが――

「エルマ、かわいいね」

 と返すだけで、真っ赤になって慌てる。俺はその時間を、密かに楽しんでいた。

 ◇

 三日目。
 ミリアにも同様に〈騎馬〉、〈御者〉、〈ステータス情報改竄〉を渡した。それと――

「〈隷属魔法〉? アレスさん、これ何に使うの?」

「ああ、これはね。この魔法の第五階梯に〈魔物隷属モンスターテイム〉っていうのがあって、これでテイムすれば新たな騎獣を作るときに便利だと思うんだ」

 使う機会はあまりないかもしれないが、〈隷属魔法〉も渡しておいた。
 そして――あれ以来、ミリアは魔力保有量アップ、特に限界を超えたあとの〈強制終了フォースドターミネーション〉に夢中になっていた。朝まで頑張った。

 ◇

 最終日。
 ヒカルにも〈騎馬〉、〈御者〉を渡した。それと――

「え? こんなに貰えるの?」

 俺は追加で〈合成(空間)〉、〈分解(空間)〉、〈修復(空間)〉、〈バッチ処理〉、〈スキル・称号付替〉を渡した。

「アレス、これってあなたの大事なスキルなんじゃないの? これだと私、あなたと同じことがほとんどできるようになるわよ」

「ああ、それは構わないんだ。俺と別行動で違う場所に行っても、同じことができる人がいたほうが助かる。そのほうが新しいスキルを得る機会が増えるからね」

「……私が裏切るかもしれないよ?」

「そのときは、俺に問題があったときじゃないかな。俺と一緒にいないほうがヒカルが幸せになれるなら、そのときはあきらめるさ」

「そんなことないから!」

 ヒカルが熱いキスをしてくる……まだ説明の途中だったんだが。
 なんとか宥めて、〈バッチ処理〉で魔物をドロップに変えずに亜空間へ収納する方法と、〈分解(空間)〉で死体からスキルを取得できることを教えた。
 このダンジョンの魔物スキルはすでに俺が持っているので、他で戦うことがあればスキルを集めておいてほしいと頼んだ。

「ねぇアレス……上書きして」

 たぶんもう上書きしなくても問題なさそうなのだが、ヒカルはこれを口実に甘えることを覚えてしまった。もちろん、俺は全力で応えた。


 翌朝。
 目を覚ますと、隣のヒカルが抱きついたまま離れようとしない。

「すぐ戻ってくるから」

 なんとか宥めて離してもらい、リビングへ向かう。

 〈黎花れいかの翼〉にはしばらく、地下四十一階から地下五十階を周回してもらうことにした。
 この階層の魔物素材でルビナが作る防具は、アストラニア王国で飛ぶように売れているらしい。
 ルビナはまだ魔物素材での製作を完全にマスターしてはいないが、革鎧であればかなり高品質なものを作れるという。
 あとは指輪。〈催淫無効の指輪〉は集めておいてほしい。《万紫千紅》の他のメンバーも、いずれこのダンジョンを攻略しに来ることになるだろうから。

 旅の準備を整えて玄関前に立つと、やはりヒカルが抱きついて離れなかった。
 「すぐ戻ってくるから」「いや、行かないで」を繰り返し、最後は強引にキスして離す。
 リンファもエルマもミリアも「キスを」とせがんできたので、全員にキスとハグをしておいた。

「またすぐ戻ってくるから。それまでこの屋敷とダンジョンを頼んだ」

 そう言って、俺とエリュシアは旅立った。


 王都を出て人目のない場所で透明化し、エリュシアに国境まで飛んでもらう。
 一時間ほどで国境近くの森に着き、透明化を解除すると、エリュシアが言った。

「なあ、アレス。このままアストラニア王国に帰ったら、またアタシお預け食らうことにならない?」

 たしかに、エリュシアには随分我慢させている。いまだにレベルを上げきれていないスキルも残っているし。

「アレス、だから、ここで」

「え? ここ外だぞ?」

 エリュシアは外でも構わないらしい。
 俺は〈虫障壁バグシールド〉を一帯に展開し、エリュシアのスキルレベルを上げた。

 ***

 国境を越え、さらに一時間後。アストラニア王国の王都――アルトヴィアに到着した。

「なんだか、帰ってきたって感じがするなあ」

 相変わらず大きな街だ。人の数も、エルセリオン王国の王都エルドラスよりはるかに多い。
 途中の屋台で軽く腹ごしらえをして、《万紫千紅》の屋敷に帰ると、全員がすでに待っていた。

「ちょっと遅くない?」

 イレーヌが疑わしげな視線を向けてくる。

「ご主人様。〈黎花れいかの翼〉から聞いた出発時刻を考えると、二時間ほど遅いようですが?」

 リディアも同じく、探るような目をしていた。まさか〈念話〉で既にやり取りをしていたとは知らなかった。
 イレーヌとリディア、なにか勘づいているようだが、俺は何事もなかったかのように話題をそらす。

「そういや、新しいスキルが生えたんだって?」

 ルビナが満面の笑みで報告してきた。

「そうなの! あたし、二つも生えたのよ! 一つは〈魔物素材加工〉。これのレベルが上がれば、魔物素材の武器・防具をもっと高品質にできるわ! それと〈彫金細工〉。これは女性向けの武具に彫金してたら生えちゃった。本来はアクセサリー職人のスキルなんだけどね!」

 ルビナはまだ話し足りなさそうだったが、続いてリディアが口を開く。

「私は〈槍斧術〉が生えました」

 おお。〈槍術〉と〈斧術〉を持っているから槍斧ハルバードを渡していたが、まさか専用スキルがあるとは。
 続いてセレナ。

「私は〈交渉〉。ここ最近、王城や貴族の屋敷での話し合いが多いせいだと思うわ」

 貴族になると交渉事も増えるのだろう。大変そうだ。
 続いてティア。

「私は〈教育〉が生えました」

 休日の孤児院の手伝いがきっかけだったらしい。ティアは先生向きかもしれない。
 そしてメディア。

「私は〈建築〉が」

 土魔法で城壁を作る練習をしていたら自然に生えたようだ。頑張ってくれていたようだ。

 ……ん? 残りの二人は黙ったまま暗い顔をしていた。

「ジーナとイレーヌはスキルが生えなかったのか? まあ、絶対生えるわけじゃないから、そんなに気にしなくても――」

「いや、そうじゃないんだけど……」

 ジーナが言いにくそうに答えた。

「遊んでいたわけじゃないんだけど……槍斧ハルバードの練習中に“踊るように華麗にできないかな”ってやってたら……〈舞踏〉が生えちゃった」

 おお、それはむしろ戦闘にも活かせるスキルじゃないか。いいスキルだと思うぞ。

「で、イレーヌは?」

「アタシは……遊んでいたら生えちゃったから、あまり堂々と言えないんだけど……〈モノマネ〉」

 え? それ、レベルを上げたら相当役立つスキルかもしれないぞ。
 俺が褒めると、ジーナとイレーヌは安心したように笑顔になった。

 するとルビナが思い出したように言う。

「あとドルガンさんから伝言。『早いうちにミスリルを入手してこい』だって」

 どうやらルビナに渡した魔物素材のうち、ギガントボアから取れる「巨猪の超硬皮」で革鎧や盾を作ると、ルビナ鋼より軽くてほぼ同等の強度を持つ防具ができるらしい。
 今のところドルガンさんの判断で販売はしておらず、イレーヌとジーナが巨猪革の胸当てとして着ているだけだそうだ。
 リーファリア王国に行く前に、『石喰いの巣』に寄っていくか。

 よく見ると、リディア以外のメンバーはエルセリオン王国産の素材防具を身に着けている。
 リディアだけは鉱石由来の武具を好み、ルビナ鋼のままでいた。

「ああ、アレス、もう一つ報告がある」

 イレーヌが改まった声で言った。

「アンタを血眼になって街中探してるエルフがいたわよ。たしか魔道具師の。アンタの知り合い?」

 マジか。それは間違いなくローレリン魔道具店のフィリシアさんだ。

「ああ、知っている人だ。何か言ってたか?」

「冒険者ギルドまで来てアンタを探してたから、『今リーファリアに向かってる』って教えたら、その場で護衛を雇って旅立っていったわよ」

「すごい行動力だな……」

 十日以上前の話らしい。今ごろ国境を越えたあたりか。どこかで再会することになりそうだな……。


 その後、スキルレベル上げの相談をした。
 生えたばかりのスキルはどれもレベルが低い。レベル8にするには時間がかかるため、一日一人ずつにすることにした。
 ルビナだけは二日に分ける必要があるだろう。
 全員を相手にしなければならず、ルビナが二日かかることを考えると、今日を含めると八日間になる。
 順番は女性陣に決めてもらうことにした。
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