百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

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第二章 リーファリアへの道編

088 竜の少女と秘密の開示

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 ブルードラゴンになったターリアの背に乗った俺たちは、透明化してアストラニア王国の国境を目指した。
 十分ほど経ったころ、前方に〈黎花れいかの翼〉の気配を見つけた。早速、〈念話〉で連絡する。

『ヒカル、もうすぐ合流する。ブルードラゴンに乗っていくから、見つけても攻撃しないでくれ』

『あ、アレス! ブルードラゴンってどういうこと!?』

『まあ、見ればわかる。透明化解除するから、どこか広いところで馬車を止めてくれ。マジで攻撃すんなよ?』

 〈黎花れいかの翼〉が馬車を止めたのを確認してから、俺たちは透明化を解除し、ターリアに馬車の近くへ着陸してもらった。

 ブルードラゴンに呆気にとられていた〈黎花れいかの翼〉の四人だったが、最初に興奮気味に動き出したのは《竜騎士》のミリアだった。

「アレスさん! どうしたのそのドラゴン! 私も乗っていいですか?」

「あ、いや、このドラゴンは〈変身魔法〉で変身しているだけで、実はエルフの少女なんだよ」

 そう言ってターリアにエルフへ戻ってもらう。

「「「「可愛い!」」」」

 〈黎花れいかの翼〉の四人は、ターリアをすっかり気に入ったようだった。

 その後、しつこくミリアにせがまれて、ターリアは再びドラゴンに変身し、ミリアを乗せて飛び回った。
 そして、なぜかヒカルもリンファもエルマも「乗りたい」と言い出したため、最後は四人を乗せて空を飛んでいた。
 しばらく楽しんでいた〈黎花れいかの翼〉とターリアだが、ようやく落ち着いたのか降りてきた。
 降りるなり、ヒカルが近寄ってくる。

「アレス! 私たち、ターリアに乗せてもらって移動してもいい?」

「俺は構わないけど……」

 ドラゴンからエルフの少女に戻ったターリアを見ると、ミリアに「可愛い!」と抱きつかれて若干引いていた。

「ターリア、ヒカルたちがターリアのドラゴンで移動したいって言ってるけど、どうする?」

 ミリアを引きはがしたターリアが答えた。

「うん、いいよ。なんだかミリアお姉さんが乗ると、すごく気分がいいの。称号のせいかなあ」

 どうやら《竜騎士》の称号は、ドラゴンに変身したターリアにも影響するらしい。

「ヒカル、そういうことなら、ターリアを〈黎花れいかの翼〉の一員にしてやってくれ。アストラニア王国でターリアは冒険者登録するから、一緒にダンジョンに潜ってやってほしい」

「喜んで引き受けるわ」

 こうしてターリアは〈黎花れいかの翼〉に加入することになった。

 俺は馬車のキャビン部分を亜空間へ収納した。
 馬車を引いていた馬は貸馬だったので、国境の街『バルグレイン』で返す必要がある。
 俺は馬を〈熟睡ディープスリープ〉で眠らせ、〈念動サイコキネシス〉で浮かせ、さらに〈重量軽減ウェイトリリーフ〉で軽くしてから、エリュシアに俺ごとバルグレインまで運んでもらった。

 バルグレインに着いて馬を返し、すぐに街を出て飛んで国境へ向かったのだが――

「ターリア、透明化して先にドラゴンで国境を越えて、向こうで待っていてもらってもいいか?」

「どうして?」

 冒険者はその国のダンジョンを一つ以上踏破し、冒険者ギルドで通行許可証をもらえば国境を越えられる。
 しかしターリアのように無職で通行許可証もない場合は、ここを通れるとは思えない。

「たぶんターリアだけ、ここを通れないはずなんだ。すぐに行くから」

「……わかった。すぐ来てね!」

 俺たちは国境で手続きをしてアストラニア王国に入った。

 無事ターリアと合流した俺たちは、俺を抱えたエリュシアが先導し、その後ろをドラゴンになったターリアに乗った〈黎花れいかの翼〉がついてくる形で、国境から一時間ほど飛び、アストラニア王国王都アルトヴィアに到着した。

 ◇

 《万紫千紅》のメンバーが全員揃った。計十四名。
 今の屋敷ではこの人数は泊まれないが、〈黎花れいかの翼〉の五名は、俺が魔改造して20LDKにしてある馬車に泊まるという。今は屋敷より馬車のほうが広い。

「そういうことなら、全員馬車のほうで過ごせばよくない?」

 イレーヌの一言で、全員が馬車で過ごすことになった。
 そしてなぜか、バーカウンターは屋敷から馬車へ移築された。
 今日はパーティのような感じで全員の親睦を深めることにした。

 指名依頼である〈誘引無効の指輪〉集めは、今日の納品で終わったらしい。
 そして二週間後、セレナの領地『エヴァルシア』へ出発する予定だ。
 それに伴い、セレナが家名をエヴァルシアにしたそうだ。セレナ・エヴァルシア。
 ちなみにジーナとティアは、ノワゼリア侯爵に家名をつけてもらい、それぞれジーナ・ヴァルステッド、ティア・グレイスフェリアになった。

 また、ミスリルで依頼していた武器・防具の一部が完成したため受け取った。
 〈百花繚乱〉のルビナ鋼だった装備はすべてミスリルにグレードアップしている。
 全身ミスリルになったリディアは、かなり目立つだろう。

 明日からはメディアのダンジョンアタックを開始する予定だったが、ついでにターリアも一緒に行くことになった。

「アレスは明日からどうするの?」

 セレナにそう聞かれ、少し言葉に詰まる。
 やることはあるが、その前に伝えておくべきことがある。

「一応、エルフの女王から、貴族に捕まっているエルフを解放してくれって依頼を受けているから、それをやろうと思っているんだが……」

 俺はそこまで言って、全員に聞こえる声で言った。

「みんな、大事な話があるんだ。聞いてくれ」

 部屋が静まり、全員の視線が俺に集まる。
 これを言うとどうなるかわからないが、言っておかないと後々説明が大変になる。

「今までみんなに言っていなかったことがあるんだ。このタイミングで話すか悩んだんだが……今後エルフと関わることになるから伝えておく」

 全員が注目する中、俺は一度つばを飲み込んだ。

「俺はヒューマンじゃないんだ。《悲しみの魔女》が天空人の身体を復元し、そこに異世界の魂を融合させたのが俺だ。だから俺の種族は“天空人”だ。見た目はヒューマンと変わらないが、大きな違いが三つある。一つは、エルフは天空人に近づくと発情する。これは俺が“アリス”になれば無効化できることを確認している」

 驚いていたセレナだったが、すぐに「だから、メディアはああなのね」と、一人で納得していた。

「二つ目は、天空人とエルフのハーフの子はハイエルフに、天空人とヒューマンのハーフの子はハイヒューマンになるそうだ。ハイエルフは普通のエルフの倍の寿命で、魔女並みの魔力を持つ。ハイヒューマンも同様だ。ただ、俺は特殊で、《エンドリング》という称号を持っているから、生まれてくる子供の種族を選べるんだ」

「え? どういうこと?」

 イレーヌがすかさず聞いてきたため、俺は《エンドリング》の効果を説明した。

《エンドリング》
・生まれてくる子供の種族を、天空人・相手の種族・ハーフの中から選べる。
・自分の遺伝子を継がせられるのはハーフのみ。
・相手の種族を選んだ場合は相手の遺伝子を基に、子供の性別に合うよう遺伝子が変化する。
・天空人を選んだ場合は相手の遺伝子を基に、天空人に合うよう遺伝子が変化する。

 説明を聞いたセレナがすぐに口を開く。

「となると、私とアレスの子供をヒューマンにして、性別が女の子だったら、私とまったく同じ見た目の子が生まれるってこと?」

 さすがセレナ、理解が早い。

「そういうことになる。ただ、俺はこの産み分けをどう使うべきかよくわかっていない。それに、ハーフの子を産むとその子孫が魔女化するリスクがあるとリーファリアの女王に聞いた。このあたりはもう少し考えてから決めたい」

 まだ子供を作る気はないので先の話だと思っているが、すでに「子供が欲しい」と言っているメディアからすると、早く決めてほしいだろう。

「最後に三つ目だが、天空人には寿命がないらしい。過去に二万年以上生きていた天空人がそう言っていたらしい。今まで黙っていてすまない。天空人がこの世界でどう扱われているのか、もっと調べてから伝えたかったんだが……エルフの件があるから」

 ここまで言って全員に頭を下げた。
 今言うべきじゃなかっただろうか? そう思っていると――

「で、結局、アレスは今までと何も変わらないんでしょ?」

 何事もなかったかのようにイレーヌが言う。

「ご主人様が“天空人”だからといっても、私には何も関係ありません」

 リディアも、いつもどおりの表情で言った。

 その後も次々に「何も変わらない」「別に気にすることじゃない」と言われた。
 ただメディアだけは「ハイエルフがいいです」と言ってきて、さすがブレないなと感心した。

 俺にとっては一大決心の告白だったのだが、なんだか「大したことじゃない」と流されてしまった。
 いい仲間に巡り合えたと思う。

 落ち着いたところでセレナが口を開く。

「じゃあ、アレスは王都の貴族に捕まっているエルフを解放していくわけね」

「ああ、そうなるな。そのとき“アリス”で行動するってことを言いたかったんだけど」

「それは〈百花繚乱〉でやろう!」
「それは〈百花繚乱〉でやりましょう!」

 なぜかイレーヌとリディアがノリノリだったので、俺とイレーヌ、リディア、エリュシアでやることになった。

 明日からは〈百花繚乱〉がエルフの救出、〈迷宮の薔薇〉と〈黎花の翼〉が共同でダンジョンアタックだ。
 ただ、エルフ救出には人手が必要になるため、エルマだけこちらの手伝いで屋敷に残ってもらうことにした。

「そうなると、イレーヌとリディアとエリュシアには〈魔力感知〉を渡す必要があるな」

 そう言った途端、なぜか全員が「〈魔力感知〉は自分も必要だ」と言い出す。
 たしかにあったほうがいいかもしれないが。

「ああ、待った。全員いっぺんはさすがに朝までかかるから、せめてパーティごとにしない?」

 その日から三日間は、〈百花繚乱〉→〈迷宮の薔薇〉→〈黎花の翼〉という順番で、毎晩四、五人を相手することになった。
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