百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

文字の大きさ
165 / 182
第四章 モノ・インフィニティ編

156 従魔の実験と届かぬ手紙

しおりを挟む
 翌朝。
 二名の女性を階段エリアまで送り届けたあと、俺は再びオークエリア攻略の最前線へと戻ってきた。

 階段エリアへ向かう途中にも確認できたが、最初に壊滅させた集落には、すでに新たな建物が建ち並び、五十匹のオークが定住していた。さらに、二日前に壊滅させた九ヶ所の集落にも、すでにオークが入り込み、建築を始めている。

 どうやら、壊滅から二日で新たなオークが補充されるらしい。
 つまり、壊滅させたばかりの採取ポイントで、安全に野営できるのは一晩が限度ということになる。

 採取ポイントで休むなら、毎日新たな集落を壊滅させるか、補充される魔物の襲撃を撃退する必要があるわけだな。

 さて――今日は、従魔にする実験をしてみよう。

 これまでに壊滅させたオークの集落は二十ヶ所。
 今回が、二十一ヶ所目となる。

 集落に到着して確認すると、昨日より十匹増え、総数は七十匹になっていた。新たな個体が補充されたのだろう。
 周囲を観察していると――すぐに異質な存在を見つけた。

(オークナイトか。スキルレベルは……7だと? 通常ダンジョンのボスと同格じゃないか。キングなんて出てきたら、どれほどの強さになるんだよ……)

 呆れながら、もう一匹のオークナイトにも〈鑑定〉をかける。

(おいおい……こっちはレベル8かよ。レベル8なんて、相手にしたことないぞ)

 スキルレベルでは俺のほうが上だ。一対一なら負けることはないだろう。
 だが、オークナイトは鎧・武器・盾を備えた重武装の魔物だ。複数に同時に襲われれば、さすがに無傷では済まないかもしれない。

(こいつらが〈気配察知〉や〈気配遮断〉、〈魔力感知〉まで高レベルで持っていたら、さらに厄介だな)

 今のところ、それらの感知系スキルを持つ魔物には遭遇していないが、警戒するに越したことはない。

(……よし。このオークナイト二匹を従魔にしてみるか)

 俺は透明化したまま〈気配遮断〉を維持し、二匹の背後へと静かに接近する。
 そして直接触れ、〈魔物隷属モンスターテイム〉を発動した。

(おお……成功した。これで二匹は俺の従魔だ)

 だが――すぐに、重大な問題に気づく。

(……あれ? どうやって命令すればいいんだ?)

 ミノルは、従魔には〈念話〉で命令できると言っていた。
 しかし、このダンジョンでは〈念話〉が使えない。

 念話を持たない者でも従魔を扱える以上、言葉による命令も可能なはずだ。

「ガー、ギギッ、グァー」

 ……俺、しゃべれないじゃん。

 オークナイト二匹は、俺のほうを見つめたまま、まったく動こうとしない。

(くそっ! 言葉を話せなきゃ意味がないじゃないか! 面倒なことにしてくれたな、ミノル……!)

 俺は従魔としての運用を諦め、通常どおり殲滅することにした。

 ちなみに、“セインテス”の姿になって〈魅了〉も試してみたが、結果は同じだった。
 〈魅了〉は三時間で効果が切れる。一時的な支配にしかならない。
 従魔として完全に支配するには、やはり〈魔物隷属モンスターテイム〉が必要だ。
 ――俺が言葉を話せるようになれば、の話だが。

 “全滅バッチ”を使用すると、ハイオークとオークナイトは生き残る。
 だが、第五階梯複合魔法〈土・火魔法〉〈溶岩弾マグマショット〉は鎧や盾を貫通し、大きなダメージを与えるため、弱った状態で残る。
 そのため、個別に止めを刺すのは難しくなかった。

***

 その日も、いつしかノルマとなりつつある十ヶ所目の集落へと到達した。

 ここまで、捕らわれている女性は一人もいなかった。
 そして――今日最後となるであろう集落を調査していると、ようやく目的の魔物を発見した。

 オークハイプリーストだ。

(七十一匹中、一匹だけか……たまたまこの集落に来ていた個体か?)

 すぐに〈鑑定〉を行う。

(よし! 〈光魔法[8]〉持ちだ。だが、レベル8とはな……)

 レベル8の攻撃魔法は、通常戦闘で使用可能な最高峰の全体攻撃魔法に相当する。
 レベル9以上になると、攻撃範囲が広大すぎて、もはや戦争規模でしか扱えない。

 俺自身も、今ならレベル9の攻撃魔法を使用できる。
 だが、要救助者の有無が不明な状況で無差別攻撃はできない。

 ミノルに飛ばされた者が、魔物の姿で存在している可能性もある。
 そのため、“全滅バッチ”には〈鑑定〉による識別機能が組み込まれているのだ。

 さらに、素材の回収も重要だ。
 この辺りはすでにAランク相当の領域であり、倉庫には質の高い武具素材が残されている。
 特に革素材は、優先して回収しておきたい。

(よし……まずは“全滅バッチ”だ)

 〈バッチ処理〉を起動。

 瞬時に、ハイオーク、オークナイト、オークハイプリースト以外のすべてが消滅した。

(オークハイプリーストは確実に仕留める)

 透明化と〈気配遮断〉を維持したまま接近し、ミスリルのショートソードで首を刈り取る。

(……完全に暗殺者だな、俺)

 無事、〈光魔法〉を獲得した。

 残るハイオークとオークナイトにも止めを刺し、集落内の物資をすべて亜空間に収納する。
 そして、集落の中央に鍛冶工房を展開した。

(今日は救助者もいない。革素材も手に入ったし、“レッドキャップ”用の防具を新調して、予備武器も作るか)

 夕食を終えたあと、鎧を新調し、高炭素鋼のショートソードを二振り製作した。
 すべてを終えて、ベッドに入る。

 眠る前、レオンに貸しているマジックバッグの亜空間を確認した。
 手紙と動画保存カードは、まだそこにあった。やはり、気づかないか……。

 それを確認したせいか――俺は久しぶりに夢を見た。


 夢の中で、再びマジックバッグの亜空間を覗く。

 だが――俺が置いたはずの手紙と動画保存カードは消えていた。

 代わりに、一通の新しい手紙が置かれている。

 届いたのだ――俺の手紙が。

 胸の高鳴りを抑えきれず、すぐに手紙を取り出し、封を切る。

 そして――

『どなたか知りませんが、このようないたずらはやめてください。アレスなら、こちらで普通に生活しています。来月には、私を含めた十三人とアレスの結婚式が予定されています。あなたの相手をしている暇はありません。今後、このような手紙は送らないでください。 アストラニア王国エヴァルシア領主 セレナ・エヴァルシア』

 そんな……バカな……!

 全員、ミノルに騙されたというのか……!?

 ダメだ――早く脱出しないと!
 すぐに彼女たちを救わないと――!


「グァァァァー!!」

 叫びながら、俺は目を覚ました。

 心臓が激しく脈打っている。
 全身に嫌な汗がにじんでいた。

 ……夢か。

 嫌な夢だった。

 エリュシアは――あのあと、ミノルに襲われたかもしれない。
 これは時間をかけて、俺が忘れさせてあげるしかないだろう。

 しかし、他の女性たちは――

 ミノルは理解していない。
 あいつは、必ず見破られる。

 ――俺には、その確信があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

辺境の落ちこぼれと呼ばれた少年、実は王も龍も跪く最強でした

たまごころ
ファンタジー
村で「落ちこぼれ」と呼ばれた少年アレン。魔法も剣も使えず、追放される運命だった。 だが彼の力は、世界の理そのものに干渉する“神級スキル”だった。 自覚のないまま危機を救い、美女を助け、敵を粉砕し、気づけば各国の王も、竜すらも彼に頭を下げる。 勘違いと優しさと恐るべき力が織りなす、最強無自覚ハーレムファンタジー、ここに開幕!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。 ※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

処理中です...