百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

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第四章 モノ・インフィニティ編

162 奴隷の女性たちと守護の屋敷

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「〈黒牙団〉のキャンプ地って、ここからあといくつだっけ?」
「あと十五だ。今日は五つしか進めなかった。このペースだと、あと三日はかかるぞ」
「マジかよ。だりぃな」

 ここから十五ヶ所先にある集落に、コボルトのオーブを所持している者がいる。
 つまり、コボルトのオーブを持つSランクパーティの名が〈黒牙団〉なのだろう。

「ザルグさんも、奴隷をもう少し分けて使えばいいのによ。いくらゴブリンナイトが強敵だからって、奴隷十五人もゴブリンに使っちまって……もうキャンプ地には奴隷が五人しか残ってねぇし」
「だから、俺たちが街まで奴隷を補充しに戻ったんじゃねぇか」
「はぁ……奴隷を襲わせている間に首を刈るのがザルグさんの作戦なんだろ。めんどくせぇな」
「そういや、なんであの五人の奴隷だけゴブリンに使わなかったんだ?」
「お前、知らなかったのか? あの五人はザルグさんのお気に入りなんだよ。毎晩、自分の相手をさせてるらしいぜ」
「マジかよ……」

 なるほど。事情はだいたい理解できた。
 奴隷の女性をゴブリンの注意を引きつける餌として使い、その隙に討伐していたのか。そして、気に入った奴隷は自分専用として囲っている――というわけだ。

「なあ、このままこの二十人を連れて行ったら、またザルグさんがお気に入りだけ持っていくんじゃねぇか?」
「そうだ! 絶対そうに決まってる! 今のうちに俺たちで使っておこうぜ!」
「おお! いいなそれ! じゃあ、俺はあの一番胸のでかい子な!」

 こいつら……奴隷の女性を襲うつもりか。

 本来、この世界では主人が奴隷をどう扱おうと、他人が口を挟むことはできない。
 だが、こいつらはゴブリン攻略のための餌として奴隷を消耗品のように扱っている。加えて、この発言だ。

 ――罰する。

 俺はそう決めた。

「〈部分収納パーシャルストレージ〉」

「な、なんだ!? 身体が動かない!?」
「どういうことだ!? 何が起きた!?」
「魔物か!? どこにいる!?」

 俺は三人の身体を拘束し、完全に動きを封じた。

「〈性別変更ジェンダーシフト〉。〈強制終了フォースドターミネーション〉、〈血契約ブラッドオース〉」

 女性化させた直後、即座に〈強制終了フォースドターミネーション〉を発動し、続けて〈血契約ブラッドオース〉によって奴隷化する。

 我ながら凶悪なコンボだ。
 常日頃から魔法に対して極度の警戒をしていなければ、回避は不可能だろう。

 さらに、〈服従契約サブミッションコントラクト〉と〈隷属刻印スレイブマーク〉を重ねて発動し、完全に俺の支配下に置いた。

「お前たちは、そこから動くな。抵抗せず、おとなしくしていろ」

 女性化させ、奴隷化した三人に命令したあと、〈部分収納パーシャルストレージ〉を解除する。

 ここまで、俺は透明化したまま行動していた。
 そのため、連れてこられた二十人の奴隷の女性たちは、何が起きたのか理解できず、ただ困惑している様子だった。

(このまま姿を現せば、パニックになる可能性が高いな……先に奴隷契約を書き換えておくか)

 俺は二十人の奴隷の女性に〈上書契約リバインド〉を発動し、主人を俺に書き換えた。契約は静かに上書きされ、奴隷たちは変化に気付いていないようだった。
 そして、メスのゴブリンの姿を現す前に、あらかじめ説明しておくことにする。

「私は――」

 ……しまった。“アレス”の声しか設定していなかった。

 俺は慌てて、“アリス”の声へとチューニングし、声を切り替えた。

「あ、あー……えーと。私はゴブリンのメスです。みなさんを助けますので、私の姿を見ても騒がないようにしてください」

 そう命令してから、透明化を解除した。

 多少ざわめきは起きたが、「騒ぐな」と命令していたため、パニックには至らなかった。

「これから、みなさんを保護します。食事と休むための場所を用意しますので、少しだけ待っていてください」

 そう告げると、俺は亜空間から三十部屋ほどある屋敷を取り出し、その場に設置した。

 屋敷の中へ入り、アンデッドの集落の屋敷から回収していたベッドを各部屋に配置していく。

(魔物の屋敷にあったベッドだが……普通に高級品なんだよな。魔物が使っていた形跡もないし)

 呪いや罠がないことは既に確認済みだ。
 一応、〈洗浄クリーン〉もかけておいたので問題はないだろう。

 食堂には二十人以上が座れるテーブルと椅子を設置し、外へ出て奴隷たちを呼んだ。

「順番に屋敷へ入ってください」

 俺は入口で待機し、入ってくる奴隷一人ひとりに、〈完治2エクストラヒール・セカンド〉と〈洗浄クリーン〉をかけていく。

 全員が食堂に入ったところで、エルマが作り置きしてくれた夕食を振る舞った。

 やはりエルマの料理は絶品だった。
 そのおかげか、奴隷たちの警戒も大きく緩んでいった。

 食事が終わったあと、俺は全員の前に立った。

「皆さんを奴隷から解放することは可能です。そして、ダンジョンから脱出させることもできます。ですが――その後、皆さんはどうしますか?」

 問いかけると、一人の女性が代表して答えた。

「私たちは何の財産も持っていません。地上に出ても、自力で生きていくことはできないでしょう。また、奴隷だったことを知られれば、再び捕らえられる可能性があります」

 やはり、そうか。

 冒険者であれば装備と資金を渡すだけで社会復帰できる可能性は高い。
 しかし、長年奴隷として生きてきた者にとって、金だけを渡されてもゼフィランテス帝国で生きていくのは困難だろう。

「わかりました。解決策をできるだけ早く用意します。それまでは、この屋敷で過ごしてください。隣の部屋に服や下着、靴を用意してあります。好きなものを選んで着替えてください。着替え終わったら、二階の好きな部屋で休んでいただいて構いません」

 そう告げると、全員が隣の部屋へ移動し、着替えを始めた。

 その間に、俺は一階の一室に牢屋を作り、外に放置していた女性化した冒険者三人を中へ収容した。

 屋敷の準備はこれで問題ない。


 次に、俺は屋敷の外に停めてある客車へ向かった。
 そこには、今日ゴブリンの集落から救出した五人の女性冒険者が眠っている。

(屋敷と客車で別々に目を覚まされると面倒だが……この国の平民と奴隷の関係は異常だ。セラフィードで見た限り、会わせない方が安全かもしれない)

 五人の女性冒険者には、このまま客車内で“治療”をすることにした。
 白いガウンとスリッパ、そしてメッセージを書いた板を、それぞれのベッドの脇に置いておく。

 その後、屋敷へ戻った。


 奴隷の女性たちは、一日中裸足で歩かされていたため、疲労が激しかったのだろう。
 すでに全員が各部屋で休んでいた。

 俺は食堂にマジックバッグを一つ設置した。
 新たに作った、俺の亜空間に接続されたバッグだ。

 その中に全員分の明日の朝食を入れ、横に説明書きを置く。

『このバッグの中に、朝・昼・夕の食事を用意します。自由に食べてください』

 すべての準備を終えたあと、俺は屋敷の外へ出た。

 そして、安全確保のため、屋敷全体を〈空架障壁スペースシールド〉で覆う。

 これで、外部からの侵入は不可能になる。
 同時に、奴隷の女性たちも外へ出られなくなるが――

 今は、それで問題ない。
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