社内恋愛ファースト・シーズン

アリスの鏡

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7章 それぞれの選択

42話 断罪

◇◇◇ 野原 陽子 ◇◇◇

「陽子、ごめんね。朝から」

「大丈夫。それより何があったの? メッセージでも言ったけど」

「うん。みんな見てたんだよね? ごめんね」

「矢野が……ゆりと香取さんを見てすぐに帰っちゃって」

「土曜日ね、広斗がバイクでどこか行こうって言ってくれてたの。でも、土曜日のお昼になっても、広斗から連絡が来なくて、電話したら用事が出来たからって言ってたんだけど、その用事って南ちゃんのことだった」

「南ちゃん?」

「南ちゃんが言ってたの。広斗と水族館に行ったって。金曜日に広斗の家に泊まって、そのまま行ってきたって」

「え、え? ちょ、ちょっと待って。なんで突然そうなるの?」

 一人焦る私に向かって、「私もわからない」なんて言って、ゆりは力なく微笑んだ。

「広斗は否定しなかったし、私に対してなにも言わなかった。ただ普通に相槌を打つだけだったんだ」

「それ、本当なの」

「その後もさ、南ちゃんが……」

「うん」

 正直なことを言えば、あのとき、私も同期のみんなも軽く受け止めていたんだと思う。そして、空気を読んで我慢するゆりに、みんなが甘えたんだ。

「負けちゃったんだ。南ちゃんと争うことも出来なくてさ。みんなが寝ちゃった後、広斗の隣に南ちゃんが寄り添って寝てた。腕を組んで隙間ができないくらいにくっついて。広斗も抱き締めてた」

 南ちゃんが泊まって、二人で出かけて、夜は二人で寄り添って寝ている。聞いているだけで混乱してくる。私の頭の中も疑問だらけ。

「だから、香取さんに逃げちゃった」

 ゆりは、ふわりと笑った。本当に綺麗な笑顔。でも、その瞳の奥には何も映っていないようで、私は背筋が寒くなった。怒るとか、悲しむとか、そういう段階を通り越してしまったんだ。

 そう言ってゆりはまた、自嘲するように笑った。聞いている私でさえパニックを起こしそうな内容を、ゆりはあの日、目の当たりにしたんだ。私の表情に気付いたゆりが、また笑う。

「やだ、陽子。そんな顔しないで。私が弱いのがいけないんだよ」

「私だって、絶対普通になんてしていられない。傷付いたでしょ? ごめん。本当にごめんね」

「なんで陽子が謝るの? 私こそ、なにも言わずに飛び出してごめん。心配かけて、迷惑かけてごめんね」

 さっきまで表情のなかったゆりが、柔らかく綻んだ。
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