社内恋愛ファースト・シーズン

アリスの鏡

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7章 それぞれの選択

42話 断罪 2

「池袋までしか帰れないってわかってたんだけど、どうしてもそこにはいられなくて。でも、あてがあったわけでもないの。それで池袋をフラフラ歩いてたら、香取さんからメッセージがきて」

「そのタイミングで?」

「うん、すごいよね」

「ドラマ……」

「本当にドラマみたいだった。香取さんに助けてって電話したの。そしたら、あの時間に大雨の中なのに走って探してくれて。香取さんに見つけてもらって抱き締めてもらった時には、本当に安心した」

「さすがだな。かっこよすぎ」

「でしょ?」

 香取さんの話になると、ゆりに明るい笑顔が戻る。

「でも、香取さん、私に大丈夫だよって言うだけでなにも聞かないの。だから、ちゃんと広斗と話したら、香取さんにも話そうと思う」

「そっか。でもなんか、ゆり落ち着いたね」

「うん、香取さんが穏やかだからかな。安心させてくれるから。甘やかしすぎな部分もあるけどね」

「甘そ~! まぁ、香取さんは嬉しいだろうね。ゆりがやっと振り向いたなら。ベタ惚れってやつ?」

「でも、そんなことないよ? 私の方が負けてるもん」

「香取さんペース?」

「完全に。あの顔で言われると、全てが魅力的に聞こえるっていう」

「あ、それわかる! やっぱりカッコいい人は得だわ。で、ゆりはいつ矢野に話すの?」

 名前を出した途端に、ゆりの顔からまた表情がなくなる。その瞳にはなにも宿っていないように、遠くを見るように。

「今日、広斗にいつがいいか聞いてみる」

「本当に矢野とは終わりにするの?」

「……南ちゃんと争うなんて私にはできない。広斗もね、私に話があるって言ってたから南ちゃんのことかも。それに私は香取さんを選んだから。香取さんと一緒にいたい」

 もうゆりは、戻らないかもしれない。
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