シンデレラ・スキャンダル

アリスの鏡

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6章 マイ・シンデレラ・ガール

26話 あなたへ 3

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 聞いていた話では、今回のCMに使うDawnという曲を披露した後は、リクエストに合わせて二、三曲披露するということだったはず。

「行ってくるね」

「あ、はい。行ってらっしゃい……」

 訳が分からないまま、返事をする。膝に置かれたジャケットの中、大きな手に包まれていた手を今度は自分の手で包めば、まだ温かい。

 そして、視線をステージに向かって歩いていく龍介さんの背中に向けてみる。龍介さんはキーボードが置かれたステージに上がると、マイクを持ち、ゆっくりと会場を見渡した。

「本日はディアブロさんにこのような場を設けて頂いたので、CMに使っていただくDawnの前に、まだ制作中の曲を披露したいと思います。先日、ハワイに行って来まして、そこで作った曲です」

 仁さんを見ても、そして優くんを見ても、二人とも優しい笑顔でわたしを見ている。「今、歌いたい」と龍介さんが言った曲は、きっとあの曲。

 彼はキーボードの椅子にゆっくりと座ると、短く息を吐く。いつもの龍介さんの仕草。

「では、聴いてください。『My Cinderella Girl』」

 初めて聞くタイトル。でも、耳に届くこの柔らかいメロディーは、確かに二人で作ったもの。龍介さんの歌声が響けば、あの海が、あの太陽が、あの風が蘇る。

◇◇◇◇◇

『いつもどおりの毎日になるはずだった 君と出会って全てが変わる

青い海 吹き抜ける風 輝く太陽 全ての時間が瞬いていく

濡れて光る睫毛が伏せられる度 高鳴りを増していく僕の胸

波の音が気持ちを加速させる

きっとこんなにも 君の笑顔が眩しいのは太陽のせい

言い訳しながら 惹かれていく


出会いは突然に 必然に 二人を引き寄せる

幸せがここにあると教えてくれた君に ただ伝えたい ありがとう

君が戸惑わないように 困らないように 僕は少しずつ手を伸ばす

それでもこの腕の中に 引き寄せたい衝動に駆られるから

その瞳で僕を見つめないで


夕日が落ちる海を見て君が呟く「綺麗」 潤んだ瞳が光る
砂浜と 瞬く星に 二人照らす月 静かに並ぶ僕たちの肩

穏やかな光の下で君に触れる度 幸せと切なさを感じてる

偶然じゃない運命と呼びたい きっとそう思うのは 僕の隣で無邪気に笑う君のせい
君がいるから 僕は歌う

出会いは突然に 必然に 二人を引き寄せる

幸せがここにあると教えてくれた君に ただ伝えたい ありがとう』

◇◇◇◇◇

 暗い会場の中、スポットライトで照らされたステージで拍手に包まれる龍介さん。膝の上で握りしめたジャケットから、彼の体温が流れ込んでくるようで、視界が滲んだ。

 やっぱり胸がキュウキュウと鳴くのは、気のせいじゃないみたい。胸が苦しいのに、それが心地いいなんておかしい。でも、龍介さんに出会ってからずっとそんな状態だ。不安だけど、幸せで。幸せだけど、不安で。

 こんなに素敵な人と一緒にいられるなんて夢じゃないかって、いつかこの夢が醒めてしまうんじゃないかって、そう思ってしまうのは、龍介さんとの時間がとても幸せだから。いろいろな感情が混じり合って、わたしの心はいつもいっぱい。

 そして、ステージが整えられると、続いてDawnが披露された。さっき奏でた曲とは全く違う顔を現して、LegacyのRYUとYUTOが疾走感と高揚感を歌い上げる。

 オーラを放つという言葉があるけれど、きっと今がそうなんだと思う。だって、ほら。眩しいほどに輝いている。全てを掴まれてしまいそうな歌声も、黄色い歓声に包まれる姿も、本当に特別なんだってわかる。これが、Legacy。これが、LegacyのRYU。

 彼を尊敬すると同時に、圧倒されてどこか押しつぶされてしまいそうな感覚になる自分を奮い立たせるように膝上の拳を強く、強く握り締めた。
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