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第四章
第四十話 動転
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「部下から聞きましたよ。何やら、私のお話がしたいそうじゃないですか。私としてもいろいろと話したいことがあったので好都合です。何を聞きたいんですか?」
ライベは、ヘムカが思っていたよりもよっぽどおとなしかった。ライベとてここでは身元不明の犯罪者に過ぎない。暴れても無駄だということを理解しているのだろう。
「歪だよ」
「歪……? ああ、もしかしてあれですかね。元の世界とこちらの世界を繋ぐあの時空の歪みのことですか。私も昔研究していたことがあってですね」
ライベは何とも嬉しそうである。自分が研究していた物を他人が興味を持ってくれて嬉しいのだ。
「時空の歪み?」
意味のわからない言葉に、ヘムカは聞き返した。
「もしかして、知らないでそう呼んでいたんですか? だとしたらいい線いってますよ。あれは、世界が重なったために起こった現象なんです」
ライベは軽い拍手すら辞さなかった。散々な目にあったヘムカとしては複雑な心境である。
だがそれよりも、ライベの言った言葉の意味が理解できなかった。
「重なる?」
その言葉に呆れたのか、大きくため息をつくライベ。
「世界は一つではありません。世界の外側には、無数の世界が存在しています。普段であれば、重なり合うことなどまずありえないのです。とはいえ、可能性は無きにしもあらず。世界同士の衝突が原因でできたのがあの歪です。最初は小さいですが、次第にどんどん大きくなり次第には世界が一体化することでしょう」
ヘムカは正直理解に苦しんだ。
科学とか、魔法的なことで異常が起こっているのかと思いきや、ライベが口にしたのは何とも抽象的なものである。
しかし、ヘムカを気にせずにライベは続けた。
「我々としても、世界の一体化はなんとも避けなければなりません。必ずしも向こうの世界と元いた世界の常識が通じるとは限りません。例えば、こちらの世界では魔力がほとんどありませんね。では、魔力が豊富な我々が元いた世界と一体化したらどうなるのでしょうか? 向こうの半分くらいになるのでしょうか? しかし、いくら考えようとも根拠などなく人類に大きな影響を与えてしまうかもしれないのですよ」
原因こそ理解できないが、二つの世界が衝突してしまったときのリスクは大きい。それはヘムカにも理解できた。
「詳しいことを説明したいのはやまやまなんですけどね。生憎、研究道具は持ち歩いていないのですよ」
ライベからは焦っているようには見えない。そこから、ある程度は余裕があるのだと推察する。
「それで、修復魔法で閉じるの?」
一応ヘムカが魔力を全て使い果たし行ったが、一応確認のためである。
「一応は閉じるはずですよ。なんて言ったって、修復魔法ですからね。でも、世界の穴ですから相当な量の魔力を持っていかれます。ただでさえ、こちらの世界は魔力が稀有なのですから、安易にはできません」
やっぱりかと思った。
そもそも、万が一ここで使ってしまえば彼らは元の世界に帰れなくなる。使うわけがないのだ。
「ただ、一つ問題がありましてね」
ヘムカが考え事をしている最中、何かを思い出したようにライベが唐突に付け加えた。
「双方から修復魔法を使用しないとすぐにまた綻ぶんですよ」
何事かと思ったが、ヘムカは元いた世界に帰る気など全くない。
「ん? もしかして──」
新たな質問をしようとしたヘムカへと、ライベは怪訝な目を向けた。
奴隷の所有権はこちらにあると言いそうな顔である。少なくとも、こちらの世界では通用しない。
そんなことを考えていると、この部屋に大量の足音が聞こえてくる。
そして、勢いよく扉が開かれた。
先頭に立っていた警察官は一枚の紙を提示した。
「佐藤イツキだな? 殺人容疑および道路交通法違反諸々で逮捕する」
イツキは、理解できない言葉の会話の応酬を聞き続けていたためすっかり他のことを考えていた。
だからこそ、唐突な出来事に理解が追いつかなかった。
逃げるべきか、否か。しかし、このままだとヘムカと離れ離れになってしまう。
しかし、警察はそんな悠長なことを考えさせてはくれない。
「確保!」
その言葉によって、多くの警察官がイツキを押え込み手錠をつける。そして、強引に立たすと部屋の外へと連れて行かれた。
「え? これってどういう?」
残されたヘムカはすっかり混乱していた。
「大丈夫、もう大丈夫だからね」
女性警察官が、優しくヘムカを宥めようとする。しかし、ヘムカからしてみれば微塵も信用できないし、全くもって大丈夫ではない話だった。
「待って……。待ってよ!」
ヘムカは必死でイツキを追いかけた。しかし、イツキはそそくさと運び出されてしまい悲痛な叫びも届かぬまま女性警察官に腕を握られていた。
面会は強制終了となった。
ライベは、ヘムカが思っていたよりもよっぽどおとなしかった。ライベとてここでは身元不明の犯罪者に過ぎない。暴れても無駄だということを理解しているのだろう。
「歪だよ」
「歪……? ああ、もしかしてあれですかね。元の世界とこちらの世界を繋ぐあの時空の歪みのことですか。私も昔研究していたことがあってですね」
ライベは何とも嬉しそうである。自分が研究していた物を他人が興味を持ってくれて嬉しいのだ。
「時空の歪み?」
意味のわからない言葉に、ヘムカは聞き返した。
「もしかして、知らないでそう呼んでいたんですか? だとしたらいい線いってますよ。あれは、世界が重なったために起こった現象なんです」
ライベは軽い拍手すら辞さなかった。散々な目にあったヘムカとしては複雑な心境である。
だがそれよりも、ライベの言った言葉の意味が理解できなかった。
「重なる?」
その言葉に呆れたのか、大きくため息をつくライベ。
「世界は一つではありません。世界の外側には、無数の世界が存在しています。普段であれば、重なり合うことなどまずありえないのです。とはいえ、可能性は無きにしもあらず。世界同士の衝突が原因でできたのがあの歪です。最初は小さいですが、次第にどんどん大きくなり次第には世界が一体化することでしょう」
ヘムカは正直理解に苦しんだ。
科学とか、魔法的なことで異常が起こっているのかと思いきや、ライベが口にしたのは何とも抽象的なものである。
しかし、ヘムカを気にせずにライベは続けた。
「我々としても、世界の一体化はなんとも避けなければなりません。必ずしも向こうの世界と元いた世界の常識が通じるとは限りません。例えば、こちらの世界では魔力がほとんどありませんね。では、魔力が豊富な我々が元いた世界と一体化したらどうなるのでしょうか? 向こうの半分くらいになるのでしょうか? しかし、いくら考えようとも根拠などなく人類に大きな影響を与えてしまうかもしれないのですよ」
原因こそ理解できないが、二つの世界が衝突してしまったときのリスクは大きい。それはヘムカにも理解できた。
「詳しいことを説明したいのはやまやまなんですけどね。生憎、研究道具は持ち歩いていないのですよ」
ライベからは焦っているようには見えない。そこから、ある程度は余裕があるのだと推察する。
「それで、修復魔法で閉じるの?」
一応ヘムカが魔力を全て使い果たし行ったが、一応確認のためである。
「一応は閉じるはずですよ。なんて言ったって、修復魔法ですからね。でも、世界の穴ですから相当な量の魔力を持っていかれます。ただでさえ、こちらの世界は魔力が稀有なのですから、安易にはできません」
やっぱりかと思った。
そもそも、万が一ここで使ってしまえば彼らは元の世界に帰れなくなる。使うわけがないのだ。
「ただ、一つ問題がありましてね」
ヘムカが考え事をしている最中、何かを思い出したようにライベが唐突に付け加えた。
「双方から修復魔法を使用しないとすぐにまた綻ぶんですよ」
何事かと思ったが、ヘムカは元いた世界に帰る気など全くない。
「ん? もしかして──」
新たな質問をしようとしたヘムカへと、ライベは怪訝な目を向けた。
奴隷の所有権はこちらにあると言いそうな顔である。少なくとも、こちらの世界では通用しない。
そんなことを考えていると、この部屋に大量の足音が聞こえてくる。
そして、勢いよく扉が開かれた。
先頭に立っていた警察官は一枚の紙を提示した。
「佐藤イツキだな? 殺人容疑および道路交通法違反諸々で逮捕する」
イツキは、理解できない言葉の会話の応酬を聞き続けていたためすっかり他のことを考えていた。
だからこそ、唐突な出来事に理解が追いつかなかった。
逃げるべきか、否か。しかし、このままだとヘムカと離れ離れになってしまう。
しかし、警察はそんな悠長なことを考えさせてはくれない。
「確保!」
その言葉によって、多くの警察官がイツキを押え込み手錠をつける。そして、強引に立たすと部屋の外へと連れて行かれた。
「え? これってどういう?」
残されたヘムカはすっかり混乱していた。
「大丈夫、もう大丈夫だからね」
女性警察官が、優しくヘムカを宥めようとする。しかし、ヘムカからしてみれば微塵も信用できないし、全くもって大丈夫ではない話だった。
「待って……。待ってよ!」
ヘムカは必死でイツキを追いかけた。しかし、イツキはそそくさと運び出されてしまい悲痛な叫びも届かぬまま女性警察官に腕を握られていた。
面会は強制終了となった。
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